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            act.3 主夫のいない如月家<5>
修兵からは毎晩定期電話が入って来る。
過保護なんだから、と毎回電話口で話をするあたしに

『あのバカは、女連れ込んだりしてねぇだろうな?』

心配するのは常に二男・そらのことだ。

「最近の高校生は進んでるから、なんて他人事みたいに話してたから平気じゃない」

という話をすると、ゲラゲラ大笑いする声がした。

『・・とに、バカだな宙は』

言葉とは裏腹の、優しいトーンが響く。

「ねぇ修兵は楽しんでる?今どの辺にいるの?」
『ん?あぁ笹延ささのべにいる。すっかり体がなまって、そろそろ退屈してきた』
「笹延???何でそんな近くにいるの」

駅で3つほどしか離れていない、ご近所じゃないか。

『まぁ、そこは突っ込んでくれるな。あと三日、忍べよ』
「ん、心配いらないからね」

修兵の休暇もあと三日。
そろそろあの無精ヒゲ面が恋しくなってきた頃だった。

受話器を置いて時計を見上げた。
たまにはあおいの手伝いをしようと、早く帰宅して帰りを待っているけど5時を過ぎても姿は見えない。

「買い物に手こずってるかな」

連絡を入れてみた携帯がすぐに留守番電話に切り替わる。
移動中なんだろうか。

結局玄関の扉が開かれたのは、6時を少し過ぎた頃。

「ただいま」
「お帰り蒼!遅かった・・・どうしたのその腕!?」

迎えに出た玄関口。
肩から白い包帯で右腕を吊るした不自由な格好で、困ったような顔をしている蒼がいた。

「バイクで転んで軽く骨折」
「えぇっ!!骨折に軽いも重いもないよ?」

気を持たせないようにと冗談交じりに言ってみせたのは分かるけどさ。

大学を出たすぐの所で、通行人を避けようと横滑りをしたのだという。
バイクは大学に置いたままで、近くにいた友人に病院まで運んでもらい治療をしたということだ。

「ごめんなマリン。料理が作れるような状態じゃなくて」
「別にそんなのはいいけど・・バイトも休むようでしょ?」
「・・・だね」
「他は?どこもケガしてないの?頭とか打ったりしてない?」

どの程度の事故だったのかは知らないけど、痛々しい蒼の姿を見ていたら心配せずにはいられない。

「取り敢えず全部診てもらって、問題ないって」
「修兵に連絡しようか?」

思わずそんな弱気になってしまうほどに。
首を横に振る蒼が、あたしの肩に手を置いた。

「大丈夫。これくらいのケガで、修兵の貴重な休暇を無駄にしたくないから」
「・・じゃああたし、宙が帰って来る前に夕飯になりそうなものコンビニで買ってくるよ」

財布の中身を確認して、携帯をポケットに仕舞い込み出掛ける準備を整える。

「待ってマリン。さっき電話したら、もうすぐ駅に着くって言ってたから入れ違いになるよ。それに――」
「たっだいまぁ~!!」

言いかけた蒼の言葉が、ご機嫌な二男の帰還の声に掻き消された。
勢い良くリビングの扉が開かれて姿を見せた宙に続いて。

「助っ人連れて来たよ~!!」

じゃーん、なんて安っぽい効果音をつけて見せながら。

“噂の”という前置きで紹介されたそこに、何故かアクアが、立っていた。
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