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            act.1 如月家の人々<2>
ダイニングテーブルの中央にどんと置かれた赤飯は。
【祝・初潮】をアピールしているようにしか見えなくて、気が重くなった夕飯。

けれど、ここのところ遅い帰宅が続いていた長男のあおいも揃っての食卓は、久し振り。
今年大学に入学した彼は、卒業後に一人暮らしをする資金を貯める為に、アルバイトを始めた。
そこで、彼女も出来たらしい。

蒼は高校時代から相当モテていたけど、一度も彼女を作らなかっただけに、修兵とそらとあたしの中では実はソッチなんじゃないかなんて話もしていたくらいだから、それを聞いた時はホッとしたものだ。

「で、今日はマリンのお祝いって聞いてるけど、何?」
「えっ!?」

どうなってんだっ!と修兵を睨みつける。

赤飯を炊いた理由について蒼から訊かれたとしても内緒にして欲しい、と頼んだ矢先のことだった。
視線の先で修兵も、しまった、という顔をする。

「えっとなーそれはぁ・・」

こーいう時の言い逃れが、修兵は一番下手だ。
つまりは、嘘がつけない正直者。

「ねぇねぇそれより蒼、彼女ってさ、どんな感じの人なの」

とにかく話題を逸らそうと必死に繕うあたしのフォローは、一見苦し紛れのようでもあったがタイムリーな話題でもあったし、それなりに自然に装えたんじゃないかと思う。

「別に、普通だよ」

大学に入ってから切った短い髪。
全体的に立ち上がったカーキ色の前髪から額が惜しげなく晒されて、縁のない眼鏡の奥の優しい瞳がよく見える。

「もうチューした?」
「んー・・・された、って言った方が正しいかな」

宙の突っ込みにも照れもしないで答える蒼は、しっかり者で優しい兄貴。

「したんだっ?蒼?」
「あのなぁマリン。蒼はモテんだぞ?それくらい相手が彼女じゃなくたって、経験あるって。・・お前まだしたことねぇの?」
「えぇっ!マリン、したことあるのっ!?」

ないのかと聞く叔父に、あるのかと聞く二男。
どっちに答えるのも、なんか癪に障る。

「男相手にそんな気持ち悪いこと出来るかっ!!」

叫んだあたし。

「良かったー!!」

両手をあげて喜ぶ能天気な兄貴と。

「幸先不安だな、そりゃ」

頭を抱えて苦笑いの叔父と。

「結構気持ちいいものだけどね」

さらり、教育を施す兄と。

「おー、何だ今日は勢揃いだなぁ。・・それに赤飯まで炊いて、マリンについに初潮でも来たか?」

ホテルに缶詰めで仕事をしていたはずの、無神経発言をかまして帰宅した父親と。
相変わらず電話一本、手紙一枚寄越さない、自由な母親。

如月ファミリーは、そんな、家族だ。
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