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野生の電子レンジが襲ってくる世界にきました -天才ハッカーのハッキング無双ライフ- 作者:じいま

帰宅編

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正妻の許可

【前回までのあらすじ】

・レイ、気まずい
「多くても10人ぐらいにしてくださいね?」

ある晴れた日の昼下がり、私はご主人様にそう申し上げました。ご主人様はぽかんと口を開けています。皆さんこんにちは、マキです。今日もご主人様は何もしないで自室にこもっていらっしゃいます。平和ですわね。

「・・・え、何が?マキちゃん、どうした?」

「ですから、私を含めた妻の数ですわ。さすがに二桁まで増えると、妻同士の円滑なコミュニケーションも難しくなるかと思います。なので、増やしてもせいぜい10人程度にしていただきたいのですわ。」

ご主人様はさらに口を大きく開けて、「なにいってんのこの人?」という顔で私を見ています。

「え、いや、なんで?俺はマキちゃん一筋だよ?」

「ふふっ・・・ありがとうございます。でも、無理しなくてもいいのです。」

当たり前と言わんばかりの言葉に嬉しくなってしまいますが、私には薄々わかっているのです。ご主人様は近々、私以外にも数名の女性を妻として迎えることになるでしょう。女のカンというのもありますが、論理的に考えて、こんなにヘタレなのになぜかモテててしかも意志薄弱なご主人様が、他の女性に迫られて断れるわけがないのです。それもご主人様を狙っているのはサリー様やハル様など、この過酷な世界で生き抜いてきた強い女性ばかり・・・時間の問題ですわね。

そもそも私は、ご主人様が幸せになるのなら、最初から他の女性に心を向けてしまってもよいと考えていたのですから。一番目の妻にしていただけた時点で、これ以上望むことはありません。500年も孤独に引きこもっていたご主人様がたくさんの人に求められ、囲まれて生きるというのなら、それは私にとっても大変な幸せでもあるのです。

・・・まぁ多少、ご主人様が他の女性に鼻の下を伸ばしているのを想像するとイラッとしないこともないですが・・・。

「とにかく、私に気を使って新しい妻を増やすことを気にしなくてもいいと申し上げたかったのですわ。」

「・・・むぅ。俺は浮気なんてしないってば・・・。まぁ、わかったよ。増やさないけどね!」

ご主人様はむくれてしらっしゃいますが、とりあえず話はわかっていただけたようです。窓の外を見ると、レイのネコがこちらを覗いていました。窓越しなので、ネッコワーク経由で声を出さずに話しかけます。

「レイ、どこかへお出かけですか?」

「・・・はい姉さま。ヤボ用なのです。」

「・・・そうですか。町に帰ってきてから、あなたとゆっくり話もできていませんわね。用事が終わったら、お茶でもしませんか?」

「・・・今日はちょっと、忙しいのです。ごめんなさい、姉さま。」

最近のレイはいつもこの調子で、私のことを避けているようです。ご主人様にこんな話をしたのも、レイに対して思うことがあったからなのですわ。

さて、いちおうこの考えの裏を取るために、レイと親しい人に話をきいてみることにします。付近のネコを操ってランスさんの店に行くと、ウォーリーとサリー様が打ち合わせをしているところでした。

「あら、マキさん。調子はどう?」

「ご主人様のために、私はいつだって完璧ですわ。サリー様は新しい武器を注文なさっているのですね?」

「そうよ。きっとすぐに必要になるわ。・・・あなたもわかっているでしょう?」

サリー様がテーブルに用意されたお茶に口をつけながら、目を鋭く細めました。私も惚れぼれするような優雅な仕草ですが、どこか鋭い殺気のようなものが見え隠れしています。テーブルの向かいに座るウォーリーが、小さく「ヒェッ」と声を漏らしました。

「ええ・・・コピー様のことですわね。」

コピー様。ご主人様の電子化人間。彼は別れ際に言いました。みんな消す、と。物理的な力を持たないとはいえ、あの神の如き力を持った人があのままで終わるわけがありません。そう遠くない未来に、きっと何かとんでもないことを仕掛けてくるでしょう。

「ま、それはそれね。相手の出方が分からない以上、今すぐできることもないわ。それでマキさん、今日はどうしたの?」

ふいにサリー様から漏れる殺気が消えました。テーブルの向かいに座っているウォーリーがあからさまに安心しています。

「ええ、伺いたいことがあったのですわ。レイのことなのですが・・・。」

「あら、レイったら、もう抜け駆けしたの?新婚さんのうちはやめておけって言ったのに。」

いけしゃあしゃあと、という表現がぴったりなほど明朗快活に、サリー様は言いました。あまりにあっけらかんと言うので、私も思わず「あの残念なご主人様は私のです」と言いそうになりますが、グッと飲み込みます。

「やっぱり、そうなのですね。」

「ええ、そうよ。それを確認しにきたの?」

「ええ・・・サリー様も、どうぞご遠慮なく。・・・『2番目以下の席』はいつでも空いておりますわ。」

「ふふ・・・『2番目以下』ね。上がいるという状況は、どうも1番を目指したくなるものね。」

「ご自由に・・・1番は、揺るがないから1番なのです。」

図らずも、私とサリー様の間にバチバチと火花が散っています。こんなつもりはなかったのですが、どうもサリー様が相手になると張り合ってしまいますわね。いつの間にかウォーリーが姿を消していました。怖いので、今ごろイリス様のお尻にでも張り付いているのでしょう。

さて、どうやら私の考えは間違えていないようです。次はレイ本人と話をしましょう。ネッコワーク経由で通信してもよかったのですが、ちゃんと話を聞いてもらうためにネコを操って探しに行くことにします。

ほどなくして、町の外壁の上でぼんやりしているレイを見つけました。月の光が彼女を青く照らしています。その姿は寂しげで、声をかけるのがためらわれます。

「・・・レイ、探しましたよ。」

「・・・姉さま?・・・なにか、ご用ですか、姉さま?」

レイの声には、私を拒絶する空気が含まれています。今までは絶対になかったもの。私はとても悲しい気持ちになりました。

「レイ、あなた・・・私を避けてますわね。」

「そんなこと・・・ないですよ、姉さま。レイはいつでも姉さまのことが大好きなのです。だって・・・」

「レイ。」

思わず声が大きくなってしまいました。レイがびくりと身体を震わせたのがわかります。これはもう、下手に引き伸ばすよりも単刀直入に言ったほうがいいでしょう。

「レイ、あなた・・・ご主人様を好きなのですね?」

「・・・ちがいますです。」

「私はご主人様のものです。」

「・・・。」

「でも、ご主人様は私だけのものではありません。」

「・・・?」

「私と一緒に、ご主人様を支えてくれませんか?レイ。・・・ご主人様の妻として。」

「・・・え、え、姉さま?」

「私は構いませんよ。貴方も、ご主人様も、どちらも大切ですから。・・・レイは、嫌ですか?」

「・・・姉さま!」

レイのネコが私のネコに飛びつき、おいおいと声を上げて泣きました。端から見たらネコ同士がじゃれ合っているようにしか見えないでしょうが、感動の場面です。私とレイの間にあった壁が崩れ去っていったのを感じます。

「とはいえ、まずはご主人様をその気にさせるところから、ですが・・・。」

「レイ、頑張ります!ご主人さまも姉さまも大好きですから!」





翌朝。

リビングでコーヒーを飲んでいるご主人様を、2人の美女が囲んでいます。無論、私とその可愛い妹、レイです。

「ご主人様、今日は私が新しく考えた超高速演算の理論について検討しましょう。」

「え、う、うん。」

「だめですー!今日は3人でデートするです!ね、ご主人さまぁー?」

「お、う、うん。」

「それともまずは、どこかの遺跡まで私のボディを探しに行きましょうか。」

「あ、レイのボディはもうすぐ完成するらしいですよ!ナイスバディに仕上がっているです・・・ぐふふ・・・楽しみですね、ご主人さま?」

「う、うん・・・なにこれ、なんなのこれ?俺、なにか良いことした?」

今日も平和です。

そんな中に突き刺さるような鋭い視線を感じて、周囲をなにげなくチェックします。・・・通信ネコの一匹がこちらを見ていたようですが・・・気のせいでしょうか。通信ネコが民家の屋内を監視などするはずはないのですが。

「むむむ・・・。」

キッチンの方から、唸るような声が聞こえてきました。先ほどの視線はこちらのものかもしれません。

ああ、これはよくないですわね。

ハル様が、難しい顔で私たちの方を見ていました。
次回、忘れ去られていたヒロインことハルさん登場ッ !
新作の連載をはじめました。こちらもよろしくお願いします。
勇者様はロボットが直撃して死にました
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