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野生の電子レンジが襲ってくる世界にきました -天才ハッカーのハッキング無双ライフ- 作者:じいま

迷宮アタック編

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146/202

素敵な選択肢

【前回までのあらすじ】

・マキちゃん太った

※近況報告にも書きましたが、昨日は146話目にして初の更新失敗でした。楽しみにしてくださっている皆様、申し訳ありませんでした。
「みんな、せーのでいくぞ?せぇーーーーーのッ!」

マキちゃんが動かない。上半身しか残っていないにも関わらず、マキちゃんの重さは尋常ではなかった。ニックとリリィ、そしてレイのネコも参加して、みんなの力を合わせて引っ張り出そうと必死に声を上げる。

まるで大きなカブを抜こうとしているようで緊迫感に欠ける絵面だが、生死がかかっているのでみんな大真面目だ。

「ダメだ、まるで動かん!なんでこんなに重いんだ!?」

ニックが諦め混じりの声をあげた。見た目はこれ以上ないほどスマートなのに、彼女の身体はまるで地面に杭で打ち込まれているかのようにビクともしない。

前にアンドロイド体のレイを抱き起こしたことがあったような。あれはまだレイが完全に停止してなかったからできたのか?いや、そもそもレイは飛行できるタイプのアンドロイドだから軽かったのかもしれない。とにかく、姉妹にあたるはずのマキちゃんボディがこんなに重いのは予想外だ。あとでこんなに重い重いと言われたのを知ったら、マキちゃんが激怒するかもしれない。でも重い。

そんな俺たちから少し離れたところで、サリーが相変わらず激しい斧の嵐をかわし続けている。リーチの違いとあり得ない速度の連撃を前に、攻勢に転じることができず防戦一方である。このままではいずれ、ちょっとしたミスを引き金にやられてしまうかもしれない。いくら人間離れしているとはいえサリーだって人間だ、ミスをすることだってあるだろう。現に空母では丸焦げにされてたし。

マキちゃんは重すぎて連れ出せない。

敵はあと3体、そのどれもが強すぎて倒せる見込みがない。

「見ちゃおれん!役に立たんかもしれんが、加勢するぞ!」

飛び出そうとするニックを制止する。

「待ってください、ニックさん!それはマズいです。」

「なぜだ!?サリーさんがやられちまうぞ!」

「いえ、敵がなぜか1対1で戦うというスタイルをとっているから俺たちはまだ生きていられるんです。もし俺たちの攻撃をきっかけに一斉にかかられたら・・・みんな死にます。」

特に結婚フラグを立ててるニックさんは死ぬと思います。

「くっ・・・!情けない、何もできんのか、俺たちは!」

確かに手詰まり感がある。だが黙ってみているだけではジリ貧なのは間違いない。



そこで問題だ!この状況で取るべきアクションは? 3択-一つだけ選びなさい。

----------

1. サリーに任せる。

ひょっとしたら、サリーが残りの3体をやっつけてくれるかもしれない。

そう、例えば助けに入った俺が頭をカチ割られて、それを見たサリーが穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって真のパワーに目覚めるかもしれない。

冗談はさておき、見る限りではサリーに任せきるのは難しいように思える。それに、敵の戦力がこれで全てだという保証もないのだ。3体やっつけたところで、またさらに強い敵がゾロゾロと現れたら目も当てられない。


2. マキちゃんを(一度)諦める。

冷静に考えて、意外と有効かもしれない手だ。

マキちゃんのボディがここに保管されていることはわかったのだ。一度退却して、作戦を練り直してもいいかもしれない。

しかし次に来た時に、同じようにマキちゃんのボディが保管されているものだろうか。そもそもこの遺跡、なんで貴重品を保管しているんだろう。食料として保管しているのであれば、次に俺たちが来る前に食べられてしまってもおかしくはない。

それならここでAIデータの回収をやってしまうか?データさえ回収できればボディなんていらない。

・・・いや、無理だ。どんなに早くても、作業には30分以上はかかる。サリーがもつまい。



3. どうにもならない。現実は非情である。

諦めてどうする。諦めたらそこで試合終了という昔の格言もあるじゃないか。

----------


思考はグルグルと巡り、答えは出ない。

「サリー、危ないですぅ!」

考えに沈む俺を、一際大きな金属音とレイの悲痛な叫びが現実に引き戻した。見れば、横薙ぎに振るわれた斧の一撃がサリーのブレードを弾き飛ばしていた。彼女の手から離れたブレードは勢い良く飛んでいき、暗い宝物庫の闇に消えていった。

これはよくない。

「サリー、逃げよう!」

俺の声が虚しく響き、敵は斧を大きく上段に構えた。武器を失ったサリーに容赦なく、トドメの一撃を振るうつもりなのだ。まるで時間が遅くなったかのように、その動作はゆっくりと見える。

自身に向けられた巨大な斧の刃を前に、サリーは絶望の表情を・・・表情を・・・

浮かべていない。

それどころか、ニヤリと不敵な笑みをたたえて敵を見ている。

彼女は滑り込むように敵に向かって踏み出し、流れるように足元に転がっていた大きな機械の塊を拾い上げた。

あれは・・・

あれはなんだっけ・・・宝物庫に入ってすぐに見つけた・・・

あの・・・ロマンがあふれる・・・

「ハンディ・バンカー!」

ニックが叫んだ。そう、あれは『ハンディ・バンカー』。歩兵用の近接兵器、敵に杭を打ち込む携帯用杭打ち機だ。

50キロはありそうで、どこのバカがこんなもの使うのかと思ったが・・・サリーはそれを軽々と掴み上げると、そのまま流れるような動作で軽く跳躍し、敵の胴体に密着させた。油断し、大上段に斧を構えていたエリートはそれを防ぐこともかわすこともできない。

「ふといの、ブチ込んであげるわ。」

爆発音と、金属の悲鳴が空間を揺らす。ハンディ・バンカーから打ち込まれた長さ1メートルほどの杭は、エリートの胴体を軽々と貫通して背中から飛び出した。身長5メートルの巨体が脱力し、地面に崩れ落ちる。

殺った。嘘だろ。

サリーは着地と同時に最初に倒した方のエリートの残骸に走り寄り、その手から2本の刀を奪った。自分のブレードはどこかに飛んでいったので代用品だろう。

ふわりと艷やかな黒髪を揺らし、二刀流の構えを取る。そして残る2体の敵に向けて挑戦的な笑みを見せた。

「さぁ、次の相手はどっちかしら?」

あれ、これひょっとして選択肢1?サリーさん大勝利ある?

「おお・・・ロマン、ロマンだな・・・!」

ニックはロマン兵器が実際に使われるところを見て大興奮だ。おっさん自重しろ。

しかしサリーがチラリと俺を見た時、その目ははっきりと語っていた。

勝てない、と。

それはきっと弱気とか自信がないとかではない、冷静な戦力分析からくるものだ。敵は強い。次の敵は、前の敵よりさらに強いだろう。先ほどの勝利は敵の意表を突いたものであり、同じ手は二度と通用するまい。愛用していた武器はすでに失った。敵はさらに強くなる。

勝てない。

サリーはそう判断している。判断した上で、それでもまだ戦ってくれるつもりなのだ。俺のために。彼女にはなんの得もないのに、命を賭けて戦ってくれるのだ。

俺はなにをしてる?

選択肢1?バカいうな!

俺が考えて、俺が決めるのだ。何を捨てるか、何を拾うか。なにを諦めるのかを。

マキちゃんの顔を見る。綺麗な顔だ。白い頬、長いまつげ、スッと通った鼻。あの日からずっと会いたかった顔。

しかし動かない。眠るように瞳を閉じて、彼女は動かない。

サリーを見る。あらたに進み出てきた敵・・・2本の槍を持ったエリートを前に、少しも臆することなく刀を構えている。凛々しい横顔、強い意志を持った瞳。

動いている。彼女は生きている。

ニックもリリィも、イヌのバリィも生きている。

それならば、迷うことはない。生きている人たちを、助かる見込みのない状況においておくわけにはいかないだろう。マキちゃんだってそう言うに違いない。

俺は最後に、レイを見た。彼女はじっと地面に座り、俺の方を見ている。その目はただ黙って、どんな決断でも俺の意志に従うと言っているようだ。

「レイ・・・聞いて。」

「はいです。」

「マキちゃんを諦め・・・」

め・・・め・・・?レイを見て、ふと俺の脳内に電撃が走った。

レイ・・・レイ?

そして俺はポツリと呟いた。

「レイ、攻撃してくれ。」
ツギクルブックス創刊記念大賞 一次通過しました。
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勇者様はロボットが直撃して死にました
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