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一話。オーディナリー。
夏休みが終わり、学校が始まる。終わりと始まりは同時に起こるんだなぁなんてことを感じること早十一回。高校二年の晩夏。初秋。
謎の転校生がやってきて僕の隣に座るなんていう小説的漫画的映画的ドラマ的展開は特になく、平々凡々な学園生活の幕開けであった。

*


僕は友達は多い方に入るのだろう。
進学校ということもあり、金髪リーゼントの仲間達はいなく、落ちこぼれと言えばメガネをかけて大きなリュックサックを背負い、バス待ちで黒くて薄い小型ゲーム機をピコピコやってるタイプの人間になるのである。

僕はそういうタイプの人間とも付き合いはある。

その正反対も然り。

運動部に入っているだけで運動部の連中とはそれなりに仲良くなるのである。

休日に遊びに行くのは後者が多い。

というか前者と休日に会ったことがないのでこの場合は多いという表現は不適切かもしれない。

そして僕は人が好きではない。
そう。好きではないだけで嫌いではない。それだけだ。

なぜ嫌いなのかは皆目検討もつかないが、必要以上に人と会うのは避けたい。
登校時━━━僕は自転車通学である━━━に友達と会ってしまうとその1日が憂鬱で仕方なくなるぐらいだ。


そんなどこにでもいそうな高校二年生の僕、田中圭太はそこにいた。名前が太郎なら恐らく今現在の日本で最も珍しい名前となっていたのだろうが、残念ながら僕は名前までも普遍的でありきたりな、学校に必ず一人はいそうな名前に落ち着いたのであった。

「圭太。」
普通に呼ばれたので普通に振り返ってみると、そこにはやっぱり普通にトモダチが立っていた。
クラス委員の竹島咲である。
個人的にこの名前はとても好きだ。「たけし」も「まさき」も入っているのに「さき」であるところにゴッドファーザーのセンスを感じる。

「何?」

「唯は?」
「唯は?って…何でオレに聞くんだよ。」
モノローグの一人称は僕だが話すときはオレになる僕だった。
「知らないの?」
「あのね…漫画じゃないんだから、幼馴染みだからってなんでも知ってるわけじゃないんだよ。」
「朝とか起こしにきてくれないの?」
「来るわけないだろ!」
「憧れる?」
「あぁぶっちゃけ。」
「今度言っとくよ」
「ヤメテクレ」
やっぱり他愛も無い会話だった。
「唯」とは霧島唯のことである。
小学一年からの付き合いを幼馴染みと称することができるのなら、僕と唯は幼馴染みである。
僕は公立の小学校から受験で行く中学に進んだのだが、あろうことか霧島唯もその中学を受験していて、合格していた。
そしてそのままエスカレーター式にそこの高校に進学するのが非常に嫌だったために公立高校を受験したのだが、やはり霧島唯も僕と同じ高校を受験し、合格していた。
仲は悪くないほうだと思っている。いや、他の女子と比べると仲良しなほうに入るかもしれない。
少なくとも家のチャイムを鳴らして「宿題貸して」と言える相手は霧島唯の他に思いつかない。

それに僕はそのことを誇りに思っている。
そう。誇りに思っているのだ。
黒髪長髪の彼女は、容姿端麗成績優秀。中国語のようなプロフィールを解しやすく書き変えるとつまり、世にも珍しい才色兼備というやつであった。
中学までは吹奏楽部であった。僕の携帯音楽プレーヤーにもクラシックは数曲入ってはいるが、クラシックに使われる楽器についての知識は皆無なので、どの楽器を担当してたのか、聞いたことはあるだろうが記憶には無い。
しかし、楽器ができる女性とは良い印象を与えてくれる。
高校でも吹奏楽を続けるかと思いきや、僕が高校二年で辞めた男子バスケットボール部に対を為す、女子バスケットボール部に入部していた。そしてレギュラーを取っていた。
僕は中学からやってるにも関わらずベンチを暖めるポジションであった。
まぁ一年の分際でベンチの枠を貰えたのだから文句は言えないが、それを言えば霧島唯は一年の分際で、ましてやバスケットボール新参者の分際でレギュラー枠を与えられていたのだから、神様が平等ではない確たる証拠になるだろう。

「霧島唯」という存在は僕が知っている数少ない「普通ではない」ことの一つであった。

*


特に何もなく、何気無く学校が終わり放課後になる。
そして、夏休みを挟んだので約40日振りのいつも通りをこなす如くトモダチに別れを告げて駐輪場に行き、シルバーのいわゆるママチャリを三角乗りで漕ぎ始める。
イヤホンを着けて自転車に乗るという警察に取り締まられることのない細やかな条例違反をこなして走ること約30分。
生意気にも高校生という身分で一部屋借りているアパートの駐輪場に愛車を雑に停めると、愛する無人の我が家に着く。

そしてここから異常が始まる。




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