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性的な表現がありますので苦手な方はご注意下さい。
59・・・熱帯夜
 夕方。リオは一旦自宅に寄ってからルイのマンションに向かった。
 インターフォンを押してエレベーターで五階に上がると、ルイが、開いた扉のノブに手を掛けたままリオを待っていた。
 今日のルイは、白と黒の細かい縦ストライプのシャツの胸を大きくはだけ、下は何本も持っている細いブラックジーンズ、首には控えめなシルバーチェーンといういつもの姿に戻っていた。

「お帰り。」
 ドクロや大きな石のシルバーのリングがついた指で髪をかき上げながら、ルイはにっとリオに笑ってみせた。いつもの垢抜けたルイを目の当たりにして、リオは秘かに胸を疼かせる。

(好き・・・・・。)

 リオはルイに向かって突進し、思い切りその胸に飛び込んだ。勢い、ルイの背中がドンと扉にぶつかった。
「リオ・・・・・どした。」
 ルイは軽く笑いながらリオの腰に手を回して言った。リオはルイの胸に顔を埋めて小さく言う。
「何でもない・・・・・。」
 すぐにルイから離れて、「おじゃまします」と言いながらリオは玄関に入った。

「体・・・・・、大丈夫なの?」
 妙に綺麗に片付いた部屋を見てリオが聞いた。
「ああ。さっきまで寝てたらすっかり元気になった。声もだいぶ出るようになったし。リオの看病のお陰かな。」
 ルイが機嫌良く笑う。
「・・・・・良かった・・・・・。」
 リオはほっとしたように振り返って微笑んだ。

 まだあまり食欲がないというルイのために、リオはあっさりした野菜のスープを作った。それに、帰り際リオが買って来たブリオッシュとサラダで二人は簡単な夕食を済ませた。
 食後にリオは、今日のノルマの「太る元」であるチョコレートのアイスクリームを食べた。ルイにはさっぱりしたシャーベットを買って来たが、ルイは「明日食べる」と言って口にしなかった。

「リオさ、だいぶ肉付いたんじゃねーか?オレの作った服、着れないかも。」
 ソファーに寄りかかりながらルイがさりげなく言った。
「えっ。服、できたの?」
 リオが目を丸くして控えめに叫ぶ。
「ああ。もうだいぶ前にできてたんだけど、寝込んでて渡しそびれてた。」

 ルイがクローゼットの中から出してきたのは、少しの布でできたブラウスとスカートだった。ブラウスは黒のシースルーで、大きく開かれた襟、裾、袖口はそれぞれ控えめなフリルが三層になってワカメのように垂れ下がっている。全体に散りばめられた光を放つラインストーンが夜空の星を思わせた。下は合皮でできた蛇柄のタイトスカートで、臍の下から足の付け根辺りまでしか丈が無い。脇は紐で編み上げてあり、そこの部分だけ切り替えで黒い網のような生地になっていた。トップス同様、スカートの脇も肌や下着が透けて見える。ベーシックなデザインと言えばそうなのだが・・・。

「これ、当然、ブラウスの下にタンクトップとか着るんだよね・・・・・?」
 リオが顔を引きつらせて言った。
「は?・・・ブラだけだろ、普通。」
「・・・・・・・・・・。」

 露出の多さと透ける素材をふんだんに使ったデザインのセクシーさがあまりにもルイらしい。ステージ衣装とはいえ、これを着て人前に出るには相当な勇気が必要だった。カレンならどうか知らないが、リオにはかなりの抵抗がある。
「・・・なんか、エッチな雑誌に載ってるエッチなお姉さんが着る服みたいだね。」
「そおか?オレ的にはリオにばっちり似合ってると思うぜ?下は網タイツにガーターとかしてさ、エロくキメろよ。」
「・・・・・・・・・・。」

 エロなのに、ばっちり似合ってる・・・?意外なルイの意見にリオは唖然とする。

「・・・嫁に、行けなくなりそうだね・・・。」
 それを聞いて、ルイが面白そうに手を叩いて笑った。
「今時、古いよ、お前っ。まー、そう深く考えんな。」
 そう言われてもリオの心境は複雑だった。でも、これがルイの趣味ならば一肌脱ぐしか無い。実際、本当に脱ぐのだし。

「・・・・・着てみるね・・・・・。タイツは無いけど・・・・・。」
 まったりと言ってから、リオは隣の寝室に入っていった。
 今日のリオの下着はシンプルな黒だったので丁度良かった。この服だと下着も重要なアイテムの一つになってしまう。

「どう?エロくイケてる?」
 着替え終えたリオが黒尽くめの衣装を着て寝室から出てきた。細かく採寸した甲斐があってか、上下共にいい具合にフィットしている。リオはソファーに寄りかかるルイの目の前に立つと、腰に手をあてて軽くポーズを取った。ほぼ開き直りだ。
 妖しく変身を遂げたリオに気圧けおされたように、ルイは溜息を吐きながら答えた。
「・・・・・ああ。・・・すげー可愛くて・・・エロカッコイイ・・・・・。」

 リオはいくらか満足そうに笑い、ルイを見ながらそこで一度ターンして見せた。そんなリオを、ルイは吸い寄せられたようにじっと見入っている。
 リオはしばらく自分の姿を鏡に映したり、部屋の中をうろうろと歩き回ったりした末にルイの前に戻ってきた。

「じゃあ、着替えるね。」
 ある決心をして再びルイの眼前に立ちはだかると、顔から笑いを消し、一呼吸置いてからリオは言った。

「ルイ、脱がして・・・・・。」

 ルイの瞳が動揺で揺れた。体の動きが止まる。何とか口の端だけを上げながらルイが言う。

「・・・ヤバイだろ。・・・・・そしたらオレ・・・、何するか、分からねぇーよ・・・・・?」

 リオはルイをじっと見ながら、憂いを帯びた瞳を揺らして答える。

「ルイなら・・・、何してもいいよ。」

「喰っちゃうよ・・・・・。」

「いいよ・・・・・。殴んないでくれれば・・・・・。」

 それを聞いて、ルイは複雑に眉根を寄せて口を結んだ。そして、リオの目を見ながらソファーから身を起こして立ち上がり、顔を強張らせて立っているリオを自分の胸に収めた。
 リオは二ヶ月ほど前に、優弥から顔や腹を殴られたり、蹴られたりした。優弥のそんな非情な一面は、リオには全く読めなかったに違いない。そしてそれは、潜在的な不安となってリオの心を常に臆病にしていた。そんなリオの気持ちを酌んでやれなかった自分を、ルイは心の内で秘かに責めた。
 リオを抱きしめながら、ルイは絞り出すようにして言った。

「殴んねえよ・・・、オレは、絶対に・・・。バーカ・・・・・・・・・。」

 ルイに頭を撫でられると、リオが「ごめん」と言いながら小さく震えた。
 顔を上げてしばらく見つめ合う。ルイが膝を付き、ゆっくりと伸ばした手が目の前にあるガラスのダイヤのようなボタンを外し始めた。その手元をリオは、瞬きをしながら落ち着かない様子で見守る。緊張で体が火照ってきている。

 薄いブラウスが音も立てずに下に落ち、短いスカートもルイの手によって足首まで下げられた。リオが見下ろすと、一番見られて恥ずかしい場所のすぐ目の前にルイの頭が見えた。
 上下に別れた黒い下着だけの姿になったところで、ルイが張り詰めたような声音で言った。

「これも・・・、脱がしてほしい・・・・・?」

 膝をついてリオを見上げたルイの目は、すでに熱っぽい欲望の色を帯びていた。
 
「うん・・・・・。脱がして・・・・・。」

 語尾が震えていた。リオが言い終わらないうちに、すぐにルイは顔を寄せてきた。
「リオ・・・・・。」
 唇が重なると、ルイは息を荒げながら激しくその唇を貪り始めた。
 そんなキスに夢中で応えながら、ルイの勢いにリオは麻酔銃にでも撃たれたように一気に力を奪われていく。

 へなへなと崩れ落ちたリオを、腰に回したルイの腕がそのままジュータンの上に押し倒した。残された下着をずらしながら、ルイは淡く上気したリオの柔肌に手と唇を滑らせていく。
 初めて感じるルイの感触に、リオの体は落ち着きなく動き出し、次第に息は荒れていった。

 優弥としかしたことのないこと。優弥にしか許さなかったこと。優弥以外の男とは考えられなかったこと。それを今、リオはしている。

 優弥とは違う匂い、違う唇の感触、違う指の動き・・・。
 全てを受け容れ、リオは今、ルイによって新しい自分に塗り替えようとしていた。

「リオ・・・・・、オレのものに・・・なれよ・・・・・。」

 顕わになった胸の先端を指と舌で転がされて、リオは首を逸らして喘ぎながら答える。

「な・・・・・るぅ・・・・・・。」

 ルイの指先がリオの内腿を伝って足の付け根の行き止まりをなで上げると、リオははじかれたように膝を曲げて縮こまった。
 深い溜息をついてから、ルイが充血した目でリオを見下ろしながら囁いた。

「ぐっちゃぐっちゃ・・・・・。・・・・・リオ・・・・・。」

「やだっ・・・・・・・・・・。」

 リオが羞恥心いっぱいに顔を背ける。 
 姿を現したリオの耳をルイは舌先でくすぐった。びくびくとリオが反応すると、ルイは満足そうに口元をゆがませた。

「かわいいね・・・・・。」

 いつの間にか、ルイと一緒にいると、その肌に触れてみたいと思うようになった。触れて欲しいと思うようになった。
 けれどそれは、もっとルイの事を知ってからでないと許されないような気がした。それ以前に、恋をすること自体に、臆病になっていた。
 リオはずっとこの内に秘めた欲望を、自分の中で必死に打ち消していた。なのに気がつくと、そんな自制が効かなくなっている自分がいた。ただ、ルイに抱かれたいと切望するだけだった。

(ルイが好き・・・・・。)
 
 ルイの蛇のようにうねる長い舌が一点に集中して機敏な動きを繰り返すと、リオは今にも泣き出しそうな顔で擦れた声を上げた。無意識に手を伸ばし、下腹部に見えるルイの頭のてっぺんを両手で鷲掴わしづかみにする。そんなリオを熱に浮かされたように味わいながら、ルイは苦しげに喉を鳴らす。昂りすぎた情動が、ルイの脳髄をショートしそうになる。

「忘れさせてやる・・・・・。」

 突然顔を上げて、ルイは独り言のように呻いた。ぬめりを帯びた口の周りを舐めつつ手の甲で拭うと、ルイはリオの中の奥深くまで一気に入ってきた。
 
 とたんにリオが、切れてしまいそうなほど首の皮を突っ張らせ、大きな声を上げて鳴いた。その声は、そのまま止む事は無くひっきりなしにリビングの空気を震わせた。リオの体は意志を無くし、クラゲのようにゆらゆらとルイの意のままに揺らされる。

 初めて見るリオのあられもない姿を目の当たりにして、ルイの胸は複雑な感情が交差する。驚くほど敏感に反応する体に感動を覚えながらも、半面では、それがリオの体に残された優弥の痕跡のような気がして、耐え難いほどの嫉妬に身を焦がす。

(アイツの前でも、こんな顔したのか・・・?こんな声で、鳴いたのか・・・?こんな風に、乱れたのか・・・?)

 そんな思いを、ルイは一心に腰の動きに反映させる。リオは、折れてしまいそうなほどに体を仰け反らせ、無我夢中でルイの名を呼び続けた。

「ルイ・・・・・ルイっ・・・・・・・・・・。」

「・・・・・リオ・・・・・、お前・・・・・すげぇ、イイ・・・・・。」

「・・・・・ルイっっ・・・・・、もうっ・・・・・壊れ・・・ちゃうよぉぉっ・・・・・・・・・・!」

 リオの腰をしっかりと掴んだ手を、ルイはなかなか放そうとはしなかった。
 快楽という名の海の底で、リオは何度ももがきながら水面に這い上がろうとした。すると、そのたびにルイに体を捕らえられ、再び深海の奥深くに引き戻される。リオは涙を流し何度も気を失いかけながら、ルイの腕の中でひたすらもがき、溺れ続けた。

 ルイが力尽きてリオの体を開放したのは、空がうっすらと光を帯びてきた頃だった。リオは朦朧とした意識のまま、いつしか死んだようにルイの腕に抱かれて眠っていた。
 リオの寝顔を見ながら、ルイはリオの顔に掛かった髪の毛をそっと指先でかき上げた。そして、目を閉じながらリオの頬にキスをして囁いた。

「好きだよ・・・・・。」







いつも読んでいただきありがとうございます。今回もR15の範囲内に収まるように抽象的な表現にしたつもりなんですが、未だにR15とR18微妙な違いがよく分からない私でした。ちょっと不安です。(^_^.)



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