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16・・・悲しい初体験
 優弥があまりにもふらふらなので、少し休ませてから帰そうとリオは思った。今日は金曜日でママも帰ってこない。早坂とカレンが玄関の前まで荷物を持って付いて来てくれた。カレンは浜崎あゆみの歌を楽しそうに歌いながらのろのろと付いてくる。早坂のほうは途中で思い出したように道端で吐いていた。一行は何とかマンションに到着し、リオはアリガトウを言って二人と別れた。

 九階の自宅に戻ると、優弥を支えながらリオは短い廊下をずるずると足を引きずり自室に入った。優弥ほどではないがリオも酔って少しふらふらしていた。リオは優弥の上半身を自分のベットに転がし、足を持ち上げてベットに乗せてやった。「う〜ん」と気持ち良さそうに寝返りを打ち、そのまま優弥は動かなくなった。リオは優弥を放置して、再び千鳥足で今度はバスルームへと向かった。酒の匂いは自分では分からないが、周囲から吸収した煙草の臭いが気になっていた。シャワーを浴びてボディーソープで全身をくまなく洗う。さっぱりすると、パジャマを着て頭にタオルを巻きながらリオは自分の部屋に戻った。

 ベッドを覗いてみると、優弥からはまだ目を覚ます気配が感じられない。
 どうしようかな・・・。水を持ってきて優弥に飲まないかと体を揺り動かしたが反応は無し。優弥は猫のように背を丸め横を向いたまま眠りこけている。家に電話しなくていいのだろうかとふと考えたが、まだ九時だった。あと一時間くらいは平気だろうと思ったリオは、寝ている優弥の脇に並んで自分も横になった。目を閉じるとあっという間に睡魔が襲ってきて、そのまま眠ってしまった。

 ふと体に圧し掛かるような息苦しさでリオは目が覚めた。目を凝らすと、自分に覆いかぶさる優弥の広い肩が、豆電球しか付いていない薄暗い部屋のなかに浮かび上がった。
「優弥・・・。」
 ぼんやりとした面持ちで優弥の頬に片手を伸ばす。
「リオ・・・・・。」
 吐息まじりの声を発してから、優弥はすぐに唇を重ねてきた。情熱的に包み込んでくるその唇は、驚くほどに熱かった。

 激しく舌を絡ませながら、優弥は熱のこもった手でリオの体をまさぐる。動きはさほど早くないのに異常に力強く・・・。いつの間にかパジャマが捲り上げられ、何もつけていないリオの胸に優弥の指先が直接触れた。と同時にねっとりとした生暖かなものが、反対の胸の先端を滑って行った。

 あっ・・・というような溜息ためいきとも声ともいえない音が、自然とリオの口からこぼれ出た。リオがふと目の前を見ると、ソフトクリームでも食べるように、優弥がリオの胸を交互にむさぼっている。

 いけないことになっている、そう思うのに、リオの脳ミソは白い膜がかかったようにうまく働いてくれない。優弥を手で振り払おうとしたが、リオの手はふにゃふにゃと曲がってしまい何の役にも立たなかった。なのに肺のほうは活発に運動を繰り返し、体はどんどん熱を帯びてきている。

「優弥、だめ・・・。」
 やっとのことでそう吐き出した。でも優弥は聞こえていないかのようにどんどんボタンをはずし、リオのパジャマをいでいく。ズボンが引き摺り下ろされる。何が何だか分からないまま、気が付くとリオは全裸にされていた。それを見届けると、優弥はリオを見下ろしながら素早い動きで自分も着ていたタンクトップを脱いだ。

 初めて見る優弥の裸の上半身に、自分とのあまりの違いに驚愕する。共通点は肉が少ないというところぐらいだろうか。筋張った優弥の硬そうな胸を見て、リオの中にある閉じていた欲望という名の扉が少し隙間を開けた。

 何も身にまとっていない上半身を重ね合わせると、優弥の柔らかい唇が舌と一緒にリオの滑らかな肌をい出した。初めて味わう新鮮な感覚に、リオは思わず身をよじらせる。
 優弥の手がリオの下半身に伸び、指先が敏感な肉の部分を探り当てると、ためらいがちに小さく動き出した。無意識にリオの頭がガクンとり返る。体が火照り、息が苦しい。下半身がとろけるような感覚に酔っている。

「優、弥っ・・・・。」
 夢中で優弥の首にしがみ付く。でも次の瞬間、われに返った。優弥が下半身に着ているものを脱ごうとしている・・・・・。
 伝わってくる優弥の興奮が、リオのたかぶった熱を一気に冷却させた。そして、優弥の下着の中から、初めて見るおぞましい物体を目の当たりにした。とたんにリオは酔いが冷め、震え上がった。

 優弥は両手でリオのひざの裏を持ち上げ、そのまま足を大きく左右に開かせた。
「やだっ。優弥っ。」
 慌てて足を閉じようとする。でも優弥は強い力で押さえ付けてそれをさせない。
「だめっ。」
 リオは必死でもがく。そこで優弥が初めて口を開いた。

「ごめん、リオ。もう・・・、ガマン、できない・・・。」
 とぎれとぎれに、優弥が擦れた声で言った。
「入れたい・・・・・。」
 やだよ、こわいよ・・・!パニック状態のリオ。心臓がものすごいスピードで胸を打つ。
「だめっ・・・・・!」
 次の瞬間、リオの下半身に身をくような激痛が走った。
「・・・・・・・・・・・・・・痛い!」

 優弥が動き出す。リオに覆いかぶさった黒い影が、ベッドの上で激しく揺れる。
「痛いっ・・・・・痛いよぉっ・・・・・。いやぁぁぁっ・・・・・。」
 苦痛を帯びた声でリオは叫ぶ。
 リオがパソコンのアダルトサイトで見た動画と同じ動き。規則的で単調な動き。リオがいくら「痛い」を繰り返しても、優弥は決して止まってくれない。
(こんなの動物と同じじゃん・・・、チョー間抜けじゃんっ・・・。)
 なぜ、こんなことをしなければならないのか、リオには一向に理解できない。

「ひぃぃぃ・・・・・ん・・・・・。」
 言葉を発しても無駄だと察したリオは、声を上げて泣き出した。ぎゅっと閉じた目尻から、ひっきりなしに涙が流れる。リオの両手首は、顔の横で優弥に押さえ付けられたままだ。
(レイプみたい・・・・・。)
 目の前には、目を硬く閉じた優弥が小さな喘ぎ声を漏らしながら揺れている。ベッドが振動でぎしぎしと音を立てている。

「あぁぁ・・・・・・・・・・、リオっ・・・・・。」
 優弥の荒々しい息遣いを感じながら、繰り返し押し寄せる下半身を貫く痛みに、リオはただひたすら泣きながら耐えるしかなかった。

 午後十一時。リオは優弥に背を向けてベッドに横になっていた。シーツが小さく鮮血に染まっている。でもそれを何とかする気力はリオには無い。
 背後に横になっていた優弥がもそっと起き上がって、リオの背中に優しくキスをする。
「リオ、怒ってる・・・?」
 優弥が心配そうにリオの顔をのぞき込んだ。リオの目から再び涙がぼろぼろとこぼれる。もう泣きすぎて、まぶた大分だいぶ赤くれている。さっき自分の身に起きたことが未だに信じられない。

 いつかは通らなければならない道なのは分かっていた。だが、こんな形で強引に通過することになろうとは・・・・・。おそらく優弥も同じ思いだろう。酒に酔って自制が効かなくなってしまっただけだ。リオも酔っていたお陰で、アクシデントにろくに対応できなかった。リオの人生における大切なイベントは、ものの見事に成り行きでまかせでお粗末に行われてしまった。
「もう、帰って。」
 優弥の顔を見ずにリオが言った。優弥は無言のまま後始末をすると、服を着て静かにリオの部屋を出て行った。まだ足がふらついていた。


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