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12・・・倉田晃
 次の日、リオがバイトに行くと、知っている顔に出会った。
「あ。」
「あ。」
 二人はお互いに指を差し合った。その男は、隣の日の出台東高校に通う倉田あきらだった。あきらもバンドマンだ。以前チェリッシュがライブハウスに出演した際に晃のバンドが対バンだったことが何度かあり、リオは打ち上げで話をしたことがあった。あきらは今日からリオと同じこのコーヒーショップでバイトをするということだった。
 久々に会ったあきらはぐっと大人っぽくなっていて、妙に妖しげな男っぽさが高校生の幼さを消していた。毛足の長い黒髪を全体的に遠慮がちに立たせていて、やはりピアスをはずした痕が数箇所あった。そういえばあきらはハードコア系が好きだったということをリオは思い出した。あきらもリオのことをよく覚えていたらしく、すぐに「女ヴァンヘーレンのリオちゃん」と言った。ヴァンヘーレンはリオが尊敬するギタリストの一人だ。あきらは気が利いていた。

「何か雰囲気変ったから、最初わかんなかったよ。」
 とリオが言うと、
「そう?変わった?・・・何かな・・・、女か?」
 あきらは低いよく通る声でそう言うと、黒目だけを動かしてリオに不敵な笑みを送った。そんなあきらを見て、リオはあきらの発する不純なオーラを探知した気がして一瞬ブルっと震えた。普通なら冗談に取れそうなあきらのセリフはなぜか妙に現実身があった。

 その日のバイトはリオと優弥の勤務は違う時間だった。他に新しいバイトがいなかったこともあり、昼休みリオはあきらとバンド関係の話しで盛り上がった。
 あきらはリオと優弥が付き合っていることを知っていた。あきらが言うには、二人のことは優弥の派手な告白が話題となって、地元の高校生のバンドマンの間では有名な話だという。他の学校の生徒同士でバンドを組んでいる子もいるので、そうした連中がスタジオの休憩場所でタバコを吸いながらお互いの学校の話題で盛り上がり、うわさはすぐに学校をまたいで広まるというシステムだ。何しろリオの住む町周辺は、四つの駅の間にスタジオが一つしか無い。同じ地元のバンドマンは皆そこに集結するのだ。
 リオと優弥のことは、「れいさんから聞いた」とあきらは言っていた。
(何でそんなことを怜までもが知っているんだ?しかも何でいちいち怜が晃にそんな話をするんだ?怜はそんなヒマ人なのか?怜は近所のおばさんか?)
 リオは疑問を感じると同時に、あきれた。
「でも、カップルで同じバイトなんてすげーな。オレなんて絶対かんべん。」
 というあきらの発言にリオは首を傾げた。
(一緒にいられるんだから、一石二鳥じゃないか?)
 あきらが言うには、「バイト先で他の女と関係するチャンスが無くなるから」だそうだ。それに対しリオが、「不健康だね」 とコメントすると、
「なんで?健康な十七歳男子の証拠じゃねぇ?。」
 とあきらはあっけらかんと返した。
(何か根本的に間違っていないか?)
リオは、何だか優弥が偉く思えた。



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