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1章-6 青マントの事情
   *

「ふむ、あの小僧め。ここに潜んでおったのだな。のんきに水浴びなどをしておったのか」
 湖畔の点々と続く水滴を見て、ガイスは顔をしかめた。
「あの小僧と小娘を捕らえるぞ」
 ガイスは鼻息を荒くして重々しく宣言した。6人の青マントたちはガイスからの前、杖の届く範囲で直立している。
「男は殺してもかまわん。だが、女は生かしておけ」
 そういい終えると、ガイスはノタノタと3歩かけて後ろを向いた。その瞬間、青マントたちはお互いに顔を寄せて相談を始めた。
「小娘っていうと、2人共だよな?」
「ああ、たぶんそうだ」
「どちらかというと銀髪の方に興味を持っていましたよ」
「だとすると、あの子が11人目なのか?」
「あんなに小さくて、まだ子どもなのに」
 青マント達の間に重々しい沈黙が落ちる。
「……とにかく、無傷で捕らえないとな」
 ガイスがノタノタと足を動かすと、青マントたちは瞬く間に整列して直立した。
「メティオスマッシャー(隕石の強撃)の名にかけて、奴らを全員生かしておけん!」
 ガイスは大仰に杖を振り上げて、行く先を指し示す。そして、大きなゲップを無遠慮にすると、ゆっくり。非常にゆっくりと足を踏み出した。極度の過食で歩くことも難しくなっているからだ。
「ええい、貴様。行くといっておるのだ。手伝わんか!」
 ガイスは後ろ向きのまま怒鳴り散らす。青マントの一人があわてて真っ白な羽を懐から取り出した。それは人の二の腕ほど巨大だった。青マントが羽を持って、ブツブツと何かをつぶやくと、ガイスはすっと宙に浮いたまま前進を始めた。
「ふん、気のきかない奴らだ」
 ガイスが尊大にいうと、青マントたちはガイスの後に続きながら、再び集まった。
「生かしておかんというのは、言葉のアヤかな?」
「だろうな。女2人を生かしておくのが正解だ」
「むしろ、皆殺しの中に俺たちが含まれているほうが納得するぞ」
 笑えない冗談に、全員の表情が沈んだ。
「ところで、風が出てきたぞ。今度は寒いと言い出すのかな」
「いや、むしろ暑いのかもしれん」
「あの肉厚だからな」
 青マントたちは、苦笑を浮かべた。途端に、ガイスの足が地面につきそうになって、青マントたちはあわてて杖を構えなおす。
「ならば、両方準備だけしておくか」
 お互いにうなずくと、それぞれ懐から真っ赤な石や、液体の入った水を取り出す。その間も、一刻の無駄もならないとばかりに、早口で話し合う。
「戦いの準備も必要だぞ」
「シーグといったな。あの少年はここでずっと俺たちを観察していた。つまり、いつでも俺たちを襲撃できたんだ」
「それ以前に、ここは見者の封土。今話している事さえ筒抜けだろう」
 今まで一言も話さなかった青マントが口を開いた。
「ベクター導師、どうすればいいんですか?」
「対探知防護を使うぞ」
「あの手は使わないんですか?」
「ガイス様に何をしているのかと聞かれて台無しになる」
 青マント達は全員が真剣な表情になって、ベクターの言葉に耳を傾けている。
「しかし、余計な魔術を使うと怒鳴られますよ」
「俺が暑いか寒いかを聞く。もし、魔術をつかったら、同じタイミングで気づかれないようにうまくやれ。できるか?」
「分かりました」
「だけど、敵の前にガイス様の警戒が優先とは、やってられませんよ」
 ため息交じりの声に、ベクターを除く全員が肩を落とした。
「余計な口をたたく前に杖を振るんだ。いいな?」
 ベクターの押し殺した声にも悲痛な響きがあった。
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