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戦女神編
81話:其々の準備と活動




 帝国の遠征部隊もアーサリムに国があるのならばと、フレグンスの先発隊に倣う形でブレブラバント達と交渉に入った。
 フレグンス側はアルサレナから帝国とも協力体制で動いて構わないという方針を、既に朔耶を通じて受けていたので、ササの街の空いている場所に陣地を構築する作業に入っていた。

 アーサリムの部族戦士達とは共闘する事で一先ず話が付いている。とりあえず、スンカ山のあるアーレクラワまで進軍する事を目的に準備が進められていった。

 竜の厩舎が建てられ、竜籠の離発着場を作る為に街を拡張して整地が行なわれる。締め出されていた商人達も街の定位置に戻って商売を再開した。

 俄かに活気付き始めたササの街の作業風景を眺めている朔耶の傍に、ぶらりとブラットがやって来る。

「やれやれ、のっけから矢の雨で歓迎された時はどうなるかと思ったが、上手く纏まったみたいだな」
「ほんとだねー、誤解が解けてよかったよ」
「やっぱツヅキの能力か」

 何の事? と首を傾げる朔耶に、ブラットは笑って朔耶の頭を撫でた。

「何故ナデナデ?」
「なんとなくだ。ツヅキはいい子だな」
「うーん、ブラットさんはよく分からん……」

 セクハラしたり子供扱いしたりで、行動が理解できないと朔耶は唸るのだった。
 
 夕方まで街の様子を見て回った朔耶は、ギリギリまで作業の進み具合などを交感を通じてレティレスティアからアルサレナに伝えた後、自分の世界へと帰還した。




 ポルモーン渓谷の入り口に近い場所にある街。渓谷に点在する集落から人々が集まり、商品を持ち寄っては物々交換が行われる市もある。この街にもササを護る部族の戦士が巡回しているので、人狩りから狙われる事は滅多に無い。
 その為か、故郷の集落を離れて此処で暮らそうとする者も多かった。

 ルティレイフィア達がササの街を脱出して二日目、ポルモーンの街で馬車を処分し、食糧や織物を買い込んで直ぐに街を出た一行は、渓谷の北側、アーサリム地方とクリューゲルの草原を隔てる岩山付近へとやって来た。

 この辺りにはポルモーン渓谷の其処彼処に見られる自然の石柱が、生い茂る林の如く乱立している一帯で、とても馬車が通れるような場所ではない。人の足でなら何とか進めるが、まるで狭い洞窟内を歩いているのかと錯覚する程に入り組んでいる。

「なるほど、こんな場所なら図体の大きい魔獣や魔物も近付きませんな」
「ふふ。この辺りはまだ通り道だ、目的地に着けば驚くぞ?」

 先導するルティレイフィアの背を追いながら入り組んだ石柱地帯を行くヴィンス達は、突然目の前が開けた事で一瞬呆けたように立ち止まった。ゴツゴツとした岩が転がる黄土色の石柱群を抜けると、行き成り青々とした草原が広がっていたのだ。

 薄っすらと霧が漂う緩い傾斜を描いた草原の丘の上に、一軒の小屋が見える。ここは石柱の乱立する一帯の中にぽっかりと出来た空間。渓谷の地形と自然が作り出した奇跡のような場所、まるで此処だけが違う世界に在るような隠れ里だった。
 数歩先からルティレイフィアが、未だ呆けているヴィンス達に声を掛けて手招きする。

「いくぞ、お前たちに会わせておきたい人がいる」

 慌てて後を付いて行くヴィンス達。ルティレイフィアは丘を登って小屋へと向かった。


「うん? 留守かな?」

 小屋の扉をノックしたが反応が無い事に、ルティレイフィアは小首を傾げる。その時、小屋の前に居たルティレイフィア達に後方から声を掛ける者がいた。

「ひぇっひぇっひぇっ……こんな辺鄙な場所になにか用かえ?」

 気配も無く唐突に現われた白髪の老婆に、咄嗟に身構えるヴィンス達。それを制したルティレイフィアは、老婆に片膝を付いて挨拶をした。思わず目を瞠るヴィンス達だったが、己が主が頭を垂れる御仁であるのかとそれに倣う。

「お久しぶりです、メリルー導師」
「ふぇっふぇっ……レイフィア嬢ちゃんかい。凛々しゅうなったのう」

 うむうむと眼を細めて皺だらけの節榑(ふしくれ)立った手でルティレイフィアの頬を撫でる。老婆は数十年この隠れ里に一人で暮らしているメリルーという名の魔導師で、ルティレイフィアの魔術の師であった。
 一年ほど前に迷い込んで来た手負いのルティレイフィアを助け、術の指南をしたのである。




「おぅおぅ、新鮮な肉もたんとあるのう。レイフィア嬢ちゃんはホンにええ弟子じゃなぁ」
「織物も持ってきました。暫らく厄介になります、これを……」
「ほぅほぅほぅ、それで……あの子達を鍛えたいのかぇ?」

 差し出された魔力の結晶を受け取り、メリルー導師は小屋の隅っこで畏まっているヴィンス達に視線を向けた。

「はい、彼等に術を教えて頂きたい」

 そもそもが規格外の存在である魔獣や魔物を、通常の戦士が個々の力だけで相手取るには限界がある。体力を維持する術、筋力を強化する術、攻撃や防御を補佐する術を自らの戦闘技術に取り入れてやっとまともに対抗できるのだ。
 ルティレフィアはヴィンス達を消耗品(こま)にするつもりは無かった。

「そうかい、そうかい……ふむ、それじゃあ一人ずつ資質を見せて貰おうかねぇ」

 ふぇっふぇっふぇっと笑いながら小屋の裏手に手招きするメリルー導師。魔術の事など殆ど知らないヴィンス達は、ルティレイフィアに促されて緊張気味な様子でメリルー導師に付き従って行った。

 ヴィンス達を送り出したルティレイフィアは、久し振りに訪れたこの場所の変わらない風景を和む気分で見渡した。岩山と石柱の高い壁に囲まれたこの里を知る者は少ない。

 里の周囲にはメリルー導師による結界で常にボンヤリとした霧が掛かっているので、空からでも簡単には見つけられない仕組みになっている。他にも何箇所かここと同じ様な場所が、ポルモーン渓谷には存在していた。

「ふむ……サクヤなら、あっさり此処を見つけるかもしれんな」

 朔耶が漆黒の翼を広げて空を飛ぶ姿を思い出したルティレイフィアは、ふとそんな事を思うのだった。






 スンカ山の中腹、精霊石鉱山の洞穴を刳り貫いて建てられたヨールテスの研究施設。その執務室にて、ヨールテスはオルドリア大陸の主要国に潜む密偵達から送られてきた資料を基に、対サクヤ戦略を練っていた。

 『サクヤ』に対してはこれまで特に明確な敵対を示した訳でも、その方向で動いた訳でもなかった。
 にも拘らず、気が付けば活動の本拠地であるアーサリムまで二大列強国を遠征させ、僅かな働きとその力の発現によって子飼いの地元部族達をも列強国と共闘させるにまで至らせて来たのだ。
 ここまで来ればもう、『サクヤ』にちょっかいを出した者達の末路に見る薮蛇を嫌って、放置して置く訳には行かない。

 地元部族達が予定通り交戦を始めていれば、調教済みの魔獣や魔物部隊を送り込んで列強国部隊を急襲する筈だったのだが、交戦で纏めるようにと指令を出しておいた族長の意見は、その他多数の族長意見に封殺されたようだ。

「キトに力を入れるあまり、此方の管理を怠ったのが原因か」

 ヨールテスは三代以上続く部族や一族は子々孫々、誰が主人であるかを教育しておくべきだったと反省すると、書類を捲りながら情報に目を通して計画書に書き込み、『サクヤ』という存在を分析しながら攻略法を考えて行く。

「うーむ……これはもう、本人を直接どうこうするのは無理だな」

 キトでの戦闘記録やカースティアからの報告を読む限り、意識を奪っても無力化は期待出来ない。寧ろ攻撃的になるらしく、返って危険であると判断を下す。

「となれば……搦め手、此方(オルドリア)での居場所を無くしてしまえばよい」

 『サクヤ』の現われる周期を計算すると、現われてから二日ないし三日程こちらの世界に滞在した後、元の世界に還り、四日から五日は現われない。稀に現われる時もあるが、何れも夕刻以降に僅かな時間のみという限定的な滞在時間。

 それならば、『サクヤ』が還った直後から行動を開始し、近しい者を順次始末していく事で此方の世界での身を寄せる場所を潰していく。そうして『サクヤ』が此方の世界に来なくなるように仕向ける計画を立案した。

「やるなら一人では対処不可能なほど大規模に動かさねばな」

 独り言を呟きながらどのように動くかを思案していたヨールテスの執務机の端に、スッとお茶が置かれた。お茶を運んで来たキルトがヨールテスの計画書を覗き込む。 

「近しい者の抹殺ですか。対象の復讐心を煽りはしませんか?」
「いや、あの娘の行動からしてそれは無いだろう」

 朔耶の行動から内面を読み取っての心理作戦。ヨールテスは『サクヤが居なければこんな事にはならなかったのだ』という趣の精神攻撃も同時に行うと説明し、お茶を一口啜って計画書に修正を加えながら書き足していく。

「愚民は煽られ易いからな」
「なるほど……」

 王都フレグンスへの直接攻撃。王宮区から上流区、貴族街の辺りまでは堅牢な造りの街なだけあって近付く事も容易ではない為、開放区から一般区に狙いを絞る。

 特に、開放区にはサクヤ式工房とサクヤ邸があり、さらに度々サクヤが立ち寄る事もあるという王都大学院もある。予め襲撃用の魔物を王都に潜ませて置き、アーサリム地方から溢れた魔物が街を襲うという噂を流布して、其処に魔物を放つ。

「一般民共は恐怖と怒りの矛先を先ず、アーサリム遠征を決めた王族、貴族達に向けるだろう」

 その後、『先の襲撃はサクヤ個人への報復である』との声明を出して再び襲撃させる。五体も居れば大損害を与えられるであろうと見越して、十体前後潜ませる手筈を考えた。余り多く用意しても、精霊神官に精霊の知らせで予知される危険もある。

 そうして四日後ないし五日後、『サクヤ』が王都に現われた時、王都の開放区と一般区は無惨に破壊され、学院の友人知人にも多数の死傷者が出ており、工房と自宅も使用人ごと壊滅している。というシナリオだ。

「先日も王都に現われてティルファ、帝国と移動し、翌日ササの街に現われた後、異世界に還っている」
「二日の滞在ですね」
「そうだ。計算では次に現われるのは、恐らく四日後だろう」
「そして、二日或いは三日滞在して還る……」

 ヨールテスは今から魔物の潜入部隊を編成して四日後のサクヤ来訪と、更にその三日後か四日後の襲撃活動に備えられるよう、竜籠を使う許可を出した。襲撃は朝、街が活動を始めてからだとの指示にキルトが確認を取る。

「対象が帰還直後の夜間を狙われるのでは?」
「いや、学院を狙うなら通いの生徒達が登校してからの方が中流以上の家系の者も狙えるだろう」

 学院の寮に住んでいるのは平民や中流以下の貴族が殆どなので、『サクヤ』と友人関係を築くには本人がどうあれコネも身分も足りない。何より『フレグンスの戦女神』を畏怖して近付く事さえ躊躇していそうだと予測出来る。
 
「狙うならあの娘が特に気に掛けているらしいという情報のある、ブラフニール公爵家の令嬢辺りが良い」

 身分の高い家系の者に多くの犠牲が出れば、貴族街から上の区画そのものに襲撃を掛けずとも十分な損害を及ぼせる。
 一般区も寝静まっている民家を少数の魔物に一軒ずつ襲撃させるよりも、多く集まっている所に放り込んだ方が手っ取り早く混乱も招けて被害も出易いと説明され、キルトは納得して頷いた。

「では、派遣用の魔物を新たに生産致しますか? 潜伏させるなら人型が良いと思われますが」
「そうだな、飛行能力のある新種を二体と、後は格闘種で構わん。なるべく惨たらしく殺せるようにな」

 キルトは礼をしてヨールテスの執務室を後にすると、魔物の生産工場に向かった。






 学校が終わった放課後、朔耶は兄の車で父の町工場に来ていた。弟と拓朗が開発している武器が一応の完成を見たと言うので、そのお披露目である。

「これだ」
「なにこれ、銃口?」

 篭手を一回り大きくしたような、腕をすっぽり包み込む金属の箱。その先に短い円筒形の筒が突き出ており、三センチ口径の穴が空いている。近接武器を作るんじゃなかったのかと問う朔耶に、弟と拓朗はこの武器について説明した。

「こいつは朔姉が作った『寸勁の篭手』改め『衝撃の篭手』をバージョンアップしたモノさ」
「名付けて、『衝撃の篭手T2』だ」
「『アンバッスさんの拳骨T2』ね」

 正式名称は正確に、などと言いながらその篭手を手に持ってみる朔耶。見た目ほど重くは無かったが、それでも結構ずっしりと来る。振り回す訳ではないので少々重くても問題は無さそうだ。
 それ以前に、騎士達はこれよりもずっと重い武器を片手で振り回すので、この篭手なら素手に等しいかもしれない。

 あんまりな正式名称に軽くへこんでいた弟と拓朗は、篭手の威力を見せると言って以前、回転ヘッドメイスの威力実験に使ったブロック塀に案内した。拓朗が篭手を装着し、スロットに魔力石カートリッジを差し込む。

「じゃ、行くぞ?」

 軽く振りかぶってブロック塀にパンチを繰り出すように篭手の先をぶつけると、先端の筒部分が押し込まれて、中の機構が多重圧縮反発力を生み出し、ドコンという音と共に衝撃排出口から絞りに絞られた衝撃の塊りが打ち出された。

 ブロック塀には衝撃が貫通した穴が空いていた。対象を吹き飛ばす効果を持つ朔耶の作った篭手と違って、こちらは貫通性を高めてあり、使用者への反動もスプリングを内蔵する事でかなり軽減させてある。

「すっごい威力……」
「これなら大型の怪物とかにも効果あるかと思ってな」
「ただ一つだけ欠点があるんだよなぁ」
「欠点?」

 魔力石カートリッジ一つで二発しか撃てないという。

「う〜ん。それって一撃離脱で使うなら十分じゃないの?」
「確実に仕留められるならそれでもいいけど、敵の数が多いとあんま効果ないんだよな」

 予備も含めて篭手一つに付き魔力石カートリッジ五つを一セットで作ったとして、十発で打ち止め。使用する場面が限られるので意外に使い勝手が悪いのだ。戦闘中にカートリッジの交換を行うのにも問題がある。

「生産コストを考えると費用対効果にも疑問が残る」
「でも使用制限って意味では本当に限られた人間にしか配布されない事になって、フィフティーじゃないか?」

 何やら難しい事を言って腕組みしつつ考え込んでいる弟と拓朗を尻目に、朔耶は工場の作業場で何かやっている父の背中を見つけて其方に興味を惹かれた。以前、父も何か得たいの知れないモノを作っているらしいという話を聞いていた。
 
「お父さん、なに作ってるの?」
「おお、朔耶か」

 作業台の上には四角い五センチ角程の小さな箱が幾つか組上げられていた。回りには細かく削られた魔力石の欠片が散らばり、此方で作られた魔力測定器も置いてある。
 箱の表面は真ん中に穴があるだけでシンプルだが、蓋の開いてる箱を覗き込むと中身は結構ごちゃっとしていた。

「もう少し小型化出来そうなんだけどな、時間が無くてまだこんな感じだ」

 そう言って父は別の作業台にその小箱を一つ、魔力測定器を向けながら並べて置いた。測定器は一石か二石を指している。更に小箱の回りに魔力石を並べていく。すると、測定器の針が三石四石と上がり始めた。

「え、これって……」
「魔力の集積装置を作ってみたんだ。魔力石ってのは魔力が空になっても、しばらく放っておくとまた溜まるだろう?」

 魔力石の特性として、使い終えた魔力石は山や平原などに撒いておけば自然に魔力が溜まる。環境の良い場所の方が早く溜まり易いのは、そういう場所に精霊が多く集まるからだとも謂われている。

 魔力集積装置は魔力石の特性の効果を、魔力石を加工する事で引き上げたモノだ。魔力石ライターの魔力を溜め置く部分と魔力を吸い上げる機構を弄り、全面に吸引口を取り付けて周囲から魔力を取り込んでタンク部分に溜める。

 魔力の放出も自然放出ではなく魔力石ライターやランプと同じ構造で引き出される。無属性の石を使っているので純粋な魔力のみを引き出す事が出来るのだ。その先に属性付きの装置を繋げば、その装置のエネルギー源となる。

「これ凄い! お父さん凄い!」
「そ、そうか?」

 これは謂わば自然に充填される魔力のエネルギーパックだ。蓄電池ならぬ蓄魔池である。
 全てのサクヤ式に内蔵可能で、サクヤ式の街灯やランプ等に内蔵すれば魔力石の取替えも不要になる為、街道に街灯を設置する構想も現実味を帯びてくる。組み合わせと仕掛け次第で永久機関も可能になるのだ。

「ホントに凄いよ、お父さんもっと作って!」
「よ、よしっ 任せろ!」

 息子達が作る物に比べて些か地味かな〜等と思っていた父は、娘の思わぬ好反応に張り切った。
 珍しくはしゃいでいる朔耶の様子に、一体どんなモノを作ったのだと見に来た弟と拓朗も、これがあれば篭手の欠点もカバー出来て他の武器にも内蔵出来る上、魔力石モーターにも併用出来ると絶賛した。
 
 父、感無量である。

「とりあえず週末までに作れるだけ作っておいてね」
「よぅーーし、父ちゃん頑張っちゃうぞー」
「ああ、俺達もカートリッジ部分に集積装置を組み込む方向で構造を練り直して量産するぞ」
「EBのスロットも改良するから置いていってくれ、回転ヘッドメイスも出来れば回収よろしく」

 この日、父の工場では夜中まで仕事外の作業に没頭する物造りの男達で熱気に溢れていたのだった。


「さあ、帰ろう。後でお父さん達迎えに来てあげてね」
「うーん、それはいいが、最近すっかり運転手しかしてない気がするぞ」

 朔耶が工場にいる間、近くのスーパーで買出しをしていた兄はそんな風にボヤきながら愛車に帰宅の道を走らせた。




 週末――

 学校も明日からは遂に冬休みというこの日、朔耶はいつも通り実穂、藍香と並んで下校の道を歩いていた。

「それで朔ちゃん、クリスマスくらいは空いてるんでしょ? 空いてるよね? 空いてませんかーーーー!」
「なんでいきなり三段問い? ん〜クリスマスかぁ」
「年頃の女の子が三人集まってクリスマスパーティーっていうのも、さもしいよねー」
「みっちゃん……それは言っちゃダメ……」

 朔耶はテンションの上がり下がりが激しい藍香の『あたしには朔ちゃんがいるからいいモン』という呟きを聞かなかった事にしながら、日程をぼんやりシミュレートする。

 向こう(オルドリア)での活動は、アーサリムの問題が片付くまでカースティアの事業も街道整備も出来る事はあまり多くない。早く問題が片付くよう積極的に手助けした方が各国にとってもアーサリムにとっても良さそうだと判断した。

「うん、イブとクリスマスの二日なら空けとくよ」
「やたーー! 朔ちゃぁ〜ん」
「いいの? 大事な予定とかない?」
「うん、大丈夫」
 
 じゃれ付いてくる藍香をヒラリと躱して背後からスリーパーを決めながら、朔耶は気を使う実穂に微笑み掛けた。

「朔ちゃ〜ん……もっと優しく……カッコは〜と」
「……このまま締め落としてやろうかしら」

 そんな調子で何時もより浮かれ気味に(おど)けながら分かれ道まで来た三人は『それじゃあ来週のクリスマスに』と言って其々の帰り道へと別れた。


「ただいま〜」

 帰宅した朔耶は鞄を部屋に置いて制服のまま居間にやって来ると、明日向こう(オルドリア)に持っていく荷物の整理を始める。今回は対魔物用の武器も持っていくので大荷物だ。

 フレイやレティレスティアにもシャンプーの類を持っていく為、別のリュックに詰め込んでいく。効果の程はフレイで実証済みなので、屋形船作戦が遅れそうな代わりに麗しの香り作戦を挟む事にした。
 帝国のアネット達の所にも、サクヤ式自動二輪に魔力集積装置を組み込むついでに持っていくつもりだ。

「先に量産型の篭手をササの街に持っていって、それから王都の方にも回ろうかな」

 数日に分けて持っていく荷物を前に、朔耶はクリスマスの予定も話し合わなくてはと携帯を取りに部屋に戻るのだった。







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