カースティア北東に広がる湖はかなり大きく、一周するのに馬で回っても三日は掛かるほどの広さだ。朔耶は湖の上空を旋回しながら湖面の様子を窺った。漁をしている船などが見える。
「琵琶湖みたいな感じなのかな〜、大きな船を走らせるか…… それとも足漕ぎボートとか」
此方の気候は日本の四季ほど明確に移り変わる事は無くほぼ安定しているようなので、冬でも湖面が凍り付くような事はない。湖の周辺には小さな集落らしき建物群も幾つか確認出来た。 漁をしていたのは集落からの船だったようだ。
「漁船がいるなら魚も結構いるって事よね…… 釣り船…… 魚…… !」
幾つかのキーワードを口にして閃く朔耶。お金と時間が余っていそうな人達に流行るかもしれない『釣り船』、釣ったその場で調理して食べる事も出来、カースティアの宿とも連動して持ち帰った魚を宿泊する宿で料理として出して貰える。
「ベテランの船乗りと料理人と、船もただの船じゃなく色々積み込める専用の船、あと釣具も調べなきゃね」
調理に必要な道具なら魔力石コンロを小型化して船に積み込める。ベテランの船乗りを確保する事で夜釣り船も出せるだろう。湖周辺の集落に住む漁師を雇う手もあるし、彼等から湖の魚について情報を得る事も出来る。
「人手は何とかなりそうだから、問題は船と釣具よね」
朔耶は思いついた構想を頭の中で纏めながら、カースティアの派遣騎士団本部へと翼を向けた。
「ほーう、中々面白ぇじゃねえか。それなら金持ちから一般人まで楽しめそうだしな」
「うん、まだ色々考えないといけない事はあるけど取り合えずそれは後回しにして、船とこっちの釣具ってどんな感じ?」
竿と糸と釣り針、魚を釣るスタイルは世界が違っても殆ど変わらないようだった。釣り船観光事業が上手く行けば魔力石集めの他に釣り用の餌を集める仕事が出来るのでルアーのような概念はまだ必要ないと、朔耶は元の世界から釣具の技術を持ち込む事は見送った。
「人件費は結構安く付くけど、問題は船とか設備の初期費用なのよね…… 取りあえず今の時点で思いつく必要なモノを上げるから、費用の算出しといてくれる?」
「面倒くせぇなぁ」
「くらっ! 上官命令よ」
朔耶はそう言って王室発行の許可書を見せたが、ガリウスが目の前に突き出された許可書に齧り付こうとしたのでひょいと引っ込める。
「食うな!」
「やれやれ…… おーーい、フラン! スラント!」
ガリウスに呼ばれたフランが朔耶におどおどしつつ、ぽっちゃり系の騎士スラントと並んでやって来る。
「サクヤの事業の手伝い、お前等に費用の算出とか任せる」
「え、僕らに?」
「それは、いいけど…… 会計の職員がいるんじゃないのかい?」
仕事を任されたフランとスラントは特に不満を抱いた様子は無くも、何故本部に務める会計職に任せないのかと不思議そうに疑問を口にした。
「しょーがねーのよ、どいつもこいつもサクヤにびびっちまって、声も掛けられねーんだからよ!」
ガリウスは受付からこのフロアにいる職員や騎士達を見渡しながら、態と聞えるように大声で答えた。軽薄な笑みで挑発するような視線を向けられてムッとなる者もいたが、ガリウスの隣に立つサクヤの姿が視界に入ると慌てて目を逸らす。
この前の門前での一件と、和平会談襲撃事件からの暴れっぷりを見た者の証言などで朔耶に対する騎士達の畏怖は、王室が朔耶を特別扱いする意味とも相俟って相当なモノになっていた。
王国騎士団の中でも、王都の上流区や城内を警備する騎士達には朔耶と交流する機会が度々あったので、朔耶の人となりを理解しているが故に、そこまでの畏怖を抱くには至っていない。
「なんで態々喧嘩売るかな〜 アンタは……」
呆れたように言いながらも、朔耶はルティレイフィアがガリウスに惹かれる理由を少しは理解出来る気がした。フレグンスの門閥貴族出にしては珍しい、身分を無視して"相手"を見る事が出来る人間なのだと。
『自然体なのよね、コイツは……』
案を細かく纏める為に、朔耶は一旦もとの世界に戻る事にした。兄や弟にも相談して自身の考えだけでは足りない部分を補って貰う。街で魔力石の袋詰めを買って本部の屋上に上がった朔耶は、まだ日の高い内に自宅の庭へと帰還する。
「うわっぷ」
帰還するなり洗濯物に顔を突っ込んでしまった。
「うおっ どうした朔耶、随分早い帰りじゃないか。何かあったのか?」
「あ、お兄ちゃん丁度いい所に……」
今日は仕事が休みらしく、縁側でビールを飲んでいた兄が驚いたように声を掛けてきたので、朔耶は早速カースティア観光事業の話を切り出そうとしたが――
「まて、その前に今お前が頭に被っている洗濯物を何とかすべきだ」
「え? これって……」
「俺のパンツだ」
「ぎゃーーーーーー!」
朔耶は兄のパンツを投げ捨てた。
「で、釣り船で客を引こうと考えたとな?」
「うん、釣ったその場で調理して食べられたり、宿に持って帰って料理してもらえたりってのを考えてるんだけど」
船の規模や船員、運営するにあたって必要な人員などのアドバイスを聞く。朔耶の兄は特にそういう事に詳しいという訳ではないが、偶にそういった船を利用する事があるので参考までに聞いてみたのだ。
居間でノートに色々と書き込みながらカースティアの観光事業について纏めている朔耶と兄の所に、弟が円盤状の物体を持ってやって来た。
「朔姉、魔力石モーター出来たぞ!」
「嘘っ ホントに!?」
直径三十センチ程の、映画のフィルム缶を重ねたような厚みのある円盤。弟が蓋を開けて見せると、内向きにぐるりと並べられた反発力ユニットの先端が真ん中に置かれた歯車状の円盤の爪部分に向いている。この爪を反発力が押す事で歯車状の円盤が回る。
「ああ、そっか。 やっぱりそれで回るんだ?」
「うん、流石にこの機構は手作りじゃ無理だったろ? 父ちゃんの工場で作ってみたんだ」
反発力ユニットの根元は可動式のソケットにしっかり取り付けられてあり、外側からつまみを弄る事で反発力ユニットの角度を一斉に変える事が出来る。ユニットに魔力を供給する為の穴も缶の外側から取り付けられるようになっていた。
歯車状の円盤は平らな面を両側から挟みこむように取り付けられているユニットの反発力で、缶の中では常に中心で浮いているような状態だった。この仕掛けの為に缶の厚みが十五センチ程に至っている。
「ベアリングが何とかなればもっと薄く出来ると思うけど」
「ううん、これで十分使えるよ。でも、向こうで作るのはちょっと大変かな」
大まかな形は作れてもソケットの部分や細かい機構は、専用の道具から用意しなければ難しそうだった。可動式にしなければ回転のピッチが変えられないので回りっぱなしになってしまうのだ。
「これ、もっと作れる?」
「材料さえあればね」
「ふむ、動力か……」
朔耶と弟のやり取りを聞いていた兄がポツリと呟くと、『ちょっと待ってろ』と言って席を外す。そして自分の部屋から何やら色褪せた箱を持ってきた。箱の表面には力強く波を切って走るクルーザーの絵が描かれている。
「これだ」
箱を開けると、中には古い電池やらプラモデルの枠やらチューブの捩れたセメダインやら130Rモーター等が雑然と放り込まれてあり、その中からプラモデルの船などに使う小さな脱着式の船外機を取り出した。
「これを作って釣り船の推進機にすれば良い客寄せになるんじゃないか? 向こうじゃ帆船か手漕ぎだろ?」
「なるほど…… 確かに良い宣伝になるかも」
「うーん、向こうで作れる事が前提だよな? 動力部分はこっちで作るとして」
あまり干渉による急激な技術革新はその世界の自発的な発展と概念の成熟に良くないと主張する弟の言に、朔耶も兄も同意して動力以外は向こうで作る事を前提に、なるべく簡素にした新しい推進機関の仕組みについてアレやコレやとノートに書き記していく。
「実際の推進力とか魔力石の消費量とか、色々テストしなきゃだねー」
「ライフジャケットも用意しておいた方がいいぞ、意外に落ちる人は落ちるからな」
そんな調子でテーブルの上に広げたノートを囲う兄と妹と弟は、母から夕飯が告げられるまで事業会議を続けていた。
「こんな時間から行くのか?」
「うん、フラン達に頼んでおいた費用の算出とか早く聞きたいし、追加分も調べてもらわなきゃいけないからね」
夕飯を済ませてお風呂から上がった朔耶は、髪を乾かす間も惜しいとリュックにノートを詰めて庭に出た。フランの名を聞いて兄がピクリと反応した事については見なかった事にする。
魔力石モーターは燃料となる魔力石を積めておくタンクをまた別途に作らなくてはならないので、その辺りは弟に任せて今回は持っていかない。
「んじゃ、行ってきまーす」
「気ぃつけてな」
『向こうの世界へ――』
ウム
電気の明かりに照らし出された薄暗い自宅の庭から、更に薄暗い何処かの街角へと景色が切り替わる。熱気をはらんだ風が朔耶の頬を撫で髪を靡かせて吹き抜けていった。建物の壁が周囲を囲む路地のような場所。
『今度は何処の街に出たの?』
……ヒトノハナツ カッキヲ オッテミタノダガ……
何やら言い難そうな念を送って来る神社の精霊を訝しみながら、朔耶は明かりと人の行き交う影が多く見える通りに出た。五メートル程の道幅の両端に水路が通り、そこを流れるお湯が蒸気を纏わせながら建物の外壁に取り付けられた水車を回している。
大小様々な宿が軒を連ね、宿前や路地の入り口には露出の高いベールのような布を纏った女達が通りを行く男達を艶かしく誘う。香の漂う甘ったるい空気と薄暗いボンヤリしたランプや篝火の揺れる炎が通りの妖しげな雰囲気を一層引き立てていた。
『…………ちょっと』
イヤ ホントウニ スマヌ
ここは温泉の街バーリッカムの一角にある盛り場、『春売り通り』であった。
『そりゃクリューゲル国内に出たのはいいけどさ…… またなんつー所に…… うわっ あの人エロッ!』
……サクヤ
右を見ても左を見てもキワドイ格好をしたお姉さん方が自らの肢体を武器に道行く獲物達を扇情的な笑みで捕まえては腕を絡めて宿の中へと消えていく。
朔耶は暫らく『不本意ながら社会見学の一環』として通りの様子を眺めていたが、ふいに視線を感じて振り返ると――
「嬢ちゃん、幾らだい?」
ニッタリ顔のおじさんに声を掛けられた。 朔耶は慌てて手をぶんぶん振りながら『あたし違います!』を連呼して逃げ出した。
えっちぃ格好をしている訳でも無いのに春売りと間違われた事でノンビリ見物していられる場所ではないと、通りの出口に向かって走っていた朔耶は少し余所見をした瞬間、賑やかな音楽が奏でられている店から出て来た人影にぶつかってしまった。
「わぷっ」
「おおっとぉ〜 へっへ、気が早いなぁ嬢ちゃん」
酔っ払い特有の呂律が伸びた口調でそう言った男は、酒場を出るなり自分の胸に飛び込んで来た少女を抱き締めた。
「うわわっ ちょ、ちょっと! 違うっ あたし違います!」
「んん〜〜 聞いた声だなぁ〜 それにこの匂いも……」
「あっ 団長〜〜もう女決めちゃったんすかぁ〜?」
「向こうにイイ店があるってのに〜〜」
酒場からどやどやと出て来る傭兵らしき集団は、店の前で黒髪の少女を腕に抱いている男を団長と呼んで集まってきた。ここに至って朔耶は自分を抱き締めている男の声に聞き覚えがある事に気付く。
「え? ブラットさん!?」
「んん〜〜? 確かに俺はブラットだぜぇ? 銀月の牙っ ブラット・パーシバルであります!」
酔いで若干軽い調子になっていたが、彼は『銀月の牙』パーシバル傭兵団の団長、ブラット・パーシバルだった。
「……しかし嬢ちゃんの黒髪、顔立ち、ツヅキに似てるなぁ」
「本人よ、ていうか酒臭っ! ちょっと放してっ」
朔耶はぐいぐいとブラットの胸板を押して腕から逃れようとするが、流石に鍛え上げられた傭兵の体躯、多少酔いが入っているくらいではビクともしない。
「おおーツヅキか! 会いたかったぜえー?」
「ぎにゃーー! 擦り寄るなーー!」
ブラットは朔耶が"ツヅキ"本人だと分かると更に腰から抱き上げるようにして頬をぐりぐり摺り寄せて来た。身長差があるので朔耶の足が浮く。朔耶は真っ赤になりながらブラットの肩や頭をポカポカ叩いていたが、まるで効果がなかった。
「ん〜〜 それにしても……お前」
「?」
「本当に美味そうな匂いがすんな」
べろん。
「っ!!!!」
抱き寄せた朔耶のか細い首元に鼻を擦りつけるようにしていたブラットは、その白い喉仏の辺りから左耳の裏あたりまで舌を這わして文字通り味わった。
「ひやゃああああああああああああああああああ!!」
カアアァン!
瞬間、悲鳴と共に閃光が走り、電撃がブラットの身体を弾き飛ばす。それでも倒れる事無く少し踉けただけで踏ん張ったブラットに、雷を纏った朔耶の右手が唸りを上げる。伝家の宝刀、稲妻ビンタが炸裂した。
パカアァアアン!!
「へぶぅっ!」
「うははっ 団長が伸されたぞ」
「うへぇ 痛っそうだなアレ」
頬っぺたからプスプスと白煙を上げながら横倒しになっているブラットと、団長が張り倒されたのを見て大笑いしている団員達を余所に、朔耶はハンカチで舐められた所をごしごし拭きながら悪態を付いていた。
「もうっ バカ! なんてことすんのよっ お風呂入ったばっかりだったのに!」
サイナンデ アッタナ
『アンタも人事みたいに言ってないでちゃんと守ってよ!』
イヤ イマノハ ヨソウガイデ アッタ
ともかく、早く人気の無い静かな場所を見つけてカースティアに飛ぼうと、朔耶は春売り通りの出口を目指して再び走り出した。こんな所で翼を出して態々騒ぎを起す必要も無いし、この通りにある適当な路地には妖しげな気配が満ちているので入って行く気にはならない。
「またなー ツヅキー」
「またカレー作ってくれー」
団員達の呑気な声を背に受け、朔耶は少しだけ振り返って手を振った。
「あ〜〜いつつ…… ひでー目にあったぜ」
むっくり起き上がったブラットは頬を撫でながら訝し気な顔で口をもごもごさせている。
「どうしました団長? 歯でも折れましたか?」
「いんや、……毛だな」
「毛ですか」
舌の上から摘み上げた黒い糸のような艶のある髪の毛が一本。朔耶の首筋を舐めた時に入り込んだらしい。
「御守りにでもしとくか」
ブラットはそれを小さな布切れに巻き付けると、懐に仕舞い込んだ。
「そういうのって下の毛じゃないと効果ないんじゃないですか?」
「材質は同じだ」
「はぁ…… とんだ道草だったわ」
バーリッカムから飛び立った朔耶は一路カースティアを目指して只管草原が続く街道の上空を飛んでいた。偶に馬車隊のランタンらしき明かりが街道を行くのが見える。
「ちょっと遅くなるかもしれないなぁ」
デハ スコシ イソグトシヨウ
飛ばしに飛ばしてカースティアに到着したのは、それから約三時間ほどが経過した頃だった。寝静まるにはまだ早く、一般の店は店を閉じる時間帯。朔耶は直接 派遣騎士団本部の屋上に着地すると、そのまま建物内に入って行った。
「あ、フラン君」
「わっ さ、サクヤちゃん」
未だにきょどっているフランに内心苦笑しながら、朔耶は早速頼んでおいた観光事業の費用算出について訊ねた。
「うん、大まかな費用は出たけど…… これ、結構掛かるみたいだよ?」
「どれどれ…… あれ、こんなもん? 船が一艘で金貨九枚くらい掛かる他は大した事ないじゃん」
朔耶が提示した規模の船なら金貨八枚と銀貨三枚、銅貨十枚程で発注出来る。他、備品等は消耗品と追加分を全部合わせても金貨二から三枚分程度にしかならない。
「大した事ないって……、金貨だよ? この追加分と合わせたら多分、初期費用は一艘に付き金貨十一枚近く必要になると思うけど」
ノートを片手に朔耶が口頭で追加分を上げていき、フランはそれを聞き取りながら書類に書き込みつつ費用の捻出をどうするのかと不安を口にする。
「大丈夫だよ、あたしの工房で貯めたお金が金貨で五千枚くらいあるもん」
「ご、五千……」
ちなみに王国騎士団に所属する騎士の給料は一番下っ端から小隊長までで一日銀貨二枚から三枚、中隊長以上で銀貨五枚から八枚、団長クラスで金貨二枚から五枚、他、課せられた任務の達成や特別な働きをした場合の報告によって追加報酬が支払われる。任務達成による報酬の方が給金よりも多い。
「ある所にはあるんだなぁ……」
「でも大半は街灯設置事業で儲けた分だからね」
サクヤ式コンロの売り上げだけなら金貨二十枚にも満たないのだ。
「ね、ねえサクヤちゃん。 そのお金で直接カースティアを支援するってのは……」
「駄目〜。 それじゃあ只の施しだし、お金が尽きたら一気に潰れちゃうよ?」
カースティアの街が自力で稼いで豊かになれるようにしないと人も街も成長しないと説く朔耶を、フランは只々感嘆の念で見詰めた。一方の朔耶はといえば、父親の言葉を受け売りで言ってみただけだったのだが、物凄く感心した眼差しを向けられてちょっと居心地が悪かったりしている。
「ま、まあ取りあえずこの追加分の費用算出と湖についての調査をお願いね、何か危険なモノが居たりしないか地元の漁師さんとか当たってみて? あたしは明日にでも王都に飛んで色々発注してくるから、船長さんとかの人員の目処もつけとくように」
「うん、分かったよ」
必要事項を話し終えた朔耶は今回も本部の宿舎を寝床に借りる事にした。前回と同じ部屋に案内された朔耶は、部屋に入る前にフランを振り返り、一応釘を刺しておく。
「フラン君…… また、あたしが寝てるところに忍び込んできたり…… しないでね?」
もじもじしながら肩を竦めて上目使いで微妙に目を泳がせつつ恥ずかしそうに言ってみる。
「あはは、流石にこの前ので懲りたからもうしないよ」
「ありゃ? フラン君にこの手は通用しなかったか」
あまり反応が無かったので、さっさっと元の雰囲気に戻った朔耶は飄々とそんな事を言う。実直な騎士達ならともかく、フランも悪名?高いガリウス小隊の一員である。女の演技を看破られる程度には女遊びも経験済みだった。
それじゃあまた明日とオヤスミの挨拶を交わして部屋に入った朔耶は神社の精霊に警護を頼んでベッドに潜り込んだ。
「つ、通用しない訳ないじゃないか……」
演技と分かっていても可愛いものは可愛い、朔耶があのような冗談を向けて来た事から前回の夜這いの一件は赦して貰えたようだと、安心したからこそ落ち着いた対応で返せたものの、フランの動悸は暫らく治まりそうになかった。
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