第七十三話 思い出したあの日
第七十三話 思い出したあの日
フランスはずっと忘れていました。イギリスとの戦争のことは覚えていても彼女のことは忘れていました。革命というのが起こって上司がめまぐるしく替わりました。そのうちにコルシカから来た小柄な人が上司になって彼に対して言うのでした。
「ジャンヌのことだが」
「誰ですか、それは」
「何故忘れているのだ」
上司はフランスが彼女のことを完全に忘れていることに驚きました。そして彼に言います。
「あのイギリスとの戦争の時だ。御前の側にずっといた」
「ずっとですか」
「馬鹿な、どうして覚えていないんだ」
上司にとってはそっちの方が不思議でした。
「あれだけ助けてもらったのに」
「助けてもらった。俺が」
「そうだ」
また上司に言われます。
「忘れているならまた教えてやる。いいか」
上司は必死になってジャンヌのことをフランスに教えます。そうして遂にジャンヌのことを思い出したフランスは。ジャンヌの像を造って彼女に対して言うのでした。
「悪いな、今まで」
少し俯いて申し訳ない顔で。
「忘れていたよ。けれど」
あの時何があって彼女と共に何をしたのかを思い出したのです。辛い戦場での戦いも家の一部を取り戻した時の喜びも。何もかおを思い出していたのです。そしてそれはフランスの心に今度こそ深く刻み込まれ。
「もう忘れない。いいな」
強い言葉で言うのでした。そしてジャンヌの顔を見て笑うのでした。その時何故か像のジャンヌの顔が微笑んだように見えました。
第七十三話 完
2008・3・3
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