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第二百四十七話 今ではもう
                第二百四十七話  今ではもう
 王様がいなくなってからもう長い年月が経ちました。王様が何かと建築させていたお城はドイツの家の中の名所の一つとなって毎日多くの観光客がやって来ます。ドイツの友人達も時々やって来ます。
「奇麗ですね」
「うん、何度見てもね」
 今日は日本とイタリアが来ています。ノイスヴァンシュタイン城を見て感激しているのです。
「地下には白鳥の舟と泉ですか」
「ローエングリンとタンホイザーを表わしているんだ」
 ドイツはそう日本に説明します。
「あの人が好きだったんだ。どちらもな」
「そうだったんですか」
「ここでよく遊んでおられた」 
 このことも話します。
「よくな。俗世を忘れる為に」
「あの人って人間嫌いだったんだよね」
「ああ、そうだった」
 今度はイタリアの言葉に答えています。
「そうなったんだ。なられたんだな」
「そうだったんだ」
「あの時は困った」
 あの時のことを思い出します。
「けれど今ではな」
「どうなの?」
「懐かしいな」
 目を閉じて二人に言うのでした。
「あの時のことも。このお城もな」
「好きですか?」
「ああ、好きだ」
 日本の言葉と共に目をまた開いて泉を見ます。貝殻もあり白鳥あってとても幻想的です。その幻想を見ながら呟くのでした。
「奇麗だよな」
「そうですね」
 多くのことがあった王様との思い出は今でもはっきりと覚えています。けれどそれは嫌なものではなく悲しく、そして懐かしい。ドイツの中ではそんな思い出になっているのでした。


第二百四十七話   完


                  2008・6・29
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