第二百四十四話 誰も診ていないのに
第二百四十四話 誰も診ていないのに
王様は次第に誰と会わなくなって夜に起きて昼に寝るようになって。どんどん孤独になってきました。それで周りの人達は王様をどうかしようと思いだしました。そしてそれは実行に移されました。彼等にとっても彼等なりにそうしなくてはならない事情があったのです。
「もう王様でいることは無理だよな」
「そうだな」
そう言い合うのでした。
「だからもう」
「退位して頂くしか」
「ドイツさん、そういうことで」
そのうえでドイツに話すのでした。
「御願いします」
「王様については」
「仕方ないか」
ドイツも王様には散々悩まされていたのでそれに賛成することにしました。個人的には色々思うところがあるのですがそれは心の中に押し殺しました。そのうえで皆と話し合って。王様に退位してもらって別の王様を上司に迎えることにしたのです。こうしたことは昔からよくあったことなので馴れてはいました。けれど決して気持ちのいいものではありません。
そしてお医者さんにこう言わせました。王様はもうおかしいと。そう言わせたのです。
けれど王様は。それを聞いて悲しそうにこう呟いたのです。
「誰も僕を診てはいないのに。どうしておかしいなんて言えるんだ」
その通りです。誰も王様を見ていないのです。けれど誰も見てはいない、見られなくなったから王様はおかしいとされたのでした。王様はある場所に移されることになりました。王様ではなくなって。けれどこれが本当の悲劇のはじまりでした。
第二百四十四話 完
2008・6・27
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