第二百四十二話 ワーグナーの横暴
第二百四十二話 ワーグナーの横暴
王様はまずワーグナーが抱えていた多額というレベルでは済まされない借金を全て肩代わりしました。当然バイエルンのお金からです。
「あの、あれだけの額の借金を全てですか」
「いいじゃないか、これ位」
王様は個人の借金とは思えない額を肩代わりしても平気でした。
「ワーグナーは偉大な音楽家だよ。その彼に不自由があってはならないから」
「ですが今度は政治に口出ししますし」
「彼は立派な思想家でもあるんだ」
王様はこのことからもワーグナーを認めているのです。ワーグナーも自分は政治にも一家言あると信じて疑っていません。実際にそれでお尋ね者となっていたのです。
「だからそちらでも頼りにしているよ」
「女性問題は」
「芸術家には付き物さ」
これも気にしていません。
「僕は女性には興味はない。だから構わないさ」
「左様ですか」
「それよりもだね」
ここで自分からドイツに対して言います。
「ワーグナーにどんどん援助してあげよう」
「作曲にですね」
「それだけじゃない。歌劇場も造ってあげるんだ」
「ワーグナーの為だけに!?」
「そう、ワーグナーは凄いことを言ってるんだよ」
王様は恍惚とした顔でドイツに語ります。
「自分の作品だけを上演する歌劇場を造るんだって。凄いじゃないか」
「確かに」
ドイツにとっては馬鹿げたことです。けれど王様は違う意見です。
「だから是非。生活も不自由させてはいけないし作曲の為にもね」
王様はここから少しずつ何処か世間とずれていきました。世間が、そして他人と会うことが嫌になってきてしまったのです。王様でいることに疲れてしまったのでしょうか。そうして段々と変わっていって。悲劇が進んでいくのでした。
第二百四十二話 完
2008・6・26
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