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第二百四十一話 即位してまずは
第二百四十一話  即位してまずは
 ローエングリンを見てからというもの王様はワーグナーに夢中です。寝ても醒めてもワーグナーのことばかり考えていて彼の音楽を聴いてオペラを観るだけではありません。ワーグナーは本も書いていますがその本も貪るようにして読んでいます。
 そして王様が遂に十八歳の若さで即位すると皆この物憂げな美男子の王様を熱狂的に迎えました。けれど王様が最初にドイツに言った言葉はこれでした。
「ワーグナーを僕のところに連れて来て」
「えっ、ワーグナーをですか」
「そう、今すぐに」
 こうドイツに言うのです。
「僕のところに連れて来て。いいね」
「ですがあの男は」
「評判なんかどうでもいいんだ」
 悪名高いワーグナーですが王様はそんなことには構いませんでした。
「それよりも僕はワーグナーと会ってその音楽を聴きたいんだ。いいね」
「どうしてもですか」
「そう、どうしても」
 強い言葉になっています。
「聴きたい。だからね、御願いだよ」
「・・・・・・わかりました。それでは」
 内心思うところが色々ありました。けれど上司の言葉ですから逆らえません。ドイツは自分の気持ちを押し殺して王様の言葉に従うことにしたのでした。
「すぐに探して連れて来ます」
「頼むよ。ワーグナー」
 夢うつつの感じでワーグナーの名前を呟くのでした。
「もうすぐ貴方に出会えるのだ。やっと」
 こうして王様の前にワーグナーは連れて来られました。王様ははじめてワーグナーに出会って感激することしきりでした。けれどこれが。悲劇のはじまりだったのです。


第二百四十一話   完


                2008・6・26
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