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第二百四十話 バイエルンの上司
              第二百四十話  バイエルンの上司
 ドイツの数多い上司の一人でした。この人の名前をルードヴィヒといいます。
 とても奇麗な顔をしていて背が高く。女の人なら誰でも惚れ惚れするような人でした。ルードヴィヒ王は幼い頃から古典が大好きである日オペラをドイツと一緒に観ることになっていました。
「ワーグナー?」
「はい、ワーグナーです」
 ドイツは馬車の中で王に説明します。
「今はドイツにいません。問題を起こして」
「問題ねえ」
「他にも借金や差別発言や女性問題やらある人物ですが」
「とんでもない男みたいだね」
「否定はしません」
「女の何処がいいのだか」
 王様は女の人が好きではありませんでした。だから今の言葉は自然に出たのです。
「けれどまあいいさ。それで演目は何だったかな」
「ローエングリン」
 ドイツは静かに語りました。
「それです」
「ふん。ローエングリン」
 話を聞いても別に期待していないようでした。
「まあ観てみるよ。いいね、それで」
「わかりました」
 こうして王様ははじめてワーグナーの作品を観ることになりました。白鳥に曳かれた舟に乗り姫を救う白銀の騎士、彼の姿とその音楽に触れた王様は。全てが変わってしまいました。
「ワーグナー、これがワーグナー」
 観終わってからも。まるで魂を抜かれたかの様に呟くのです。
「何て素晴らしいんだ。これこそが僕の全てだ」
 これが全てのはじまりでした。王とワーグナーの出会い、ドイツの白鳥への記憶はここからはじまるのでありました。


第二百四十話   完


                  2008・6・25
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