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第二百三十九話 白鳥の騎士
                 第二百三十九話  白鳥の騎士
 イタリアの家と同じ位オペラが有名なドイツの家。とりわけ有名な作曲家といえばやはりワーグナーです。他にもかなりいますがやはりドイツといえばワーグナーです。
「やっぱり実に素晴らしいですね」
「うん、本当に」
 今日は日本、イタリアを連れてそのワーグナーの作品を観ています。観ている演目はローエングリン、ワーグナーの代表作の一つです。
「この音楽とローエングリン自身がまた」
「実に素晴らしいよ」
「そうだな。ワーグナーの作品じゃ俺もこれが一番好きだ」
 ドイツもそれは同じでした。舞台を見ながら話を続けています。
「色々と思い出もあるしな?」
「思い出といいますと」
「あの上司の人のこと?」
「ああ、あの人もそうだったな」
 かつての上司のことを思い出します。あのチョビ髭の上司を。
「ワーグナー、特にこのローエングリンが好きだった」
「そうでしたね、本当に」
「あの人は特にね」
「そしてあの人もだったな」
 ドイツの脳裏に遠い昔の記憶が蘇ります。
「あの人も」
 語れば語る程昔のことが蘇ってきます。その記憶が彼を包んでいきます。
「白鳥の騎士」
 ドイツはこの言葉を呟きます。
「あの人がなりたくてもなれなかったもの」
 遠い遠い昔の記憶がはじまります。ドイツの心の中で。それは彼にとって決して忘れられない、懐かしくもあり腹立たしく美しく、そして悲しい記憶であります。


第二百三十九話   完


               2008・6・25
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