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第百六十九話 家を出る前に ☆
             第百六十九話  家を出る前に
 皆が神聖ローマのお家から出て行きます。一人、また一人と。その目に暗い決意を抱いているのは皆同じです。いよいよ戦いがはじまろうとしています。その中には神聖ローマもいます。皆が彼にも声をかけます。
「神聖ローマ、準備が済んだらすぐに出発するからな」
「ああ」
 神聖ローマも出る準備をしています。けれどその時にも懐に何か持っています。
「あとこれだけだ。これを運んだら」
「何だよその絵は」
 皆彼が持っているその絵を見て言います。
「絵なんかかさばるし置いてきゃいいのに」
「いや、それでもな」
 彼はその絵をどうしても持って行くのでした。見ればその絵は。
「何それ好きな子?」
「オーストリアの召使いだったあいつじゃねえか」
 イタリアの絵でした。絵の中でにこりと笑っています。
「そんな絵置いていってもいいだろ」
「それでもな」
 彼は手放そうとしません。どうしてもそれを持って行きます。
 絵を見ながら彼は思い出していました。これまでのイタリアとの思い出を。やっぱり離れたくありません。それでも家を出なければなりません。これでお別れだと思うと心から悲しくなったのです。けれどその時でした。
 イタリアがいました。神聖ローマの目の前に。彼を見た神聖ローマの目が動かなくなりました。その心も。


第百六十九話   完


                   2008・5・10
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