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第百六十三話 ロンリー=ノーブル ☆
第百六十三話  ロンリー=ノーブル
 ある日イタリアが起きて部屋から出ると家が静まり返っていました。とても広くて豪奢なお家にいるのはイタリアとハンガリーさん、それにオーストリアさんだけでした。オーストリアさんは呆然として自分の後ろに立っている二人に対して背を向けたまま声をかけてきました。
「丁度よいところに来られましたね」
「は、はあ」
 ハンガリーさんは呆然としたままオーストリアさんに対して答えます。
「あの、オーストリアさん」
 イタリアも戸惑いながらオーストリアさんに声をかけます。
「皆は」
「イタリア」
 静かで優しい言葉でした。けれどイタリアの方を振り向きはしません。
「外に行って水を汲んで来なさい」
「えっ」
「早く!」
 言葉が強いものになりました。それでもいつもの強さではありません。無理をして強くさせている、そんな感じでした。ハンガリーさんも戸惑いながらオーストリアさんに声をかけます。
「あの、オーストリアさん一体何が」
「何、簡単なことですよ」
 応えて二人に身体を向けてきました。これまで見せたことのないとても寂しげな顔です。その顔で二人に対して言うのです。
「私は一人になってしまったようです」
「一人にって。それじゃあ皆は」
「・・・・・・そういうことです」
 何かが決定的に壊れてしまったのです。オーストリアさんにとってもイタリアにとっても神聖ローマにとっても。もう二度と戻らない何かが壊れてしまったのでした。


第百六十三話   完


                 2008・5・7
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