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第百五十九話 絵描きさん ☆
                 第百五十九話  絵描きさん
「な、なあイタリア」
 ある日神聖ローマはイタリアに声をかけました。その手には絵の道具があります。これは随分と意外な組み合わせでありました。剣ではないのですから。
「んっ、何?」
「その、つまりだな」
 恥ずかしそうです。視線をイタリアから外しているところが結構可愛いです。
「絵を教えて欲しいんだが」
「えっ!?」
 イタリアはそれを聞いてまず驚きでした。
「いいけれど神聖ローマ絵描くの?」
「だから教えて欲しい。御前絵が上手いからな」
「うん、それだったら」
 そういうことでした。イタリアは話を聞いて早速二人で描きはじめました。描くのは兎です。二人並んでキャンバスに描いていきます。けれど神聖ローマは今一つ晴れない顔をしています。
「くそっ、中々上手く書けないな」
「そうかな。上手いよ」
 イタリアから見てもそうです。はじめてにしてはかなりです。けれど彼は浮かない顔なのです。
「何処が悪いの?」
「足だ」
 彼は答えます。
「足がどうもな」
「ああ、そこはね」
 イタリアは神聖ローマのところに来ました。それで自分の筆で描いて教えてあげます。
「こうだよ」
 急に彼に隣に来られて顔を真っ赤にさせた神聖ローマ。慌てて離れて。
「きょ、今日は帰る」
「ええっ、もう!?」
「用事ができた」
 そういうことにしてそそくさと姿を消すのでした。遠い遠い、もうイタリアも覚えていない古いお話です。イタリアも神聖ローマもお互いのことすら忘れてしまっているような。そんなお話なのでした。


第百五十九話   完


                2008・5・5
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