表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界「が」転移してきたので、自宅ダンジョンに引きこもる  作者: さいとうさ
第四章 なんということでしょう迷宮都市
45/60

外十話 日本の魔窟

2016年11月24日正午。


更新しなければならないと思った。


予約投稿してるんですが、異世界は転移してきてますか?

──東京、新宿駅



 現在、新宿駅はダンジョン化しているため、一部が通行禁止となっている。

 最低限の交通は問題ないのだが、通れない通路等があるため、混雑さ、不便さが増しているのが現状である。


 そしてそんな新宿駅の、通行禁止の通路に、とある四人の姿があった。


「ダンジョン攻略……ここまで大規模なダンジョンを、こんなに少人数で挑むなんてな」


 羽根刑事。いち早く100レベルへと到達した猛者であり、警視庁でも期待の若手である。能力(アビリティ)は「成長促進」となっている。


「少数精鋭というものです。……案内、罠の解除などは私が担当しますが、戦闘に関しては頭数に入れないでおいてください。戦闘以外なら、相応の仕事は果たします」


 アリア。冒険者ギルドの副ギルドマスターであると同時に、ことダンジョン捜索に関しては右に出る者は居ない実力者だ。

 戦闘に期待するなというのは、彼女が戦闘できないという事ではない。あくまで戦闘要員の二人と比べると、力の差があると言うだけである。魔法の使い手でもあった。


「あんたの命は必ず守るよう、ギルドマスターから言われている。……俺は警視庁側の人間なのだがな……」


 向井 明石。ギルドマスターの魔法を用いた銃の実験台に抜擢された、銃の名手である。遠距離射撃も出来るが、二丁拳銃を用いた中距離戦闘をより得意とする。

 何故かキセルギルドマスターからアリアを頼まれた男である。


「それを言うんだったらー、私なんて、警視庁でもギルドでもないのにー、何でここにいるんですかねー」


 糸目 明日香。一介の新聞記者であったが、能力(アビリティ)「マップ」のダンジョンにおける有用性を買われ、ダンジョン攻略に抜擢された。動きは軽いが、戦闘能力はあまり無い。

 ちなみに、主人公糸目の妹でもある。


「そりゃ能力(アビリティ)のせいだろ。やっぱ能力は汚くても有効活用したいものだと、おまえが言ってただろうに。まあ、俺がいつも通りお前を守るさ」


 愚痴を言う明日香を、羽根は窘める。

 ちらりと羽根を見ると、明日香はため息をついて言った。


「バカに守られるとか、不安しかないですねー」

「……まあ、多少不安を感じていた方が、危険を冒さなくてすむ」

「なんかー、馬鹿じゃ無くなってもー、堅さは相変わらずですよねー」


 羽根は何度か明日香と組み、依頼などに当たっていた。

 索敵の明日香、万能火力の羽根ならば、大抵のことは対処できたためである。

 そして、組む度にカルチャーショックに似たものを受けた羽根は、現在はその価値観がだいぶ柔らかいものとなっていた。

 もうかつての、馬鹿のように正義を求める彼は居ない。より冷静に物事に対処できるようになっていた。

 しかし、持ち前の性格の堅さだけは直らなかったのである。


「……む?」


 向井が声を上げる。

 そこには、異様に曲がりくねった通路があった。


「確かに、空間がねじ曲がっているようだな」

「これがーダンジョンってことですかー?」


 羽根のつぶやきに、明日香が追従する。

 しかしアリアは首を振って否定した。


「これはまだ、ダンジョンの外側にすぎません。ダンジョンの空間のねじ曲がりが、少しだけ露呈しているだけなのです」


 そう言いながら、アリアはねじ曲がった通路を進んでいく。


「曲がっているように見えますが、まっすぐ歩くことで抜けられます。このダンジョンでは、視覚を信用してはいけません」


「う、本当だ、慣れないな」


 羽根はヨタヨタと苦戦する。

 その間に、向井と明日香はスタスタと先に行ってしまった。


「ちょ、おい待て、何でそんなにあっさり歩けるんだ?」

「『マップ』では正しく表示されるので」

「うわ、ズルい!」


 羽根は明日香に、文句を言うと、次は向井に聞いた。


「じゃあ向井は? どうやって歩いているんだ?」

「……なんとなく、としか言いようがありません」

「なんとなくって……」


 呆れながら羽根はなんとかして通路を抜ける。


 一同はそのまま通路を進み、壁にある何かに注目した。


「これは……電車の扉、か?」

「銀の車体に赤のライン……丸の内線ですかねー」


 壁にはめ込まれたように、丸の内線のような扉があった。

 扉のガラス窓の先は、グネグネとねじ曲がっていてよく見えない。


「ここが現在発見されている、このダンジョンの入り口です」

「これが、か。しかし、どうやって入るんだ」


 羽根の疑問の声は当然である。

 両扉は、固く閉まっているのだ。


「待っていれば、勝手にあきます」

「は?」


 羽根は聞き返そうとするが、それは電車のアナウンスによってかき消された。


『まもなく、電車が参ります。黄色い線の内側まで、お下がりください』


 プルルル、プルルル、と辺りに鳴り響いた。


「えー………」

「おいおいまさか……」


 羽根と明日香は、呆れたように扉を見た。


 プシッと、ガスの音をたてながら、丸の内線の扉が開く。


『──新宿ー……新宿ー……ご乗車、有り難うございます。……』


「では、入りましょう。この扉はすぐに閉まってしまいます」


 アリアの忠告通り、電車が発車するアナウンスが鳴る。 


『ドアが閉まります。駆け込み乗車は、お止め下さい』

「あ、やばいやばい本当に閉まる。早く乗るぞ」

「はい」「はいー」


 三人はアリアに続いて、急いで扉の中に飛び込んだ。


 そして、目の前に広がる光景に、息をのむ。


「な、これは……」

「うわー……」

「すごいな。これは」


 口々に感嘆の言葉を漏らす。


 天井も壁もない、広大な空間が広がっていた。

 所々で煌めく星空のようになっていて、まるで宇宙の中に立っているような錯覚に陥る。

 そしてその広大な空間を、重力など知ったことかと言わんばかりに、縦横無尽に電車の線路が走っている。その所々では、あらゆる種類の電車が走っていた。

 しかもその電車は、一両しかなかったり、あるいは終わりが見えないほど長かったりと、様々である。

 線路に沿うように、これまた上向きも下向きも関係なくホームがあり、それに続く階段があり、通路があり、入り組んでいる。

 非常に混沌とした世界であった。

 彼ら四人が立っているのは、そのホームの一つであった。


「カオスそのものだな……」

「あんな横向きの階段なんて、どうやって登ればいいんだ?」

「このダンジョンでは、場所によって重力の向きが変わってきます」


 アリアの告げた言葉に、羽根は頭を抱えた。

 自分が探索するだけでは、確実に迷うと断言できた。

 明日香を無理やりにでも連れてくるのは正解だったと、数日前の自分を誉めたい気分である。


「なんというかー、ポ○モンのプ○チナの『やぶれたせかい』ぽいですよねー」


 懐かしすぎる例えである。

 そして分かりやすいが、あまりに俗っぽい例えであった。

 幻想的な世界が、一気に俗っぽくなる程である。

 しかし、メンバーは羽根(堅物)、向井(無口)、アリア(異世界人)であるため、そのネタを理解できる人間は居なかった。


 何となく寂しくなった明日香は、高木警部がここにいてくれればいいのに、と少しだけ思ったのである。


「明日香、マップは使えそうか?」

「……どうやら大丈夫ですよー。二次元じゃないのはちょっとばかり難しいですがー、何とかなります。でも何時も以上に集中するのでー、羽根はちゃんと私を守って下さいね」

「言われずとも、だ」


 何だかんだ言って、数ヶ月互いの背中を預け合った仲である。確固たる信頼関係というものができつつあった。


『まもなく、電車が、参ります。黄色い線の内側まで、お下がり下さい』


「……気をつけて下さい。モンスターハウスです」

「何?」


 プルルル、プルルル、という警告音とともに、ピンク色と紫色のラインの電車が、ホームに滑り込んでくる。


『新宿ー、新宿ー』


 そして、アナウンスとともに全ての扉が開く。


『お降りのお客様は、ホームの敵を殺して下さい』


 それぞれの扉から、ポリゴンでできたようなモンスターが溢れるようにわき出てくる。


「おいおい、モンスターハウスってこういう事かよ。他のダンジョンとはまるっきり違うな」

「開幕モンスターハウスってー、どんだけ鬼畜仕様ー」

「このダンジョンならまだまだ緩い方ですよ」

「とりあえず、撃ち抜けば良いのだろう?」

「戦闘は任せましたよー」

「任せろっ」


 明日香以外の三人はすぐさま戦闘態勢に入り、モンスターの殲滅を開始した。


 羽根はそのステータスに物を言わせ、所持していた大剣を振るう。それだけで、モンスター達はバラバラに砕けていく。

 この大剣は、以前別のダンジョンの宝箱から出てきたものである。無骨でやたら重くはあるが、切れ味と威力は申し分無いものであった。

 この他にも、羽根はダンジョンの宝箱から出てきた槍を所有している。


 アリアは広範囲殲滅魔法を使い、魔物を殲滅する。

 キセルに憧れ、恋い焦がれている彼女の魔法の能力は伊達ではない。次々とモンスターを吹っ飛ばしていく。


 向井は二丁拳銃でフルオート射撃をぶっ放す。弾丸は彼の魔力を使用しており、残弾数は魔力が有る限り無限だ。

 彼が使っている拳銃は、キセルが向井専用に作り出した拳銃、「試製ガビエル」だ。

 上下に交換可能な反動軽減装置を搭載。銃身25cm、重量7kg(ワイバーン翼膜により制御可能)、口径14mm、魔力による弾丸のフルオート射撃と、魔導マグナム弾を備えた対魔物専用拳銃である。

 見た目がワニのガビエルに似ていることから、この名前がついた。


 三人の著しい無双により、溢れかえっていたポリゴンのモンスターは、全てが跡形もなく消え去っていた。

 マップと見える限りの光景を合わせて情報を整理していた明日香は、戦闘が終わったのを見て立ち上がる。


「おう、明日香。おわったぞ」

「もっと早く片づけて下さいよー、羽根ー」

「照らし合わせの結果はどうでしたか、糸目様」

「大体把握しましたよー。ではガンガン進みましょう」

「ふむ。この銃は素晴らしいな。パーフェクトだキセル」

「あくまで今回は、完全な攻略ではなく、ある程度の階層までの攻略です。留意しておくようお願いします」


 四人は口々に良いながら、ダンジョン攻略を進めていった。

追記


どうやら転移してないっぽい……残念!

 

めっちゃ雪降ってるし寒いし何なんですかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ