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外八話 ワイバーン討伐作戦

皆さん、お気づきだろうか……

この章のメインが空竜であったことを……


……ギャアアアアアアアア(悲鳴)……



よくある、挿し絵付きの話には※ってやつにしましたよ。


「おりゃーー、願うは焔 王を殺す 敵よ爆ぜよ『火爆弾(ファイボム)』!!」


リオが詠唱省略で放った炎弾が、ワイバーンに触れた瞬間に次々と爆発していく。


「おいリオ!あんまり前出んな!暴れすぎだ!」

「大丈夫ですよ!ワイバーン相手に引けは取りませんて。『火弾(ファイアーボール)』ていうか、道中フラストレーションたまりすぎなんですよ!イライラ解消!」

「はあ、八つ当たりすんなよ。」


ガウディがリオにため息をつきながら、噛もうとしてきたワイバーンの頭蓋を斧を振るってかち割る。


「全く、頭は良いのに精神は子供なんだから。」


愚痴りながらマリーが放った矢は、それぞれがまるで生きているように曲がり、正確にワイバーンの脳天を貫く。


「ワイバーン如きが私の風の精霊の矢を防げると思って?」

「おいこらマリー。お前も調子に乗ってんだろ。」

「う……」


そして『白龍の尾』最後の一人、キリは寡黙に淡々とワイバーンの首をナイフで掻っ切っていく。


「キリも前出すぎだ。」

「………ひさびさの仕事、なので。」


四人があーだこーだ言っている間にも、彼らは討伐の手を緩めない。


((((もうあの四人だけで良いんじゃないだろうか……))))


他のパーティーのメンバーは、一様にそう思っていた。


ワイバーン討伐作戦において、彼らは3グループに分かれていた。

白龍の尾率いる、主力としてワイバーンの群れを直接攻撃するグループ。

斜面の下に控え、運ばれたワイバーンの死体を解体するグループ。

周囲の森で雑魚の露払いをしつつ、もしもワイバーンが取り逃がされた場合に討伐するグループである。

ワイバーンは空を飛ぶので、主力と周辺のグループには弓の射手や魔術師といった、遠距離攻撃が可能な者を集め、前衛がワイバーンの攻撃を防ぐようにしている。

ワイバーンは空を飛ぶため、空に逃げられては魔術師や射手と言えども殲滅は難しくなるが、ワイバーンは気性が荒く、攻撃されれば逃げることなく噛みついてくるのであまり心配はない。

また念のため一人の結界師とリオが共同で上空を結界で囲っているため、逃げる弱いワイバーンも仕留められる寸法である。


ガウディが他の三人に注意しているが、彼らSランクパーティーにとってワイバーンなど、並の冒険者のゴブリンに等しかった。

それゆえ三人が調子に乗るのも仕方なく、ガウディでさえ緊張感があるとは言えなかった。

彼らに獲物を取られている『白龍の尾』以外のパーティーも同じく、緊迫した気持ちにはなれなかった。


かといって仕事をしくじるようなことはせず、着実に狩っていく。

空中を右往左往していた最後のワイバーンをマリーが一矢で仕留め、すべてのワイバーンを殲滅した。

結果、約半数のワイバーンは『白龍の尾』に討伐された。






ワイバーンの群れを確認してから、今日の作戦にいたるまで三日かけた。

この間彼らは群れを出入りするワイバーンを観察し、およその群れの全体像をつかんでいた。

その予想では、今日ここで殲滅したワイバーンの他に多くとも四、五匹居るとあり、彼らはここで待ち伏せし、ここに来たワイバーンを狩る予定であった。


そのために野営地をより斜面の近くに移す作業をしている。


「ねえ、結局あの穴はなんなのよ?」


マリーが指差した先、斜面の下方に、ポッカリ開いた穴があった。


「ああ、そうだったな。ここはもともと廃鉱山かなんかだったらしいから、その名残かもしれないし、ワイバーンの巣穴かもしれない。ワイバーンはなるべく上に巣穴を作ろうとするから、群の下に巣穴があるとは考えられんのだが。」

「巣穴だとしたらどうするの?」

「ワイバーンの巣穴には糞尿が溜まっていて、人間にとっての毒素が充満している事がある。中にはいるのは危険だ。ワイバーンの巣穴は比較的浅く、一本道だから、火魔法で蒸し焼きにして、中にいるワイバーンを殲滅するのがいい。火をたくと糞尿がいい燃料になって、ローリスクで燃やし尽くせる。……万が一のことも考えて燃やしといた方がいいか。リオ!」


ガウディは少しばかり顎に手を当てて考えた後、野営の準備をしていたリオを呼んだ。


「なんですか?リーダー。」

「あの穴の中燃やせるか?」

「大丈夫ですよ!まだ魔力も残ってますし。」


結界をつくり、中級火魔法を詠唱省略で連発しておいて、未だに魔力が底をつかないとは恐ろしいものであった。

盗み聞きしていた他のパーティーのメンバーは驚愕し、同時に「これがS級か」と納得していた。


リオ、ガウディ、マリーの三人は礫だらけの斜面を下り、穴を覗き込んだ。


(ワイバーンの巣穴にしては少し大きいか……?まさか……いや、群れも比較的大きいものだったから穴も大きかったと考えるのが自然か。)


ガウディはふと浮かんだあり得ない最悪の事態を振り払った。


「じゃあ、いっくよー」


陽気な声を上げながら、リオは愛用の魔法杖を掲げ、詠唱を始めた。


「我が求めるは焔の化身 ()は万物を焼き尽くし 大陸を焦土と化す 力は蟲を消し 世を熱気に包まんと 我が焔よ 敵を焼き 赤道を開け『焔の参道(レッドカーペット)』」


リオの眼前で炎が地面に燃え広がり、穴の中に炎の道を作っていく。

これはリオが広範囲殲滅用上級火属性魔法『焔の楽園(フレエデン)』を改良した創作魔法(オリジナルマジック)である。

辺り一帯を炎で埋め尽くす『焔の楽園(フレエデン)』の効果範囲を狭め、汎用化したもので、パーティーを巻き込むという短所を無くし、魔力を節約した魔法だ。

炎の道は術者の思った通りに動くため、とても使い勝手がいい。

リオの歳で創作魔法(オリジナルマジック)を開発するというのはあまりに異常なことである。

もともと創作魔法(オリジナルマジック)は、魔法の理念を追求した老獪の魔術師が、何十年という研究の果てにたどり着く偉業である。

ここにリオの魔術師としての天才性が見受けられた。


炎の道はほら穴を照らしながら焼きすすみ、中を身を焦がす程の熱気で埋め尽くした。


「うおぉ、すげえ。」

「上級魔法……初めて見た……」

「さすがS級ってことか……」

「一人でできるもんなのか……?」

「リオたんはあはあ」


周りのギャラリーがざわめく。

一人紳士と変態の狭間のやばい奴がいた気がするがスルー。


「おいおいここまでしなくて大丈夫だぞ?魔力大丈夫か?」

「念には念をってね。魔力はまだ大丈夫ですよ。しっかり詠唱したんで、『火爆弾(ファイボム)』三発分程度の魔力しか消費してませんから。」


ガウディが心配そうにリオに尋ねるが、本人はケロッとした様子だ。


「ま、本人が大丈夫っていうなら、気にしなくてもいいでしょう?リーダー」

「ああ。」


そのとき、可燃性のガスが溜まっていたのか、洞穴のどこかで爆ぜる音が聞こえた。

それが穴の壁にヒビを入れたらしく、熱膨張により今にも壊れそうになっていた洞穴は、あっさりと崩壊した。

ガラガラと音を立てながら、最終的に洞穴は岩と礫で完全に埋められた。


「あー、まあここにワイバーンが残っていても、もうとどめだな。」

「流石に生きてはいれないわよ。」


ガウディ達三人は、もう斜面の一部となり果てたそれを、憐憫の目で見つめた。






   





『──我が住処を壊したのは貴様等か──』


腹の底から震えるような重低音の威圧声が聞こえた後 洞穴を塞いでいたはずの岩礫が弾けた。

否、爆ぜた。


「な、なんだ!?」


ガウディの問に答える物はなく、連続的に揺らす振動が斜面を崩し、所狭しと言わんばかりの巨大な顔が覗いた。

全員が足を動かすのも忘れ、声を出せないでいる間、その巨体は茶色の山から徐々に姿を現す。


眼は爛々と光り、鋭く大きな牙は人間の頭ほどもある。

長い首の後ろには骨の凸が並び、隆々の四つ足のある、ずんぐりとした胴体には、視界に収まらないほどに大きな翼が四枚生えていた。

長い尾は、振るわれるだけで空気がうなる。

咆哮は空気を割り、羽ばたきは森に広場を作り出す。


竜。それも伝説上の、伝聞にしかない


「空竜……」


土埃が晴れたとき、空を統べる竜の王がそこにいた。


『この我の住処を壊したのは貴様等かと聴いている。


答えろ!!』


「う……」

「逃げろ!!」


ガウディは瞬時に判断し、撤退を命じた。


多くの者は目の前の災に足をすくませ、ガウディの一喝で突き動かされる。

だが、A級やB級の冒険者の中には、武器を眼前の巨体に向け、立ち向かわんとする者も居た。


「お前ら!何やってんだ!」

「闘うんだよ!時間稼ぎぐらいやってやる!お前らだって竜殺し(ドラゴンスレイヤー)だろ!?それでも逃げるのか臆病者め!」

「この馬鹿やろう!力量差もわからねえ莫迦が!俺たちが倒したのはあくまで中級竜だ!準備も無しにこいつ相手じゃ時間稼ぎにもならん!」

「中級竜って……じゃあこいつは一体…」

「竜王だ。上級竜よりも上の、世界に四体しかいない竜の王の一体だ。勝てねえのがわかったらさっさと逃げるぞ!」

「わ、わかった。」


『愚者どもを逃がすと思うか』


「後ろ振り返らず走れ!早く!」


その場にいた全員が駆け出す。

空竜は四枚の羽を羽ばたかせ、突風を巻き起こす。

何人かはその風に巻き込まれ、木の幹に叩きつけられては血を吐いた。


「空飛んでる奴相手に逃げられますか!?」

「あっちの世界じゃ無理だ。だがこっちには車がある。散りながら全速力で逃げれば可能性はある。まずは誰か一人でもギルドにたどり着け!情報を回せ!天災だ!」



『白龍の尾』は自動車に乗り込み、制限速度超過で公道を走りだした。



異世界ものあるある


竜王は人化する。


しかしこの小説がテンプレを進むとは限らない。

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