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第二十話 突撃!隣の秘密部屋

前回のあらすじ


10ヶ月たっていろいろ充実しました。


ダンジョンマスターの朝は早……





くも遅くもない。

朝九時起床だ。

ビジネスマンや学生にとっては羨ましいほど遅く、ニートにしては早起きだ。

働く必要は全くないから早朝に起きる必要はなく、かといって昼夜逆転現象を起こすにも意味がないからこの時間に起きる。


コアルームに繋がれた寝室を出ると、まるで俺が起きる時間を知っていたかのように朝食が用意されていた。

コアが操るロボゴーレムが調理したものだ。今や多くの作物が一株ずつ畑にある。

穀物以外をダンジョンの宝箱に入れることは考えていないので、俺が食べる分が栽培できれば充分なのだ。

調理したと思われるロボゴーレムから合成音声が聞こえてきた。


ご主人様(マスター)、おはようございます。』

「ああ、おはよう、コア。久しぶりだな。」

『いえ、就寝前も会ったはずですが。』

「いやなんでもない。」


いかんいかん。危うく読者の立場に立って発言してしまっメメタァ!


『それはそうと、ご主人様(マスター)。本日の朝食は、フライドエッグのキャビッヂ添えとミスォスープ、ジャポニカライスの盛り合わせ、シーウィードです。フライドエッグにはソイソースをつけてお召し上がりください。』

「うん。目玉焼きに千切りキャベツ、味噌汁と白米に海苔に醤油ね。めっちゃ和食なのになんで英語で言うのかね。」

『気分です。』


ロボゴーレムは全てコアの管轄下にあり、全てがコアであると言っていい。

コアの本体であるパソコン(いまやスパコン)は、コアルームの一画で厳重に守られている。コアが壊れたら終わりだからな。


とりあえず朝食を食べながら、コアに今朝のニュースを聞く。

ニュース番組はたまに余興として見るのだが、ぶっちゃけコアに要約してもらった方が早いし楽なのだ。


『そうですね。今朝の一番のニュースは、新宿駅がダンジョン化した事でしょうか。』

「ブフォッ!?」


衝撃のニュースに飲んでいた麦茶を吹き出してしまった。


「はあ?新宿が?」

『ええ。かなり大規模なダンジョンになってしまっているようです。』


うわあ、もともと魔窟とか迷宮とか言われていた新宿駅がダンジョン化したのか。そういえば新宿ダ◯ジョンとかいうゲームあったなぁ。最近は渋谷ダ◯ジョンもあるんだっけ。


「しかし交通網は大丈夫なのか?新宿駅が使用不可になったら、線路に魔物が侵入したりして地方の路線でダイヤが乱れまくって廃れる一方の電車企業にとどめじゃないか?」

『いえ、通行は何とか出来るみたいですよ。所々空間がねじれてダンジョンになっているみたいで。』

「あれがさらに複雑になるとかヤバすぎんだろ。」


通行の邪魔をしないってことは、知性が高い魔物か人間がダンジョンマスターになっている可能性があるな。

もう各地でダンジョンが発見されている。

たまに富士の樹海とか、阿蘇山とかがダンジョン化したってニュースが流れる。冒険者ギルドはその調査のため大忙しだ。

これでここみたいなモブダンジョンの調査が遅れるわけだ。ラッキー。


朝食を食べ終わると、顔を洗ってから朝日を浴びに散歩に行く。

もちろん俺が外に行く訳がない。疑似太陽が輝く、飼育ルームだ。

ここには何匹かのレッドボアが放牧されており、みずみずしい草原の草をおいしそうにはんでいる。

アンデッドダンジョンのくせにかなり爽やかな空間を演出している。

俺はここで散歩と称した餌付けをレッドボアに行い、軽く体操とストレッチを行ってから移動する。


移動した先は、これまたコアルームに隣接して作ったトレーニングルーム。

ここで俺は毎日コアのロボゴーレム相手に戦闘訓練を行っている。


ご主人様(マスター)、集中が殺がれています。』

「あ、すまん。考え事をしていた。」


そう言いつつも、ロボゴーレムの斬撃をロングソードで受け流す。


ご主人様(マスター)はやはり強くなっていますね。考え事しながらこの動きを相手できるとは。ダンジョン保護もかけているというのに。』

「まだ1対1だからな。一対多だと余裕はない。」


コアは訓練に関しては結構スパルタで、気を反らしたりすると喝をいれてくれる。

戦っている間も俺の動きを解析しているから、欠点も集中度もわかってしまうらしい。


「さて、とりあえず日課は終わったが暇だな。」

『それならばルドルフの所へ行ったらどうでしょう。ちょうど連絡が入りましたし。』

「そうか。じゃあ行ってくるか。」







今ルドルフは、一番近くの町の一軒家に住んでいる。

このダンジョンとは地下でつながっており、ある程度自由に行き来できる。

俺はレンガでできた谷のような廊下を進む。

ダンジョンの支配領域は町に届くほど広くはないので、このトンネル(?)を掘るためにここだけ支配領域を延ばしたのだ。


進むって言っても、俺は歩いてはいない。それどころか座っている。

動いているのは足場だ。詳しく言えば、コアが動かしている可動式のダンジョン部屋だ。

足場は深い谷の上を浮いており、そこそこのスピードで進んでいる。

隠し通路がバレても、誰もダンジョンにたどり着けないようにするためだ。この動く足場がなければ、底も見えないような谷を進めない。

しかも迂闊に壁にさわるとトラップが作動したりする鬼畜設定だ。まあこの通路はコアルームに直接繋がっているからしょうがない。

俺も自分の身が可愛いのだ。


そうこう言っているうちにたどり着いた。

俺は足場から対岸に降り立つ。

そこにはひとりのスケルトンがいる。

実はこいつ、見た目以上のレベルであり、種族名もハイスケルトンである。

一応この谷は一つの部屋と認識されており、ボスルームに設定されている。

このハイスケルトンはここのボスモンスターなのだ。名前は衛兵。


衛兵はここの門番兼鍵役を命じられている。


「んじゃ開けてくれ。」

「カタッ」


衛兵が変哲もない壁に手をふれると、ガコッという音ともに一部の壁が消えた。


俺がその中に入ると、ルドルフが椅子に座っていた。


「よう!久し振りだな。」

「ああ。毎度助かる。」


この部屋はルドルフの家の隠し地下室だ。

この部屋に地上のルドルフ宅から入るためには、隠し扉から入る必要がある。

そしてここはルドルフの趣味と性癖が詰まったやばい部屋になっている。

ほとんどの人は、あの隠し扉はこの部屋を隠すための物だと思うだろう。そしてその先の通路に気づかない。

どっかのノートで人殺す天才の理論だ。


まあさっき衛兵が触れた壁は横向きの落とし穴になっていて、こっちからじゃ何をしても開かない仕様なんだがな。

唯一の方法は物理的にぶち壊すことだが、俺並みの高ステータスでないとぶちこわせないだろう。

落とし穴に閉じ込めた奴を出さない為なのか、逆からはこわしづらいんだよなこの落とし穴。


「で、今日持ってきたもんはなんだ?」

「ああ、フルーツトマトのタネを入手したんでな。畑のラインナップに追加してくれ。」

「おお、また食卓が彩るな。」

「俺もたまに食いに行くからよろしく頼むぜ?」

「まあ調理するのはコアなんだが。」


ちなみにルドルフからダンジョンに入るためには、一度コアに連絡してから衛兵に開けてもらわなければならない。

少々面倒だがしょうがない。


また、万が一にも俺が地上でルドルフと関わっているのを見られるのは不味いので、このヤバい隠し部屋で取引を行っているのだ。決してこの部屋にいたいからいるわけではない。


「あとは、お前さんお待ちかねのこれだ!」


そう言ってルドルフは、自分の鞄から、一つの透明な水晶玉のような物と、加工された木の棒を取り出した。


「?………ま、まさかこれは…」

「そうだ。属性判定の宝玉と、魔法杖だ。」





き、キターーーー!!!


「魔法杖だけでも難しいってのに、よく属性判定の宝玉まで手に入れたな!」


魔法杖は現在、国の免許をとらないと入手不可能になっている。宝玉はギルド本部や一部の元上流階級しか持っていないようなレアものだ。


「どっちも裏のルートでな。あ、宝玉はレンタルって形だから壊すなよ。返却期限は三日だ。」

「ああ、それは大丈夫だ。」


そう言って俺は、属性判定の宝玉を複製魔法(コピー)で複製する。

お、結構MP使うな。


「うっわズリィ……」

「そう言うなよ。杖の方もお前が希望するなら複製(コピー)しようか?」

「いや、俺には魔法の才能がないから猫に小判だ。」

「お前……猫とか……はまってるなそのことわざ」

「うるせえな!!」

「まあいい、今回はマジでお手柄だ。酒を買うための軍資金をくれてやろう。」

「おお!やったぜ。今度は何年ものにしようかね……」


悩むルドルフの前にいくらかの金と魔石を置いてやる。

衛兵にお願いして隠し部屋から出て、ウキウキとした気分でコアルームに戻った。


さあ魔法の練習をしようか!



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