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外六話 第三章のプロローグ的なアレ

そして時系列はプロローグに巡り戻る。


今回短いですがご容赦

十数台の自動車が、高速道路から下りてきた。

大半は緑色の無骨なワゴン車であった。これはギルドがCランク以上の冒険者に貸し出している、冒険者ギルドのレンタルカーである。

そして数台の、荷台に物資を載せた軽トラ、個人所有の自動車と続く。

公道から山道に移動した自動車は、目的の地点につくと、脇によって停止した。

その中で、最後列を走っていた白の自動車から、四人組が降りる。


「かー!やっぱドライブってのは楽しいな!わざわざ買って良かったぜ!」

「この自動車のためにここ数ヶ月の稼ぎをつぎ込みましたけどね。全く、低レベルモンスターばかりで稼ぎが悪いって言うのに。」

「そう言いながらリオちゃん、高速道路走ってるとき、目をキラキラさせて風景眺めてたじゃない。」

「な!あれはこの辺が珍しかっただけで!」

「そう言うところは年相応だと思うわよ?」

「うーー!」


黒色のローブに身を包んだ年端もいかぬ少女が、色気を漂わせる美女エルフに噛みつく。

そしてその様子をガッハッハと豪快に笑いながら眺める白髪のマッチョ。

一言もしゃべらず、目を細めてあきれた様子で佇む、ネコミミで軽装の青年。

彼らこそが、今回のワイバーン討伐依頼に駆り出された、世界によって数少ないS級冒険者パーティー、「白龍の尾」の四人であった。

バトルアックスを担いだ白髪マッチョ、リーダーのガウディを筆頭に、弓の達人のエルフ、マリー。回復、後衛を担う天才魔法使いの少女、リオ。寡黙な黒髪ネコミミ青年、斥候役を務めるキリ。

しばしばパーティー構成のお手本とされ、三つのS級パーティーのうち最も知名度が高く、冒険者ギルドの依頼を快く受けてくれるため冒険者ギルドの動かせる駒で最強のパーティー、「白龍の尾」。

イメージカラーは名前の通り白。かつて中位竜の白竜を討伐したドラゴンスレイヤーである。


緑のワゴン車からぞろぞろと降りてくるのは、今回の依頼に参加しているCランク以上の冒険者パーティー達だ。

トラックに積み込まれた物資を、各パーティに分ける作業をしている。

転移してまだ10ヶ月。日本人も多数冒険者に登録しているが、たった数ヶ月でCランクにたどり着いた者は少なく、今回のチーム構成もほとんどが異世界人のパーティだった。

しかし3パーティのみ、機動隊員の日本人パーティが参加している。

訓練項目に魔物との戦闘が追加され、希望者は冒険者となって訓練する事が許されている。

彼らは特別措置としてEランクから始めるところをDランクからスタートしており、もともとの経験もあって2パーティはCランクに、1パーティはBランクに昇格していた。


着々と準備が進み、一通り終えると、形ばかりの隊列を組む。

今回のリーダーである、「白龍の尾」ガウディが作戦を伝え、各パーティに指示を出す。

周辺の詳細な地図があるので、地形の探索などはすっ飛ばして即作戦に移れるのだ。

ワイバーンは単体でBランク魔物と設定されている。これはつまり、Bランクパーティなら討伐可能だと言うことを示している。

目撃されたワイバーンは一匹であり、群だとしても今回のチーム編成は過剰だと言える。

今回は単純な討伐ではなく、その前にあるべき調査も同時に兼ね備えているため特殊な依頼ではあるが、その上Sランクパーティまで参加するとなると、過剰戦力だと言うほかない。


しばらく慎重に森を捜索するが、見つかったのはどれもゴブリンやオークといった、D、Eランクの魔物ばかりである。

危険な魔物を調査する場合、その地域にはCランク程度のモンスターが生息している場合が多く、調査中も警戒を絶やすことはないのだが、今回ばかりはどうしてと気がゆるむ。


「あー、もうつまんない!」


飽きたようにリオが不満を言う。


「そもそも私たちが参加する必要あったんですかね?」

「ま、今回はギルドの面目立てる意味合いもあるからな。ギルド的には万が一にも失敗してほしくないのさ。」


リオの疑問にガウディが答える。


「まあ調査と討伐を兼ねた依頼だからねぇ。ちょっと強行過ぎないかとも思うけど。」

「やっぱ元冒険者の立てこもりが原因だろうな。名誉挽回的な。しかも立てこもりの理由が、導入された適性試験に落とされた事への反抗だからな。ギルドにも責任の一端があるわけで、ある程度の功績をもって上塗りしたいんだろ。」

「ふーん?あのギルドマスターがそんな消極的な姿勢をねぇ」


マリの質問に、ガウディはため息をついた。


「今ギルドは代理が管理しているのさ。今回の依頼にギルドマスターは関与してねえ。」

「代理ねぇ。もしかして副ギルドマスターのあのお嬢さん?」

「だろうな。堅いのに変なところで思い切りがいい感じ。仕事は出来るんだが大物になる器じゃねえな。」

「でも、ギルドマスターは何やってるのかしら。あなた昔馴染みでしょう?なにか知らないの?」

「同じエルフなんだし、お前さんの方が昔から知ってるだろうが。」

「でも交流自体はあなたの方が多いでしょう?」

「そうだな。ギルドマスターは今、『銃』とかいう武器を研究しているらしい。」


マリは聞いたことない単語に首を傾げる。


「銃ってなに?」

「いや、俺も詳しくは知らねえが、こう、筒があってだな。そこから玉がでるんだと。」


身振り手振りの要領を得ない説明に、マリは詳細を知るのを諦めた。


「そんなもの研究してどうなるのかしら。聞く限り遠距離武器っぽいけど。弓矢だってあるのに。」

「いや、どうやら弓矢よりも強力らしいぞ。出回ったら弓矢の出番が無くなるって言われてる。」

「へえ。」

「しかも魔法を付加して改良できるとか何とか。『ぐれねえど』が何とかとか、反動を何とかとか、『状態保存魔法』でうんたらとか」

「うん。ぜんぜんわからないわ。」

「ちょっと!二人で分からない話しないでくださいよ!」


随分無視されていたリオがついに癇癪を起こすと同時に、周辺を先に調査していたキリが戻ってきた。


「おう。キリ。ご苦労さん。どうだった?」

「リーダー。この先に、ワイバーンの群れを発見した……。」


キリが小さい声で報告すると、飽き飽きしていたリオが目を輝かせた。






「おお。本当にいやがる。」


「白龍の尾」は、支給された無線で各パーティに連絡を取り、チームを代表して先行捜索に出ていた。

ガウディ達の前には、岩肌が露出した、土砂崩れ跡と見られる山の斜面に、十数匹のワイバーンが住み着いていた。


「ちょうど1パーティ一体ってところですかね。」

「あら?あんな所に洞窟なんてあったかしら。」


マリが疑問に思ったように、地図にはない洞窟のような穴が、群の中心の斜面に空いていた。


「地図にないって事は、大方ワイバーンの巣穴だろう。とりあえず、他に群がいないことを確認したら、討伐に移るぞ。」


ガウディの言葉に三人は頷く。

無音のデジカメでフラッシュをたかずに写真を撮ると、彼等はいったん本拠地へと戻った。






彼らは遠目で見ていたから気づかなかった。

あるいは斜面にあったからわかりにくかったというのもある。

その洞穴は、一般的なワイバーンの巣穴よりも大きかった。

そして、その奥にワイバーンたちを従える竜種、空竜が潜んでいたことが、この後一騒動を起こすこととなる。


何かプロローグって書くだけで短くても許される気がする不思議。(しかし許されない。)



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