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閑話 とある勇者のプロローグ

モブがめっちゃ主人公。

注意!こいつはモブキャラです。今後の登場予定はありますが。


あとタイトルが某ラノベ風になったのは故意ではありません。

僕は17才の一般人、芦屋 勇人だ。

まあ、平凡中の平凡かというと、そうでもない。

背丈とか顔とか運動神経とか成績とかは、良くて中の上っていうザ・平凡なんだけど、状況が平凡とは言い難い。

去年、突然の事故で父さんをなくし、近い親戚が居なかったために母が働かなくてはいけなくなったんだ。

ただ、それまで専業主婦で働きなれていなかった彼女がまともに稼げるわけもなく、妹を学校に行かせるために僕は高校を中退しなくてはならなくなった。

以降は僕もアルバイトとかで働いたんだけど、それでも生活は尚厳しくなっていった。


そして四ヶ月前、異世界転移、通称1124事件が起こった。

この際、母さんと妹は姿を消してしまった。きっと異世界に転移したんだろう。

もちろん二人を心配したんだけど、だんだんそんな場合じゃ無くなってきた。僕の生活の問題だ。

こんな騒動の中、高校中退の僕がまともな仕事先を見つけられるわけもなく、もともとのアルバイト先も人手不足と混乱でつぶれてしまった。

母が僅かに家に残してくれた貯金とボランティアの炊き出しで、最初の三ヶ月なんとか食いつないだんだけど、一月前に八方塞がりになった。


んで、一月たった今、僕は割と健康体で生きているんだけど、アルバイト先が見つかったかというとそうでもない。

実は、僕は冒険者になったんだ。

1ヶ月前ようやく冒険者ギルドが東京に出来て、日本人の冒険者登録が可能になった。そんで、速攻登録したわけだ。


なんで平凡な僕が冒険者になったって?

男のロマンってやつさ!

というのは冗談で、実は1124事件の時、僕は能力(アビリティ)というものを手に入れたんだ。

手には入った能力(アビリティ)は「聖剣(エクスカリバー)」。

念じると光を纏った剣が僕の手に現れる。

少し試してみたけど、凄い切れ味だった。しかも聖剣を使っていると何故か体が軽い。武器による能力の補正みたいなものだろうか。

能力(アビリティ)を持っている人はかなり少ないらしい。その中でも戦闘に役立ちそうな能力(アビリティ)をもっている僕は、冒険者になるにおいてアドバンテージがあると思う。

まあそしたら、冒険者になるのが無難じゃないかと。

ラノベみたいに、いきなり無双はできなくても、こつこつやれば人並みに稼げると思ったんだ。


冒険者になるには、冒険者ギルドの講習を受けて、合格してギルドカードを作ってもらわなきゃならない。

まるで免許みたいだ。

ちなみに講習の内容は、採取だったり解体だったり戦闘だったり色々だ。講習は1ヶ月。

結構短期間だけど、まだあまり強い魔物も居ないから大丈夫らしい。



で、僕は今、今日もらったギルドカードをしまって、初めての冒険者の依頼をこなそうと街から出ている。

講習の間の1ヶ月は、給食のような物が出されて、飢えることはなかったけど、これからは僕自身の手で稼がなくてはならない。

でもやっぱりウキウキしちゃうのは許してほしい。

男の子だもの。しょうがない。

受けた依頼は薬草採取だけども。

だっていきなり魔物討伐とか怖すぎる。

確かに講習の中で、実践訓練としてゴブリンと戦ったけど、1対1しか経験したことがないんだ。複数で囲まれたらたぶん死ぬ。


僕は今、念のため鉄の剣を持っている。

聖剣っていうのが、異世界の人からどう見られるのか分からないから、僕の能力(アビリティ)は隠すことにしている。

そう。講習も聖剣(エクスカリバー)なしで受けたし合格したのだ。

そしてカモフラージュのため、鉄のショートソードを持ってきている。

さすがに日本だから、武器屋というものは少ない。というか、まともなのはギルド直轄の一軒しかない。

しかも魔導具や杖なんかは未だに見たことがない。

なんというか、ファンタジー感があまりない気がする。まあもともと日本だからしょうがないってのもあるけどさ。

ちなみに刃物や武器は、街の中では指定の袋に入れなければならない。それを鞄にしまったりしないで、肩に掛けるなど外に出さなければならないという決まりがある。

その袋を見れば、刃物を持っているのは一目瞭然と言うことだ。しかもこの袋、上手くやらないと中身が取り出せないので、通りがかりの人に、抜剣、即斬!みたいな事は出来ない。

治安維持は大切だもんね。まだ規律は試行錯誤の状態みたいだけど。


そういえば、ここ一ヶ月まともに聖剣(エクスカリバー)を使っていなかったな。

使えなくなってたりしないだろうか。怖いな。


聖剣(エクスカリバー)


ああ、良かった。

輝く剣が僕の手に握られてる。

魔物に遭遇したら、躊躇なくこいつで斬ることにしよう。

僕だって命は惜しい。

最初こそ命を奪うことに躊躇したけど、最近は割り切れている。

まあ遭遇しないことがベストなんだけどね。





薬草の採取が終わって、僕は来た道を戻っている。

薬草っていっても、もちろんこの世界の薬草じゃない。

ついでに言うと、草原とかの薬草の群生地に行った訳でもない。

採取場所も、今の帰り道も、普通に家はある。結構たくさん。

薬草も、雑草のように軒下に生えているのだ。絵面が全然ファンタジーじゃない。ゴミ拾いか庭の草刈りみたいだ。

家にはまだ人が住んでたりする。都市を囲む壁の外側だが、森よりも魔物が少ないため普通に暮らしているのだ。

僕が今踏みしめている道も、ちゃんと舗装されている。


冒険者ギルドの本部は東京の中心にあるけど、ぶっちゃけ遠い。

電車使うのももったいないし。

そのため、街の壁の近くに、依頼の受注、完了報告専用の窓口施設があるのだ。

そこで薬草を渡して、報酬を受け取ったらそこで依頼終了だ。

ちなみに報酬は日本円。

ファンタジー成分皆無だよね。


『きゃあああ!』


ぼちぼち歩いていると、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。

声が聞こえたのは森林公園の方だ。

こういう公園は、住宅地よりも魔物が多い。危険だから近づくなと、冒険者ギルドから注意勧告も出ている。

怖いけど、さすがに今の悲鳴を無視できない。

意を決して公園に入った。





いた。

僕と同い年くらいの少女が、ゴブリンに襲われている。

ゴブリンは六匹だ。一人で対処できる物じゃない。

まだ少女は重傷を負ってはいないみたいだけど、尻餅をついていて剣を振り回している。

足を挫いたのだろうか。起きあがろうとはしない。

ゴブリンは剣を警戒しながらも、ジリジリと少女との距離をつめている


僕だけでゴブリンを六匹倒せるか、それはかなり微妙なところだ。

勝算は低い。


それでも僕は、考えるまでもなく、少女とゴブリンの間に飛び出していた。


聖剣(エクスカリバー)!!」


僕の手に光る聖剣が握られる。

その瞬間、ステータス補正により、足がさらに速くなった。

一番近くにいたゴブリンを斬り飛ばす。

大丈夫だ。岩より柔い!

状況が把握できない他のゴブリンを良いことに、さらに別の二匹に斬りかかる。

一匹は首を斬ったけど、もう一匹は足を折っただけだった。

でも行動不能みたいなので、とりあえず放置。

ようやく他の三匹のゴブリンが動き出した。

一匹が僕に向けて棍棒を振り下ろす。

僕はそれを一歩下がってかわす。

すると別の素手のゴブリンが僕に飛びかかってきた。

噛みつくつもりだろうか。

それを避けようとしたところで、背中に庇っていた少女の事を思い出す。

このまま避けたら、ゴブリンは少女に飛びかかる事になる。

僕はゴブリンを聖剣で受けた。

それだけでゴブリンの体が少し斬れて、血が流れる。

しかしゴブリンはあろうことかそのまま剣にしがみついてきた。

ゴブリンは爪で僕の腕をひっかこうとするが、ほとんど痛くない。

大丈夫だ。こいつの攻撃は僕に効かない。

聖剣(エクスカリバー)のステータス補正は結構大きかったみたいだ。

しかし、振り回してもまだ、血を流しながらゴブリンはしがみついてくる。

こいつらには痛覚が無いのだろうか。 

他の二匹が攻撃してきそうなので、カモフラージュに持っていたショートソードをゴブリンに突き刺す。

切れ味も普通で、利き手じゃなかったからか、さっきみたいにスパッとはいかなかった。

生きた肉を突き刺す感覚が、僕の左手に残る。

感覚と異臭に顔しかめながら、一匹のゴブリンが振り上げていた棍棒に聖剣を叩き付ける。

案の定棍棒はゴブリンの手から離れ、数メートル先の地面に着地した。

胴ががら空きのゴブリンに、剣を切り返す。

ラスト一匹となったところで、ゴブリンは慌てて逃げ出した。


ふうーーっ、と息を漏らす。

初めて教官無しの戦いをした。

習った剣術が、ステータス補正された僕の体でもしっくり来ていたのは助かった。

まあ初歩の初歩なんだけど。


とりあえず荒げた息を整えて、後ろを振り向く。


「大丈夫だった?」

「………はっ、はい!たすけていただいて、ありがとうございます!」


少女は顔を赤らめて、元気良く返事をした。

少女の頭には、フサフサとした狐耳がある。

やばいめっちゃかわいい。


動揺してドキドキしているのを隠して、余裕を持った表情で笑いかける。


「とりあえずここは危険だから、早く公園から出よう。」

「うっ、……はい。分かりました。」


少女は残念そうな表情をして、一瞬躊躇してから頷いた。

大切な用事でもあったんだろうか。

あとしょんぼりして折れている狐耳可愛い。

よくみたら尻尾もある。やべえめっちゃモフりたい。

さっきまで枯渇していたファンタジー成分が潤ってきたようだ。


「……立てる?」

「あぅ、……すみません。…肩をかしてくれませんか………?」



これが僕と、後に仲間になるマホロとの出会いだった。




公園は憩いの場ではなくなった。

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