第十一話 テンプレブレイカー
登場人物紹介単発の投稿はさすがにまずかったですかね。
結構批判(?)があったので がんばったら書きおわったので、投稿します。
不快な思いをさせた方は申し訳ありませんでした。
なんでだよ!!
なんで捕まるのがおっさんだけなんだよ!!捕まったネコミミ娘を優しく扱ってヒロイン化するんじゃないのかよ!!
心の中でそう叫びながら、俺は両手を開いて大きなリアクションをする。
詳しく言うなれば、デ◯ノートの夜神ラ◯トが最終回で追いつめられたときに「僕以外に出来たか!?」って振り返ったときの姿勢だ。
『なにやってるんですか……』
コアにあきれた声で咎められた。
まあこのおっさんが落ちていくところは見ていたので、もともと分かっていたことではあるのだが、ここで現実を目の前にして、驚いてしまったというわけだ。
というかあのネコミミ娘が避けられたのが意外だ。
常に警戒心MAXだったからかな?
ま、とりあえず目の前のおっさんに集中だ。
もともとヒロイン化させるつもりもなかったわけだし、目的はこいつで充分果たせる。
コアが『性欲処理は出来ませんね…』とつぶやいていたが、それも元々計画にあったわけではないから。
別に悔しくはない。
前向きに考えれば、おっさんの方がレベルは高かったのだし、DP稼ぎとしてはこちらの方が優秀だ。知識も年相応にありそうだしな。
ちなみに残されたネコミミ娘は、しばらく呆然とした後、必死の形相で逃げ出した。
外で助けを呼ぶつもりなのだろうな。
そんなことをしたところで、外の組織はまだまだ纏まっていないし、討伐隊や調査隊が出されることもないだろう。
数人がパーティーを組んでくる場合も考えられるが、どうやら日本中でダンジョンは見つかっているようだし、相手にされないだろう。
ちなみにダンジョンが日本中で出来ているのは、ツイッターの噂だ。多分本当だろうけど。ここにダンジョンあるしな実際。
目的を果たそう。
とりあえずおっさんと交渉開始だ。
「おし、おっさん。お前今の状況わかってるか?」
「な、な、ひ、人!?誰だあんた!?」
「ん、ああ、ダンジョンマスターだよ。このダンジョンの。」
「だ、だだダンジョンマスター!?」
む、ダンジョンマスターと明かした時からさらに怯えてるな。
まあ今はおいておこう。
「今はそれはいい。それより、早く質問に答えろ。」
「状況……?俺が……罠にはまって……捕まった」
「ああ。そうだ。詳しく言えば、お前は俺の家に不法侵入したから、家主である俺が捕まえた。罪があるのはそっちだぜ?」
「ふほうしんにゅう……?」
ああ、その言葉は異世界にないのか。
というかさっきから別の言語を話しているはずなのに、コミュニケーションがとれてるな。これが翻訳機能か…。
「とりあえずこのままだと、この罠を再利用出来ないから、檻を移動するぞ。」
そう言って俺は腕輪を取り出し、おっさんに放り投げる。
この腕輪はダンジョンのオプションだ。この腕輪をつけると隷属状態になり、俺の命令に逆らえなくなる。
不思議アイテムだな。
異世界には奴隷と言う者が存在するが、その奴隷がつける隷属の首輪と効果は同じらしい。
やっぱり奴隷もいるんだな。そうすると、奴隷も一緒にこの日本に転移したことになる。その辺の制度はどう落ち着くだろうか。
おっさんはようやく腕輪をつけた。
「とりあえず、俺への反逆行為は禁止する。黙ってついてこい。」
そう言って檻のオプションを解除する。
飼育ルームに新しく檻を用意したので、そちらに移すことにする。
「おちついたか?」
20分くらい放置し、落ち着くのをまった。
さっきみたいな混乱状態じゃあ、出来る話も出来ない。
おっさんはココアを飲んでいる。
この家にあったココアパウダーを複製魔法で増やし、お湯に溶かしたものだ。
渡した直後は、見たことがなかったのか目を見開いていたが、今は三分の一くらいには減っている。
結構飲むな。
毒とか警戒して飲まないかとも思った。
おっさんは覚悟を決めたような目をして、俺を見上げて言った。
「くっ……殺せ…!」
いや殺さねーよ?
いらねえよおっさんのくっころは。どこに需要があるんだよ!
「今のところ殺すつもりはないし、殺す理由もない。安心しろ。まあ殺す理由が出来れば別だが。」
すこし威圧感をもって睨んでみる。
まあ俺みたいな華奢な若者に睨まれても、怖くはないだろうが…。
むっ?ちょっとおびえてるか?
おっさんは恐る恐る口を開いた。
「ほ、本当に…ダンジョンマスターなのか……?」
「ん?そうだと言っただろ?他に誰がダンジョン内に檻を出したり引っ込めたり出来るんだよ。」
「いや…、あまりにもちゃんと話すから……」
ああ。そうか、他のダンジョンマスターは、ダンジョンコアとの融合の弊害で、変人か廃人かなのだったな。
「他にダンジョンマスターを見たことがあるのか?」
「一度だけ…。十年以上前の話だが…」
ふーむ。一応迷宮踏覇者なのか。それにしては迂闊だったと思うが。
まあそれなら知識もかなり有るはずだ。他のダンジョンマスターの話も気になるが、今は良いや。
「とりあえず、今お前にやって欲しいことは、知識の提供だ。」
そう言って俺はモバイルコアのスマートフォンを檻の前に置く。
俺はモバイルコアを指差して命令した。
「こいつの質問に、出来る限り詳細に答えろ。」
これであらかた大丈夫だろ。
情報のすり合わせは、コアから聞いた俺よりコア自身がやる方が手っ取り早いはずだ。
コアはコンピューターでもあるから、質問の忘れとかも無いはずだし。
とりあえず俺は自室に戻って魔導書を読みますか。
『……ということがありまして、』
「がっはっはっは!そりゃあいいじゃねえか!俺は認めるぜ!」
飼育ルームに戻ると、なんかやたら陽気な声が聞こえてきた。
「……やたらと慣れてないか?」
「おうあんちゃん!お前さん良い趣味してるなぁ!」
ネコミミおっさんの態度もだいぶ軟化している。てかかなり馴れ馴れしい。
とりあえずコアに何があったのか聞いてみる。
「……何があったんだ?」
『いえ、ご主人様の性癖を話したら、同調したようでして。』
「お前はいったい何の情報をすりあわせてんだ!!」
「がっはっは!お前さん、そういうのは恥ずかしがらなくてもいいんだぜ?触手はロマンだもんな!」
「昔の話だぁぁぁあ!!」
くそぅ!コアめ!何かやり返ししてやる!
「おいコア、そんな話ばかりしていたわけではないだろうな?」
ちょっと凄みをつけて聞いてみる。
『問題ありません。データはまとめてありますので、後で確認なさったらよろしいかと。』
ほら、仕事はちゃんとやってんだよ。だから怒りづらいんだ。
『それと、こちらのルドルフさんが、このダンジョンに住みたいと言っておりますが、如何されますか?』
「は?なんでだ?」
俺はネコミミおっさん、もといルドルフに聞いてみる。
そんな名前だったのか。思えば自己紹介もさせてなかったな。
「いや、さっきのココア、だったか?すんばらしく美味くてなぁ、酒もあるらしいじゃねえか。しかもコメ?なんていう聞いたこともない穀物から作ってんだろ?興味しか湧かねえよ。」
ああ、こいつ飲兵衛か。
たしかに冷蔵庫に焼酎とビールはある。複製魔法で増やし放題だ。
種類が増えないのがつらいが。
「それにな、お前さんは会ったときは怖かったが、話を聞く限りじゃ、そう悪い奴には思えねえ。たしかに勝手に入って攻略しようとした、俺が悪いってのも頷ける。他のダンジョンマスターみたいに狂ってるわけでもなさそうだしな。」
ふむ。俺の趣味だけじゃなく、他のこともコアは喋ったのか。懐柔させるつもりだったのか?
まさか俺を自慢したかっただけな訳もないしな。
……ないこともないか。
「転移してからまともな飲み食いなんかしてなかったし、ここは居住環境として最適なのよ。まあ、お前さんが出ていけと言うなら、甘んじて受け入れるが。」
「しかしな、その辺の判断は伝聞だけだろ?コアがうそぶいている可能性だってある。判断基準にはなりえないだろ。」
「はぁ、なに言ってやがる。」
わざとらしくため息をつくルドルフ。
なんだこいつ、ムカつくな。殺されないと分かって、調子に乗ってるんじゃないだろうか。一発殴ってやろうか。
「触手好きに悪い奴はいねぇ!!」
「んなこたねえだろ!!」
むしろ性癖曲がってんだろが!まともな奴の方が少ないだろ!
まあ、こっちも自由に動かせる駒がほしかったところだ。これで作戦を実行できると考えれば、悪い手じゃない。
しかし最初の同居者がおっさんとはな。本当にこのままヒロイン道を突っ走るんじゃないか?
それはやめてくれ。俺にそっちの気はないんだって。まじで。
ルドルフが握手を求めてくる。
笑い方がいやらしいな。なんだその同士を見るような目は。
ため息をついて握手に応じる。
結果オーライ結果オーライ。そんな言葉を呟いて気を紛らわす。
ビーーーーーーッ!
侵入者を知らせる警告音が鳴る。
魔物かと思ったが、どうやら違うようだ。
『また人間の侵入者です。今度は三人ですね。』
また人間か。今日のネコミミ二人が初めての人間だったんだが、もう知られているのか?
それともネコミミ娘が助けを呼んだのか?
コアに監視映像を見せてもらう。
後者が当たっているようだ。三人のうち一人はネコミミ娘だ。
こんな短時間で助けを呼べたのか。
しかし後ろの二人は日本人らしい。
一人はスーツを着た青年。
もう一人は……妹だった。
……なにやってんだあいつ?
今回のあらすじ
糸目、おっさんを落とす。「落としてねえ!!」
おっさんが同居人となった。糸目は彼をどうするのか!?
そしてダンジョンを訪れた妹はどうなる!?
待て次回!!