第2話_偽りの海
―第二話―
…偽 り の 海…
俺の名は、レイ…
だが、本名ではない。
その名を呼ばれるようになったのは、七歳の頃だった。
その当時、俺は、バリストから遥か遠くの南西に位置するサイヘディックと呼ばれる国の研究所にいた。
その研究所では、ある実験のために俺を含め多くの子供たちが集められていた。
集められていた子供たちの多くは、孤児や人身売買で来た者たちであった。
俺たちは、毎日あらゆる訓練を受けさせられた。
銃の使い方…
戦闘術…
瞬発力や記憶力…
そして……殺し方
最初のうちは、慣れなく、泣いてる者や怯えているもの…がいた。
しかし、軍に派遣させられた者たちからの厳しい扱い方に恐れ…やがて、言うことを聞くようになり訓練を受けるようになっていた。
日々俺達は、互いに喋ることもなく拷問のような訓練を受けさせられてきた。
そんな中、1人の子が俺に話しかけてきた。
俺は、子供たちの中ではスバ抜けて能力が高く研究所の中では、期待の存在であったが皆からは、鋭く魔性のような目つきで怖がられていた。俺は、そんな奴らをカスだと思っていた。
だから、話しかけてきたことに驚いていた。
「お前、怖くないのか?」
「なにが?」
その子は、別にと言わんばかりな顔をしていた。
「どこの生まれ?」
とっさに言われ俺は黙っていた。
心中では、何で急に話しかけられ…ましてや、出身地まで聞かれるとは…
こいつ…舐めてんのかと。
「俺は……ない。」
その言葉に俺は、驚いた。
なぜなら、俺も似たようなもんだったからだ。
それからというもの俺とそいつは、良き友達になっていった。
そして、数ヶ月が過ぎた頃…
お互いに名前まで付けあっていた。
ここに連れてこられてからは、皆は番号で呼ばれていた。
監視員が、俺を
「ナンバー…00!!採血の時間だ!!」
採血の時間や訓練をしているときなどで部屋から出される時などは、いつも右肩に印されている(00)の印を確認されていた。
「ナンバー00かぁ…笑える…くくく」
「何笑ってんだよ!!」
俺は、お前も似たようなもんだろと思いながら言った。
それからというもの、俺達の間では、作った名前で呼び合った。
名前を付け合うことでお互いに家族のような信頼感が感じられると思ったからだ。
その時に俺は、レイと呼ばれるようになった。その由来は、番号が00だったため、0→ゼロ→レイにした。ただ単に簡単な呼び方なら何でも良かった。
――――――――――
「…」
デュランは1人で夜行バスに乗っていた。
ネド大尉が搬送された病院があるアリンツェは、ガルーダから車で約半日はかかる距離でその理由は、山岳地帯であったため道は険しく複雑でなかなか車で行くには、難しかった。ガルーダの基地からは、週に2日程度の夜行バスがガルーダから西の都市バイヘンまで行く便があった。部隊の休止命令が出されネシャット将軍は謹慎処分。俺も休止中のチャンスと今回の事件について聞くためにお見舞いを兼ねて行くつもりでいた。
窓の外は暗く、少し雪が吹雪いていた。
バスの中は、ヒンヤリとしていて用意してあった毛布で体を包み寒さを凌いでいた。乗客は、俺を含めわずか三人ばかり。それもそのはず、部隊が休止中なためか部屋に閉じこもるやつも多く、またや帰省するヤツらもいるにはいたが、ネシャット将軍の事も考えると帰省する気持ちになどなれず、国籍不明機に関して調べる者も多かった。
時刻を見ると午前五時を回っていた。あの事から一週間がたったと思うと何て時間は残酷なんだと思った。
ガガガガガガガ…ボスン!!!
その音とともにバスは止まった。
「何だ!?」
「エンストしたみたいです…」
バスの運転手がそういうとバスから降り押すと言い出した。
「んな無茶な!!」
俺も手伝おうと思い2人でバスを押し合った。そうしてるうち朝日が昇った。
「まったく、とことんついてねーや。」
寒さをこらえながらバスを押していると中から他の乗客が降りてきた。
「手伝いましょうか?」
「お、お願いします。」
また、もう一人出てきた。
「俺も!」
「ありがとう!よし力入れてこう!」
「お、おう!!」(みんな)
俺達4人は、綺麗な朝焼けに背を向けながらバスを押していった。
―――――
‐エネルスタ西方の某諸島‐
面積のほぼ9割が森林に覆われているその無人島の地下には、小さな要塞が存在していた。中では、弾道ミサイルや戦闘機などが数々揃えられていた。
要塞の中は、見かけより大きく六つのブロックに分けられていた。
その第2ブロック格納施設[第05格納庫]には、数十人の研究者たちが黒い戦闘機の前に集まっていた。その先頭に黒い軍服を着た紅髪の男が何やら話していた。
「だいぶ、この機体も安定値に定まったな。」
紅髪の男は、右目のあたりに古い傷を持ち、偽眼をつけて左目は青、右目は赤でとても不気味な存在感をただよせていた。
「レイの状態は?」
「今の所は異常ありません。」
「この機体は、パイロットに大きな負担をかけると聞いていたが…」
紅髪の男は、不安そうな表情で黒い機体を見つめていた。
第5ブロック[科学医療室]
そのブロックは、カードキーがないと入室不可能になっており指紋照合で扉が開く仕組みになっていた。
そのブロックの四番目の部屋にレイという人物がいた。
部屋は、全面白で統一されてベットが一つついてるだけのシンプルな部屋になっていた。
「……。」
レイは、本を読んでいた。
「これのどこが感動するんだ?」
コンコン…
そこに紅髪の男が入ってきた。
「どうだ調子は?」
「別に何ともない…」
「アネル、いつになったら外に出られるんだ?」
レイは、紅髪の男に訪ねた。
「今、検査結果が出て異常がないようだから、出てもいいぞ」
アネルがそういうとレイは、ベットから降り部屋を出ていった。
「次の任務まで外出は、するなよ!」
第1ブロック[総合監視室及び指令室]
このブロックは、全てのブロックに情報や伝令を伝えることができ、全てのブロックのライフラインといってもいい中心部のブロックである。
そのブロックの責任者でもあり、副指令官でもあるライオネルは次の任務の資料を調べていた。
そんな中、ライオネルは自分たちのやっていることに疑問を持ち始めた。
新兵器の破壊を目的として設立された組織が、だいぶ軌道からはずれはじめているということを。
そもそも新兵器の破壊を優先しなければならないが、目標のある地域に侵入する際に数多くの戦闘機を破壊し、国をも混乱させてしまう。自らの武力が、戦争の引き金になってしまうかもしれない。ライオネルは、そう考えていた。
「どうしたんだライオネル?」
第5ブロックから帰ってきたアネルが訪ねた。
「いや…」
ライオネルは、内に秘めたことを総司令であるアネルに言うことはできなかった。
「所で、レイの状態は?」
「なんともない。直ぐさま任務につける」
ライオネルは、次の任務である海上要塞フリーメーソンの資料をアネルに渡した。
「今度は、フリーメーソンかぁ…上の奴らも軽々しく送ってきたな。」
「うむ…」
資料によると、その要塞内部で核搭載型戦闘艦が造られていると書かれていて、スパイが撮ったと思われる写真が同封されていた。位置は、北スタンヴィッツ海沖。要塞には、SF-02戦闘機10機。対空ミサイル5機。と記されていた。
「SF-02戦闘機が10機…」
アネルが呟く。
「フリーメーソンを混乱させるとなると…先週の任務のバリストよりも危険が高い…」
「よし!レイに準備するように伝えてくれ!」
アネルは、みんなに任務の準備をするように呼びかけブリーフィングルームに入っていった。
―――
2月12日 PM 4:25
北スタンヴィッツ海
安定したスピードを維持したままレイの乗る黒い戦闘機は、海上要塞フリーメーソンを目指していた。
「聞こえるか?レイ」
「あぁ…聞こえてる。」
「今回の任務は少し危険が付く、内容も内容なだけに戦闘はなるべく控えてくれ!」
任務の内容は、要塞内の核搭載型戦闘艦を破壊することだか、核搭載されていて爆発すると半径10Kmは、消し飛んでしまう。なので、破壊を確認後、上空に回避しなければならない。
しかし、問題は、それだけではなく。その戦艦がフリーメーソンの内部で製造、開発しているということ。内部にまでは攻撃が届くことはなく、フリーメーソン事態をどうにかさせないといかないのだが…
「スパイが、内部で爆発工作をする。それに乗じて戦艦を内部から非難させる!」
「外に出た戦艦を俺が破壊するということか!」
「あぁ、頼んだぞ!」
レイの戦闘機は、フリーメーソンに近づいていった。
[フリーメーソン内部]
フリーメーソンは、小さな小島を改良し建てた要塞で全体的にアズルメタリックという特殊な合金の装甲を隔て造られた完全防御型要塞である。五年の歳月と莫大な費用を投じて造られた北スタンヴィッツ海軍の誇る重要拠点とも言える。毎年、隣国のメラスの海軍との合同訓練も行われ軍力の増強も行われてきた。
「提督!」
レーダー監視の男の士官が声をあげた。
「何事だ?」
「レーダーに反応が!」
「なにぃ!?」
提督は、戦闘機の発射準備を伝えた。
先週の一件から国籍不明機の事件が騒がれる中で、本部自体から警戒を強くするように伝えられていた。そのため、万が一のためにも戦闘機の準備はしていた。
「各戦闘機に伝える。先週の事件は、皆も聞いてると思うが、侵入した国籍不明機は、まだ事件の国籍不明機とは分からんが油断することなく近ずくように。また、怪しいと感じた場合、撃墜を許可する。以上。」
提督の言葉が各機に伝えられるとパイロットたちに緊張感が漂っていた。
天候は曇り。わずかだが小雨が降っている。
レイの機体は、要塞の対空ミサイルに注意しながら要塞に向かっていった。徐々に近づくにつれて小雨が降り始める。
「雨か…」
レイが嫌そうに言った。
ツー…ツー…ツー…
アネルからの無線が入った。
「予定どうりに物事は運んでいる。相手からの警告は来たか?」
「あぁ…とっくに遮断したよ。」
「フッ…だろうな。相手は、SF機を送り込んでくる。気をつけろよ!」
レイは、無線を切ると前から来たミサイルに反応し旋回して回避した。
フリーメーソン内部の管制室では、皆が沈黙の中情報を待っていた。
「ミサイル………回避されました。」
放った三発のミサイルは、全て回避され提督は驚きを隠せなかった。
「よっ避けただと!?…やはり、一筋縄ではいかんらしいなぁ…。なら!この要塞の怖さを感じさせるまでだ。」
既に、飛び立った戦闘機4機に無線が入った。
「ミサイルは、失敗。各機に特殊武装の使用を許可する。確実に撃墜せよ。相手はフリーメーソンを狙っている。なんとしても、近づけさせるな。」
「了解。チームγ作戦を開始する。」
四機の戦闘機は、Vの形に飛行位置を変えレイの戦闘機に向かっていった。
この戦闘機[SF-02]とは、ミサイルの他に特殊武装の拡散線導弾が詰まれている。拡散線導弾とは、1発のミサイルの中に数十発ほどの小さな小型ミサイルが仕込まれており追尾力はないが、それを回避するには、難しく。大戦中では、これが多く活躍した。飛行性能も高く、細かな旋回も可能である。 主に色は、黄色で塗装されている。愛称:サンダーホーク。
「レーダーに敵機確認。」
アネルには、撃墜するなと言われたが今回も無理そうだ。アレが、使われる前に破壊しなければ、こっちが危ない…
真下は、海。落ちたら終わりだ。そんな状況の中、攻撃は相手の方から始まった。
四機の戦闘機は、二手に別れると一方は、正面からもう一方は、レイの後ろに回り込もうとした。
「ちっ」
レイが舌打ちした。
雨のせいか操縦がうまくいかない。
後方から飛んでくる戦闘機に気を取られていると正面から機銃の弾が飛んできた。
レイは、機体をそらし避けた。
「うまく、避けたな…だが!」
今度は、後方の二機から機銃の弾が飛んでくる。何とか機体をそらし避けようとするが、2発直撃した。
「くっ!」
敵機のパイロットは、命中した事に喜ぼうとしたが、レイの機体に損傷は無くましてやかすり傷もなかった。
「俺の機体とお前らの機体を一緒にするなよ!」
レイの機体は、宙返りし機銃で後方の敵機に威嚇射撃した。
「んぐっ!」
後方の戦闘機は、左右に別れ後方から離れた。それを待っていたかのように一気に加速させるとフリーメーソンの方に向かっていった。
「しまった!?」
フリーメーソン内部―――
工場では戦艦が完成されており、後は、海上に浮かべるだけであった。
「よし!慎重に降ろせ。」
作業員達が戦艦に取り付けてある鎖を徐々に下げていくと戦艦も徐々に海面に近づいていった。
この工場は、中心が四角に切り取られ海面が見れる設計になっていて、船や水潜艦など外からシャッターを開ければ出入りできるものとなっている。
「おい!お前何を…うっ」
眼鏡をかけた東洋風の男が、作業員のひとりに麻酔銃を撃ち込んだ。
その身の施し風貌からみる限り作業員に化けたスパイのようである。
「こちら…シエル…爆発準備完了。」
「よくやった。しかし、戦艦に乗り込むのは、無理だったか…」
「はい…警備が堅く近くに行くことすら無理でした。もう見つかるのも時間の問題です。脱出します。」
「わかった。ご苦労…」
そういうとシエルは、脱出口である下水管に入りその場をさった。
―――
「提督!!黒い機体が5Km圏内に入りました!」
「なに!?リシアの部隊は、何をやってるんだ!!!」
提督は、怒りながらリシアの部隊に無線を繋いだ。
「お前ら!何をやってる!たった一機も落とせんのか!!」
「申し訳ありません。相手のレベルは、私達の領域を越えています。ミサイルも避けられて…」
「なら!アレを使え!!」
「わっ分かりました。」
リシアは、特殊武装に機体を切り替えた。四機は、ターゲットをロックしようとするが狙いが定まらなかった。
「くそっ!何て速さだ!?」
レイの機体は、左右に操縦を切り替えたり、旋回したりと様々な動きで相手を攪乱していきながら着実にフリーメーソンに近づいていっていた。
「ターゲットをロックしなくてかまわん!そこら中に撃ち込め!!!!!」
提督の渇がパイロット達に刺激を与えると、特殊武装である拡散線導弾を相手前方に撃ち込んだ。
「来たか!」
レイは、ジャマーの準備を開始した。
[チャージ中]
何百発の小型ミサイルがレイの機体に襲いかかる!!!
次々と川の流れのようなミサイルを上手く交わし、上空に上昇した。
ドドドドドドド…
レイの機体が、雲の中に入りこんだ瞬間爆発音とともにミサイルが、次々と消えてゆく。
「やったか?」
爆発の煙と雲が邪魔をして、上手くレイの機体を確認できない。
レーダーを確認するとレイの機体は、消えていた。
「映ってない!」
「提督!!破壊を確認しました!」
「よし!!!!よくやったぞ!」
提督は、全てのパイロット達に帰還命令を下した。
「やりましたね!提督!」
士官達が提督に言った。
「この後、散策チームを派遣し徹底的に黒い機体を見つけだす!」
「了解しました。」
提督は、コーヒーを片手に取りパイロット達のモニターに乾杯した。たった一機で来たことに馬鹿な奴だと思っていた。
だが、幕は降りていなかった。
ドウーーン!!
大きな爆発音とともに要塞内は、激しく揺れた。
「なっなんだ!!??」
「一階の工場内で爆発!すでに、第2ヘクターと第3ヘクターが応答ありません。第1ヘクターには、核搭載型戦艦があります!!」
「直ぐに戦艦を外に出すんだ!!!」
「分かりました!」
工場内では、爆発の衝撃で炎に包まれていた。
「消化を急げ!!!」
作業員達は、必死になって火を消していた。
「戦艦の脱出を急げ!!!」
戦艦は、スクリューを回転させ碇を上げ外に向かっていった。
外に向かうには、長いトンネルを通りシャッターを何枚も潜らなければならなかった。
やっとの思いで外に出ると思いもよらぬ敵が待ち受けていた!
「戦艦の脱出を確認!」
「よぉし!次は、工場内の消化を優先するんだ!」
「わかり………!!」
ドン!!ダーン!!
「戦艦にミサイル着弾!!」
「なにぃ!!??」
モニターに戦艦を映すと戦艦は、黒い煙を上げながら猛火に襲われていた。
見ると、周りを黒い機体が戦艦に攻撃しているのがわかった。
「目標に着弾…」
「直ぐに上空に退避しろ!レイ!」
レイの機体は、レーダーから消えた事で破壊されたと誤認され、それから上空を渡り戦艦の真上から降下していき攻撃を成功させたのであった。
レイの機体の特殊ジャマー[後に名前判明]によるレーダーから消えることで敵の裏をかかせたのである。
戦艦は、爆発を繰り返した。その数分後……
大きな爆発が起こった。
要塞内部では、大きな揺れと衝撃で士官たちは、全員地面に折り重なった。あちこちの棚やパソコンなどは、地面に落ち、破片が飛び散った。
しかし、要塞は外部の甲板が黒く焦げるぐらいであった。
上空では、レイの機体だけポツンと残っていた。
「核ってこんなのだったか?」
レイは、核の爆発に疑問をもった。どうしても爆発の規模が小さい。
そこにアネルから無線が入る。
「レイ!大丈夫か?」
「大丈夫も何もアレは、核なんか搭載されてない…ダミーだ!」
「だとすると……」
「どうした?」
「ダミー?もしかしたら…オトリ!?」
「オトリ!?なんのことだ?アネル!」
「レイ!気をつけろ!俺たちを狙ってる奴らがいる!!」
ピーーー!!!!!!
突如、レイの機体がロックされた!
[WARNING]
「どっどこから!?」
周りには、戦闘機もなく雲の真上なだけにあって太陽の光だけが降り注いでいた。
警告音が鳴り響く中、レイはどうすることもできずにいた。
「くっどこから…」
真下の雲から黒い影が現れ、レイの機体に機銃が飛ぶ!
「そこか!?」
レイは、右に旋回し攻撃してきた機体に近づいた。
そこには、迷彩柄の戦闘機が3機並んでいた。
「なんだ?コイツら」
レイは、3機の方向に向かっていった。
「やめろぉぉ!レイ!」
アネルの声は、レイに届くことはなかった。
PM 5 : 40 ……………
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