今回のことといい、こないだ言ってた王女の件といい、公爵家もけっこうヒドい目に遭ってる。そんでもまだ「信頼される」存在でいようってのは、もうプライドとか信念の世界だろう。
やっぱ殿下、案外いい王様になりそうだ。
まぁ殿下が王位についたとこで、国を好き勝手に動かせるわけじゃねぇから、意味は薄いかもしれねぇけど……。
『本当に、若いころのメルヒオルのようだな。同じことをあれも言っていた』
大きく息を吐いて、竜が続ける。
『信を失うな。犠牲者に泣け。しかし犠牲におびえるな。メルヒオルからの伝言だ』
「建国王からの……」
殿下が何百年前からの贈り物を繰り返した。
「信を失うな。犠牲者に泣け。しかし犠牲におびえるな、か。なるほどな」
納得したみたいに頷いて、竜に向かって言う。
「建国王メルヒオルからの伝言、たしかに受け取った。礼を言う」
『礼には及ばぬ。そなたたちは少なくとも我らに対しては、約束を違えなかったからな』
やり取りを見ながら、面白れぇなと思った。
どっちも裏切ったり裏切られたり思惑と違ったり、そういうのは想定済みだ。なのにそれでも、信頼できる相手って考えてる。
『さて、かつての契約の件はこれで良いが……これとは別に、そなたたちに償いをせねばならんな』
大きく息を吐きながら、竜が言った。
後ろで尻尾が動いて、若い竜の頭を引っぱたく。この馬鹿が、ってとこだろう。
『何がいいか……あぁ、そうだな』
竜の独り言と同時に俺とルーフェイア、それに先輩の目の前に、手のひらくらいの光が浮かんだ。
『それを持っていくといい』
言われて恐る恐る、手を伸ばしてみる。
「何だこれ、鱗?」
『そうだ。持っていれ私が死なんかぎり、かなりの魔法と炎が防げる。お前たちのほうが先に死ぬだろうから、恐らく一生使えるはずだ』
竜の一生ってのは長い。この竜がどんだけ生きてきたかは知んねぇけど、それでもあと百年やそこらは生きるだろう。
ふと、竜が今までどんなもん見てきたか、気になった。あっという間に大人になって死んでく俺らは、竜にはどんなふうに見えてんだろう?
『ほかにも、売れば相当の額になるとかつて聞いた。まぁ今は、さして価値がないかも知れないが』
「いや、すっげー高いです。竜が昔みたいに居ないんで、ものすごい値上がりですよ。っても俺、今んとこ売る気ないですけど」
シエラにいるくらいだ。防御のほうがずっと助かる。
竜のほうは答えが面白かったらしくて、ひとしきり笑ったあと、俺らを見回した。
その視線が、今度はルーフェイアで止まる。
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