アヴァンシティのシンボル、公宮が近づいてくる。
「シティ、空から見るとすごいねー!」
背中で嬌声が上がった。
昔ながらの、大きく平らな石で組まれた石畳の道。重厚ながら綺麗な装飾がなされた、石造りの町並み。
広がる白亜の宮殿群は「世界一美しい」と言われて久しく、中央手前の本殿と、幾つも点在する離宮とを、緑の庭園が囲んでいる。
「……巨鳥部隊の忠誠心が異様に高い理由が、分かった気がするな」
「だねぇ。空から毎日こんなの見てたら、そうなっちゃうねー」
歴史あるこの国に生まれてよかった、素直にそう思える光景だ。
眼前に広がる景色に見とれながら、ローウェルは老竜に話しかけた。
「すまんが少し速度を落として、旋回してくれないか?」
『構わぬが、何故だ? 降りるだけなのだろう?』
不思議がる老竜に、答える。
「巨鳥部隊がいるからな。こちらの動きを分かってもらわないと、混乱が起きる」
『なるほどな、了解した』
竜が少しずつ速度を落とす。
巨鳥部隊もすぐ気がついて、同じように速度を落としていき、並んで旋回飛行に入った。
竜と巨鳥部隊の空中ショーに気づいたのだろう、広場に居た人々が、こちらを指差しながら騒いでいる。
それからふと思いついて、竜に問いかけた。
「仮に襲われたとき、その……なんだ、お前の障壁とやらは、僕も守れるのか?」
『私に触れる距離なら、一緒に守れるな。だが離れては無理だ』
予想以上の答えだ。
「なら、僕に魔法で攻撃するものが居ても、大丈夫ということだな」
『人の子一人も守れぬとあっては、竜の名折れだ』
微妙に趣旨の違う、だが明快で意思を感じさせる言葉。「竜を得る」ということの意味を、やっと少し知った気がする。
何度か旋回したあと頃合と見たのか、竜がゆっくりと高度を下げた。
広場の人々が、慌てて場所を空ける。
と、その空いた場所へ我が物顔に、報道関係者らしき人間たちが出てきた。宮殿前の広場は、毎日どこかが撮影に出ている。だから今日も居るだろうと踏んだのだが、当たったようだ。
『あの者ら、どかぬがどうする?』
「構わん。そのまま降りてくれ」
危険をかえり見ぬ根性は見上げたものだが、何をしてもいいということにはならないはずだ。
それに撮った写影や画像は、連中はこちらに断りもなく、勝手に高く売るのだ。文句を言われる筋合いはなかった。
竜も状況を飲み込んだのだろう、含み笑いのような声を立てて、容赦なく降りていく。
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