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画家
作:ごはんライス


 画家は頭を抱えて悩んでいた。
 締め切りにせっつかれて、思いきりなぐり描きしたおめこマークに何と二億円の高値がついてしまった。
 もうほとほといやになってしまった。自信作に高値がつくのはいい。この前発表した「はげた爺さんの頭の上で逆立ちする小さな裸婦像」に5000万円の値がついたのは正直うれしかった。自信はあったが一般受けはしないと思っていたからだ。
 しかし、今回のは・・・・・正直、ほんまになぐり描きで、絵でも何でもない。便所の落書きだ。それがあんな風に高値がついてしまうのは、これはもう、作品が評価されてるというよりは、わしのビッグネームが一人歩きしてる証拠だ。
 ためしに今度は意識的に、駄作を描いた。「野球ボール二個に毛が生えてる・・・・これ金玉じゃん!」という題名タイトルの最悪な作品だ。

 これが、なんと自作品最高額200億円!

 画家は居酒屋でしこたま酔っ払った。
「なんだよ。なんだよ。誰もわしの絵なんてわかっちゃいないよ。わーん」
 居酒屋の親父は酒を注ぎながら慰めた。
「まァまァ旦那。世の中なんてカネですよ。絵のわかる人間なんてほとんどおりまへんて」
 全然慰めになってない。
「ちくしょう。ちくしょう」
 隣でちびちびとやっていた若者が、「どんな作品を描いたんですか?」と尋ねた。
「こういうの」
 親父が、例のおめこマークの絵のコピーを若者に渡した。
 若者は眺めた。
「これ、いくらです?」
「二億円だって。働くのがバカバカしくなるよね」
 若者は、ははははと笑った。
「いいなァ。ボクも一度でいいからそれくらい売れてみたいなァ」
 ほうお客さんも絵を描いてるんで? と親父が聞いた。
「いえ。ボクはこういうの描いてるんです」
 若者は単行本を差し出した。エロマンガだ。
「ふやァ。これは上手いですねェ」
 親父は感心してる。
 しかし、若者は力なく笑う。
「はは。やっぱり、上手い・・・・ですか。しかし、長年描いてるので上手いのは当然なんです。それよりもむしろ、ボクはこの絵のようにパワフルな作品が描きたい」
 若者はおめこマークをにらみながら今にも泣きそうだ。
 画家はついに床にひっくり返ってグースカ眠りこけてしまった。
 親父は若者に酒をつぎながら言った。
「でもね、お客さん。わしはお客さんのマンガ好きですよ。上手いのの何が悪いんですか。長年描きつづけてる、そのことに価値があると思うなァ」(了)














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