第七話[ありがとう]
「るん♪るん♪るんるん♪るんるんるん」
今、僕は浩の家に宿泊中。これで何回目になるのだろうか。浩の親も《どうぞ!由美ちゃん、遠慮せず泊まってって》と言ってくれたし、自分では第二の自宅みたいな感じがする。
で、なんで僕が鼻歌を歌っているのかと言うと、
「ねぇー、浩。シャンプー取って」
「ったく、自分で取れっつーの」
そうです。今は、浩と一緒に入浴中。
しかし、浩はずっと後ろを向いたまま僕と会話をしている。
「俺、もう、風呂から出ていいかな?」
逃げ腰の浩
「だーめ。なんか一緒に話そうよ」
そう僕が言うのを聞き流しながらお風呂の出口に向かう浩。
「ちょっとー、こら!逃げるなー」
「……」
「いくじなし!」
「……」
「運動音痴!」
「……」
「……ま〜ざ〜こ〜ん」
「誰がマザコンだコラァァァ」
やっと反応したか。
しかし、こっちに振り向いた瞬間。また、目をそらしながら後ろを向いた。
「もう、何恥ずかしがってんの?タオルを巻いてるんだからちゃんと人の目を見てよ」
浩の顔がなぜか、真っ赤に染まっている。
はー、男らしくないな。男ならもっと《ビシッ》としてよね。
「お風呂入ろうよ、浩。」
「分かった分かった。じゃあ、お互い後ろ向きなら入ってやるよ」
「《入ってやるよ》じゃなくて、は・い・る・の」
そう僕が言うと、渋々、浩はお風呂に入る。そして、僕も続いて後ろ向きの体制で入った。
《ザップーン》
お風呂のお湯が二人が入ったせいで溢れだしてきた。
「はぁー、気持ちー」
やっぱり、お風呂はいいなー。体も心もリラックスって感じ。
「…そうか?普通じゃね」
呆気ない浩の一言。
気分が台無しだよ、もう…
ちなみに浩の家は、一般の家からしたら結構大きいほうで、勿論、風呂場もなかなかの大きさ。
大人が三人入ってちょうどいい感じかな。
僕の家とは大違いだよ。ちょっと大げさに言いすぎたかな。……そして、いきなりだが少し質問をしてみる。
「ねぇ、浩」
「ん?」
「僕って変なのかな?」
あまり人には言えない質問を浩にぶつけてみる。
「何が?」
「いや…色々と…」
なぜ、こんな質問をしたのか分からない。前にも同じような質問をしたのだが…
決まって浩は
「普通なんじゃないの」
いつもの答えを返してきた。
「ねぇ、普通ってなんなの?よく分からないんだけど」
浩が僕の肩を叩いた。
「ん?…わ!何すんのさー」
僕が振り向いた瞬間、顔にお湯が…
「よし、命中。すごいだろ俺の水鉄砲」
笑いながら水鉄砲を連射する浩。
お湯が目に入り、手で擦る僕。
「目にお湯が入ったー」
「おら!どうだ。今までの恨みだコノヤロー」
「恨みって…なんのだよー」
「色々あって分からないなー」
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
十分後……
僕もお風呂のお湯を浩の顔面にかけたり、かけ返されたりして、風呂場はお湯でビッショビッショ。
なんかもう、さっき僕がした質問がバカバカしくなってきちゃった。っていうか忘れてたよ。
「ふぅー、…楽しかった」
浩が笑いながら言う。
もう、後ろ向きで話をしてるんではなく、僕の正面に向かって普通に浩は喋っていた。
なんか分からないけど嬉しいな。
なんでだろ?
「ねぇ、浩」
「プハ!何?」
「ありがとね」
「……何が?…」
「い・ろ・い・ろとね」
僕はそう言ってお風呂からあがった。
「ちょっ!何、自分だけあがってんだよ」
「だって、のぼせちゃうじゃん」
「……そうきたか」
浩はそう言いながらブクブクと頭までお湯に浸かった。
《浩ーー!夜ご飯が出来たわよー。由美ちゃんも早くあがってらっしゃいな》
「あ!浩のお母さん。もうあがらないと…じゃあ先にあがるからね」
浩はまだ、全身ゆぶねに浸かっている。
「聞いてるの?」
その答えに浩は片腕を外に出し、親指を《グッ》と指した。
もう、何やってるんだか… |