第五話[男の約束]
「ゴール♪やったー、僕の勝ちー」
「ぜぇぜぇ。ゴホッ、ぜぇ、ぜぇ、くそ負け…た」
俺は全てのエネルギーを消耗し、学校の門の前で膝をガックシとつけた。俺が今思っている全エネルギーとは、体力もそうだが、こいつに負けてしまったと言う精神的エネルギーの方が大きい。
また…負けた。サッカーでも勝てないし、昨日やったバスケでも圧倒的に由美チームの完全勝利だった。陸上では絶対の自信があったのだがやはり勝てない。なぜだーーーーー
「浩、大丈夫。目が完全にあっちの世界にいっちゃってるんだけど」
「………え?…大丈夫大丈夫。気にすんな」
「本当に?まぁ、あんだけ自信満々に言って負けたのはショックだと思うけど」
グサ!
「やっぱり浩は僕に一生スポーツでは勝てないんじゃないの」
グサ!
スポーツまんの俺からしたら、この一言一言は俺の心に深く突き刺さる感じがする。
《キ〜ンコーンカ〜ンコーン》
《みなさんおはようございます。始業式がもうすぐ始まりますので廊下にすみやかに…》
「やっべ、こんな事してる暇じゃねーよ。おい由美、早く行かないと…ってあれ?」
俺が由美を呼んだ時にはもうその場所には姿を消していた。
「あのヤロー。人を勝ってに置いていきやがってーー」
俺はフラフラの足に一発気合いを入れてダッシュで上靴を履き、そして階段を登り、教室に着いた。
「おい浩!!遅いぞ遅刻だぞ遅刻」
担任の先生が怒鳴り声をあげて俺に言う。
「すみません」
ムカつくが俺が悪いので一応謝っとく。
「どうした浩?汗がすげーぞ。」
「朝から運動でもしてきたのか?」
同じクラスの男子が苦しそうにしている俺に問いかける。
「フゥー、まぁーな。いろいろあって」
そういえば由美はどこへ行った。あいつが見当たらんな。勝ってに先に行きやがって…
ちなみに由美も俺と同じクラスだ。しかも中学校の時も三回クラス替えがあるうちに二回とも同じクラスになったからな。神様のいたずらなのかな。
と言うのは別に良いのだが…それより奴はどこだ?
「おい田辺。由美知らないか?」
「さっきまでおったけど…」
「…ったく。由美の奴。どこにいきやがった。もうすぐ始業式が始まるっていうのに」
(トントン)
誰かが俺の肩を叩く。
「なんだよ」
「僕ならここにいるけど」
「?…いつからいた」
「今」
「どこに行ってたんだ」
「トイレだよ」
その言葉を聞いた田辺は手をポンと叩き俺に言った。
「あ、そういえば由美ちゃんがトイレに入るのを見たわ」
今頃気づくなよ。
まぁ、元々こいつはいつもボ〜トしてる奴だからな。聞いた俺がバカだったよ。
「もうすぐ始業式が始まるぞ。廊下にちゃんと整列しろ」
先生のかけ声でクラスのみんながすばやく整列する。この担任、結構やかましく、短気なので俺からしたら嫌いな先生ベスト5に入る。
「浩ーー」
隣の由美がにやけながら俺に向かって言う。
「勝負は僕が勝ったから浩が罰ゲームね。僕の言う事ちゃんと聞いてよ」
しかたない。勝負だからな。
「一緒にお風呂に入る事。たまに僕が《一緒にお風呂入ろう》と言っても拒否してきたから。今度は絶対だからね」
「だーかーらー、それは無理に決まってるだろうがぁぁぁ」
「おい!中原うるさいぞ!」
俺の怒鳴り声にまたしても担任がキレる。今のは俺が悪かった。始業式前だもんな。
「男は一回言った約束は守らないと」
由美が俺に向かって偉そうに言う。
「約束も何も…ダメなものはダメ」
「いいじゃん。僕を男と思ってくれるなら」
なかなか風呂の事から引かねーなコイツ。
「もう一回言うぞ。ダメなものは…」
「はい、静かに。体育館に入場するぞ。」
俺の言葉は担任の掛け声で見事に消された。
「じゃあ決定ね、浩」
なんでそうなるんだよ。 |