第三十二話[いじめっ子]
大介の目からは涙が流れていた。朝の日差しに反射してキラキラと光るその涙は僕に何かを訴えているようにも見えた。
「大介・・・どうしたの?」
僕は大介に問うが返事は帰ってこない。
「ごめん。ぶつかった時にどこかに当たったんだろ。俺が悪かった、ごめん」
「違うよ浩。あの泣き方は・・・」
「あの泣き方は?」
大介の目の前まで行き僕はもう一度質問した。
「どうしたの?」
その時大介の瞳から大粒の涙が流れた。今までこらえてきた物が全て出ていくようにも見えた。
「ぐすん・・・うぇ・・・ぐすん」
「はいはい泣かないの男の子でしょ」
僕はその場の空気から大介の頭を手でなでなでする。
「なんか一瞬由美がお母さんに見えてきたよ」
「何それ。せめてお父さんと言ってよね」
その後、大介に泣いていた理由を聞いた。その話を聞いた時僕と浩は怒りで頭がいっぱいになってしまったのは言うまでもなかった。短く言うと《お金》の問題だ。大介はその子供に約十万ほどお金を貸してるらしい。と言うより強制的に捕られたと言ったほうが良いかもしれない。
「浩」
「なんだ?」
「僕、ちょっと学校に遅れるね」
大介の手を引き僕はいじめっ子の家へ案内してもらう事にした。
「おい由美。俺も行くぜ」
僕の肩に手をのせ、大介の頭をもう一つの手で頭をくしゃくしゃする。なぜかその時、とても温かく頼りになる手の温もりを感じた。
「姉貴、やめようよ」
「いいからお兄ちゃんに案内しなさい」
その言葉に浩の顔がひきつる。というより笑いを耐えているような表情だ。
「どうしたの?」
「いや姉ちゃんだろ」
「いいのお兄ちゃんで。一回言ってみたかったんだから」
「・・・ふ・・・」
浩の口から出た一文字の言葉。
「あーーーバカにしたな」
「いやしてないしてない」
・・・と言う会話を二十分ほどしていると気がついたらその人の家の前に来てしまった。この家の子がいじめ組のリーダー的存在らしい。
「よし」
僕は家のブザーを鳴らそうと手を近づけた。
・・・とその時、ブザーを押そうとした瞬間、人の気配を感じ後ろを振り向く。
そこには大介と同じくらいの身長の男の子が立っていた。
「ん?大介じゃん。何でここにいるんだよ」
「ご・・・ごめん」
大介の体が震えている。こいつが大介をいじめた犯人か。
僕は前に立ちその男の子に向かって叫んだ。
「あんたが大介にたかったの?」
「・・・」
僕のその言葉に反応はない。わざと聞き流されているような感じだ。
「・・・っせー。ば・・ば」
「何て?」
いきなりぼそりとその男の子は呟いた。
「《うっせーよババア》って言ったんだよ」
・・・ぷつん!!
あれ?今の言葉で一瞬殺意が・・・
この男の子、中二だよね。大介と一緒の年だよね。年下の子にこのように言われるとは・・・・・・やばい!!僕の手がグーになってるよ。
「ちょっと」
僕はその子の手を思わずつかんで自分の元へ引っ張った。
「兄ちゃんーーーー!!」
手を引っ張った瞬間、その子は大きな声で自宅にむかって叫んだ。
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