第三十話[複雑な思い]
桜の蕾がふくらんでいる。
暖かい春風が僕の顔を撫でていくように通りすぎた。
「もうすぐで4月か」
そんな事を考えながら商店街を歩く僕。
特に用事はない。ただ歩きたかっただけ。
一人でただ歩きたかったんだ。
高木さんとの料理バトルに勝ち嬉しかった。
でも複雑な気分。
あれから一週間と少し、高木さんとは一度も会っていない。
何か悪い事をしたような気分だ。
だって高木さんはただ単に普通の恋愛をしたかっただけだと思う。それを僕は浩の為とはいえ浩の彼女という嘘をついた。小さな嘘だけれども何か心が痛む。あの時、はしゃいでいた自分がバカみたいに思えてきた。
もう一度会い本当の事を話して浩と高木さんをくっつけるようにしてもいいんではないだろうか?
どうせ僕が浩の彼女になる事はないだろうから・・・
《トントン》
肩を叩かれて後に振り返る。
「よ!由美ちゃん」
そこには田辺君の姿。片手にぶら下がっているビニール袋に《〇〇店限定、果実まるごと苺大福》と書かれていた。
「由美ちゃんは今何やっているの?」
「・・・苺大福・・・」
その答えに一瞬田辺君の頭に?マークが浮かんだ。
しかし即座にその答えを理解したのか苺大福がはいった袋を僕の顔に近づける。
「食う?」
勿論その言葉に僕は頭を数回縦に傾ける。
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今僕らがいる場所は商店街から少し離れた小さな公園。
小さいベンチで田辺君と二人で苺大福を頬張っている。
「おいしい♪」
「本当に由美ちゃんは大福が好きだね」
お互い口に白い片栗粉をつけながら食べる姿は少し幼く見えてしまう。
「そういえば由美ちゃんが一人でこの辺を散歩なんか珍しいね。大体いつも浩が横にいるか、弟の大介君とかがいるのにね」
「たぃふけとはさいひんいっひょにいはいよ」
口一杯に詰まった大福により由美の言葉は田辺君には伝わらなかった。
「未知の言葉で分からなかった。もう一回言って!」
僕は苺大福をのみこむと同時に片手で胸を《ドンドン》と叩く。
「《大介とは最近一緒にはいないよ》と言ったんだよ」
「へぇーあんなに仲が良かったのにね。やっぱりお互い年頃だからかな?」
「そうそう年頃なのよ。ね、由美」
「うんうん」
「そーか」
「・・・・」
「・・・・」
約5秒間沈黙。
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「ってうわぁーーーーー!!原田さん!!」
「びっくりしたーーーー」
いきなりの原田さんの登場にかなりびっくりした。なぜなら 僕と田辺君のお互いあいていたベンチの中央にさりげなく座ってるんだもん。
いつの間に・・・・
「ごめんごめん。偶然見かけたから気配を消してきちゃいました」
なぜ気配を消す必要が?
というか気配を消せるの!!すごい・・・・
そして服装もオールレッド。上から下まで赤で統一している。目がチカチカしてきたよ。
「こんなところで二人きりとは・・・・怪しい」
目を細めながら原田さんは僕らを睨めつける。
「違うよ。田辺君から苺大福を貰って食べてただけだよ」
「そうそう。変な誤解するなよな」
「アハハ!!嘘よ嘘。少しからかっただけよ」
手を横にふりながらその綺麗な唇が微笑んだ。
「そうそう由美」
笑いがおさまったところで原田さんが口を開く。
「そういえばさっき商店街のゲームセンターに大介君がいたよ。なんか髪を染めた奴と一緒にいたけど大丈夫かな」
「本当に?」
それを聞いた瞬間、なんか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
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