第二話[自覚してる事]
「姉貴ーーー火事だーーー!!」
《バ!》
「嘘嘘!!」
僕は布団から慌てて這い上がった。
「嘘だよー姉貴。もう朝だから母さんが《早く由美を起こしにいってきて》って言われて起こしにきただけ」
弟の大介の言葉に僕は…
「だーいーすーけー」
《ゴツン!》
殴っちゃいました。
「いってー。殴る事ないじゃん」
「じゃあ、もっとましな起こし方で起こしてよね」
「分かったよ…イテテ…」
少し強く殴りすぎたかな。
「じゃあ姉貴。下で朝食の準備してるから…」
「はいはい。分かったから出てった出てった」
そう言い、弟を追い出す。
「全く、中2にもなってへんなイタズラするんだから…情けない」
僕はため息をしながらパジャマから私服に着替える。
私服とはいってもスカートは絶対に履かない。男が着そうな服を着て、下はジーズンを履く。学校の時は仕方なくセーラー服を着るが…
「由美ーーご飯よ。早く来なさい」
お母さんが僕を呼ぶ。
「ちょっと待って。もうすぐいくから」
そう言い、みんなが食べてるリビングに向かった。
「あら由美、またジーズンを履いてるの!せっかく可愛いスカートを買って置いておいたのに」
「お母さん。僕に気を使わなくていいから……余計なお世話だよ」
お父さんは会社でほとんど家に帰ってこない。だいたいは弟と、お母さんと僕の三人でご飯や家族の会話をする。
「姉貴」
大介が焼けたばかりのトーストをかじりながら言う。
「姉貴って、男を好きになったりしないの?」
は!?
何をいきなり…
「お母さんもそれが気になるのよー」
お母さんまで…余計なお世話だよ。
「好きになれないね」
率直にその問いに答えた。
そう答えた瞬間、大介とお母さんはお互い目を合わせ、また僕に目線を写した。
「姉貴ってさー。弟の俺が言うのもなんだけど、スタイルは結構いいし、顔も美人で、もったいないなーと思うんだけど…」
「そりゃー、私の子だもの。あとはその心さえ治してもらったらねー」
その言葉に僕は少し頭にきた。
「僕は男。それでいいじゃん」
少し怒鳴り声でいいはなった。
「胸は…」
お母さんが自分の胸を指し、私に言った。
「由美はもう、高校1年生でしょう。あと少しで2年になるのよ。男の子も女の子も思春期があって体の発達も明らかに違ってくるのよ。その胸は明らかに女の子の印でしょ」
それは今までお母さんが言わなかった事だった。言い返したかったけど言い返せなかった。確かにこの胸は男子より大きいし、女の証。でもそれでも自分は男なんだ。そう信じるしか方法がなかった。
なのに…
なのに…
「食べる気をなくした……ごちそうさま」
僕は皿をその場に残したまま自分の部屋に戻った。 |