第十九話[嫉妬とその真実と否定]
あの気分はなんだったんだろう?
僕はお風呂に入り終わり、ホカホカの体が冬の冷気に冷めないようパジャマの上にジャージという異様なスタイルを着こなしながらベットに横たわった。
あの時、浩が本命チョコとラブレターを貰った時に一瞬僕の心の中が嫉妬したような感じになったが、今になってもその時感じとった思いが心の中から取れないような気がする。
「チョコ…どうしよう…」
渡しそびれたチョコレートを鞄から取り出す。
「ま!でも、どうでも良かったチョコだし……食べちゃおうかなーー」
……どうでもいいか……
自分で言っておきながら何か違うような気がする。
僕はチョコレートを再び鞄に戻し深いため息をついた。
「姉貴ーー!!」
部屋の外からいきなり大介が叫ぶ。
「何か用ーー??」
「原田さんって人から電話だよ」
「え!わ、分かった。今行くから」
僕は急ぎ足で一階に降りて大介から受話器を受け取る。
「もしもし、由美ですけど」
「あ!由美。どうだった?チョコレートをちゃんと中原君に渡したか?」
それを聞く為にわざわざ夜の十時に電話を…
僕は受話器の向こうにいる原田さんに聞こえるくらいのため息を一回ついて、その場面の事を原田さんに聞いてもらった。
「…と言う事なんだけど」
「……」
なぜか沈黙する原田さん。受話器の向こうからは小声でなにか呟いているようにも聞こえる。
「よーうーすーるーに」
沈黙を解き放ち原田さんが、なにやら怒ったような声で言い放つ。
「それって告白よね」
まぁ、そうなるけど。
「由美はなんとも思わないの?その高木聖子って奴に中原君が取られちゃうかも知れないんだよ!」
「なんで、僕がそんな事の心配なんか…」
「ふーん。……由美その時……嫉妬とかしたでしょ」
ドキ!
その言葉を聞き黙りこむ僕。
「図星ね」
《クスッ》と原田さんの笑い声が聞こえ僕は顔が赤くなる。
この人の前では嘘はつけないな。
「そうだよ!少しは嫉妬してるよ!でもなんで僕がこんな思いをしなきゃなんないのさ!」
つい心で思っていた事が口に出てしまう。
勿論、親友である原田さんだからこそこんな事が言えちゃうのかも知れない。
「由美…」
僕とは正反対に落ち着いた声で原田さんはゆっくりと答えた。
「私ね。最近の由美は少し変わってきているなー、と思っていたんだ。チョコレートを中原君に渡すように言ったのも、いつもの由美と何か違うと思っていたから。そして今の言葉ではっきりしたわ。あんたは中原君の事を幼なじみや親友としてではなく恋愛対象として見てるんじゃない?」
電話の奥から聞こえてくる原田さんの真剣な言葉が僕の心にひしひし伝わってくる。
「恋愛対象?」
「そうよ。用するに中原君の事を親友や幼なじみとしての好きではなくて異性として好きなんでしょって言ってるの」
「ハハハ!まさか…」
会話の流れがおかしいよ。僕は確かに浩の事が好きだけどそれは良い友として好きなだけで…
僕は自分の事を男と思ってるし…
「笑ってごまかしてもこの私はごまかせないわよ。つまり由美にも女の心が芽生えはじめてるって事よ」
…女の心…
…僕に…まさか…ね
「そういえば由美ってさーー。この前の、〇〇〇商店街で由美のミニスカート姿を見たんだけど。確か中原君とも一緒だったでしょ」
《ブハーーー!!》
僕は思わず声を吹き出してしまった。
「原田…さん、あの場にいた…の?」
「たまたまね。声をかけようと思ったんだけど途中で見失っなちゃって」
あの姿を見られたのかーーー!!
めっちゃ恥ずかしいよ!
「あの服装は女の私でも《キュン♪》となりそうな格好だったわよ。それに…」
「それに?」
「お似合いのカップルのようにも見えたけどなーー」
え!カップル?
僕と浩が!!
僕はその言葉の後になんて答えればいいか迷ってしまった。そして、
「僕はやっぱり心は男なんだよ。だから…そのー、…なんていうかー」
その言葉に原田さんは何かを納得したように喋りはじめた。
「分かったわ!もう私からは何も言わないから。由美の心が男であろうと女であろうと由美は由美だもんね」
「…ありがとう」
親友からの嬉しい言葉に僕は心から何か救われるような感じがした。
「あ!でも中原君には明日にでもちゃんとチョコレートを渡しなさいよ。今までの感謝としてのチョコなんだから。そ・れ・とその中原君に本命チョコとラブレターを渡した女の子には要注意ね」
「え!なんで」
「えーと、だってもしその高木聖子と言う人と中原君が付き合ったら多分、由美はもう中原君とは一緒にスポーツや勉強などはあまり出来なくなると思うよ。男はねー、女が出来たらそんな風になるものなのよ」
なんか奥が深い愛の話を聞いているような気がする。でも確かに、
「それは嫌だ!」
「そうよ!その意気よ由美。まぁ、その女に浩が奪われないように気をつけたまえ♪」
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この後違う会話で盛り上がり、かれこれ合計二時間も喋っていた。
もう深夜の0時を回っているよ。
つい話が盛り上がっちゃったな。
特に商店街の服装についてが…
あの服は今だに僕の部屋の押し入れの中に保管をしているけどね。
まぁ、それは言いとしてチョコレートは明日浩に渡そう。一日遅れのバレンタインもまたいいかもね。
そして僕は受話器を置き、自分の部屋に戻っていった。
「女の心ねーー」
ベットに寝ころびながら僕は静かに呟いた。 |