第十話[頭の中に浮かぶ浩の顔]
寒い教室に冷たい机。公立高校なので暖房はなし。
唯一の暖かさといったら生徒達の体温の温もりだけ…
私立高校は暖房が効いてて暖かいんだろうな。
今僕は、体育の授業が終わり体操服からセーラー服に着替え中。
今日は運動場いっぱいに雪が積もっていて、見た目は綺麗なのだけれどはっきり言って寒いとしか言いようがなかった。
かき氷にして食べちゃいたいくらいのフワフワした雪だったけどね。
《はー、寒!》
《さーむーいーよ》
着替え中の女子達はみんな足を《ブルブル》いわせている。
ちなみに男子達は体育館にあるロッカーで着替えをしている。
「ねぇ、由美」
いきなり誰かが僕の後ろから声をかけてきたので少しびっくりしてしまった。
「あ、何?原田さん」
僕の目を《ジー》と見つめた後、原田さんは何かを納得したように言葉を返した。
「由美って…何か変わったよね」
「え?何が…」
質問の意味がいまいち分からない。
「な〜んか違うのよね、今までと。いよいよ由美も恋の季節かな」
「な!何を…僕が恋なんてするわけないじゃん。知ってるでしょ、僕の性格」
なぜかは分からないが顔が真っ赤になってしまった。
「あ!顔がトマトのように赤くなってる!図星じゃないの〜」
「違うってば!僕に限ってそんな事……そんな…」
言葉が詰まってしまう。言おうとするのだがなぜか言葉が出てこない。
そして、着替え終わった女子達が僕達の会話を聞いていたのだろう。
《由美も女の子ー♪》
《ヒュー♪ヒュー♪》
《私も男をゲットして冬のデートをしたいなー》
会話がもう僕の恋愛の話とか、冬のデートをどうするとか…
僕は興味ないのに…
ないはずなのだけれど…
なぜ、浩の顔が僕の頭に浮かんでくるのだろう?
「ま、男の子としての由美もいいけど、やっぱり女の子としての由美も見てみたいわ」
僕の頭をポンポン叩きながら原田さんは次の授業の準備をし始めた。
このクラスの人達のほとんどは僕の《心の病気》…と言っていいのかな。それを理解してくれている。でも中には、ほかのクラスの人達で僕の事をからかってくる人達もいるのも事実。僕がその事で心に傷をおったときなど、真っ先に声をかけてくるのが原田さん。そして、それを理解してくれる人達。だから僕はこうして学校に堂々と胸を張って行けるのだろうと思う。
《あ!男子達が帰ってきたわよ。みんな早く着替えて》
一人の女子が着替え終わった男子達がこちらにくるのを確認しながら、みんなに合図をする。
まぁ、女子の見張り役っぽい感じ。
男子:《おーい、もう着替えたかー》
女子:《もうちょっと待ちなさいよ。覗いだらぶち殺すから》
男子:《…こえーな。今の女子って》
外の男子がヒソヒソとほかの男子と喋ってるつもりらしいが、はっきり言って普通に聞こえてます。
女子:《何か言った!》
男子:《何も…》
まぁ、いつもこんな感じの明るいクラス。だから僕もこのクラスに馴染めるのだろう。
しかし、さっきの恋愛の話の時に浩の顔が出てきたのは一体… |