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やりすぎな彼女と乙女みたいな俺 作者:ジュゲ
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第四話 マウンテン

 メソの家は大家族だ。
 今は二十八人だっけかな?

(どこかの部族かよ!)

 いかん、心の中で突っ込んでしまった。
 改めて凄い数。
 高校の時は十八人ぐらいだった気がするから絶賛増加中。
 メソも正確には把握していないっぽい。
 他は海外で暮らしており日本にいるのはメソぐらい。
 思えばあまりメソのことを知らない。
 昔は女子みたいな弟もいた。
 これがまたメソにてクソ可愛い。
 ヤツなら掘れる。
 それにしても世界は広い。
 何が凄いって、
 メソのオトンはそれだけヤレるってことだし、
 養えるってことだし、
 何より、それで問題がないってことだ。
 日本では一人浮気しただけでもさらし首だ。
 社会的に抹殺されてしまう。
 俺なんかまだ一人とすらヤッてないのに。
 世の中はどうしてこうも不公平なんだ。
 何人かは面識がある。
 日本の家をセーフハウス的に使っているのか代わる代わる泊まりに来るようだ。
 中でもマウンテンとは俺も馴染みが深い。

 身震いした。

 マウンテンは彼女のお姉さんで格闘家。
 プロになったようでオフの時は必ず日本に帰ってくる。
「マウンテン元気?」
「マウンテン?」
「ほら、人類よりはゴリラに近いお姉さん。三つ上だっけ」
「あ~キャシー姉さん。それはもう元気よ。って!そんな酷いこと言ってー殺されるよ」
 メソは笑っているが大袈裟じゃない。
 何度か殺されかけた。
「そうかキャシーって言ってたか・・・」
 メソとは似ても似つかない。
 遺伝子マジック。
 お母さんが違うそうだから無理もないか。
 キャシーは一言で例えるなら マウンテンゴリラ だ。
 だから俺の中ではマウンテンで通っている。

「実は ゴリ星人 なんです」

 そのうち言い出すに違いない。
 恐らく今は地球侵略の機会を伺っているんだ。
 彼女は人類を欺いている。
 俺は騙されないぞ!

「なに~キャシー姉さんがタイプだったの?」

 寒気がした。

「メソ・・・冗談でも言うもんじゃないぞ」
「なんで?」
「マウンテンは人類を・・・」
 パッチリとしたまん丸な目。
 美味しそうな唇。
 プルプルしてる。
 お前の唇はグミキャンデイーか!
「いや・・・今CMでゴリラが映ったもんだから、否が応でも思い出す」
「チーちゃん!」
「すまん。俺は・・・ゴリラは・・・好きだぞ」
「もー」
 プンスカしている。
 可愛いいの~可愛いのぉ~。
 頬張りたいぐらいだ。

 今日は俺のアルバイトが休み。
 家でゴロゴロしていたらメソが転がり込んできた。
 俺の何がいいのか。
 全くわからん。
 なんで俺がいるのを知っているのか必ずやってくる。

「そうだ、明日うちに来るけどね」

「誰が?」
「お姉ちゃん」
「パリコレでモデルやってる姉ちゃんか!」
「違うよ?」
「じゃあ、この前見せてもらったデンマークの」
「それ妹」
「そっか・・・」
「だからキャシー姉さん」
「・・・・キャシー?誰だそれ」
「も~、今、話していたじゃない」
「いや俺は何も言ってないぞ・・・」
「チーちゃんに会いたいって」
「ご冗談を・・・・」

 いそいそと身支度を始める。

「え、どうしたの?どこか行くの」
「実家に帰らせて頂きます」
「なんでよー」
 あーなんてことだ。
 ゴリラがTVに映ったばっかりにマウンテンを思い出すとは。
 俺が召喚してしまったのか。
 何時からそんな能力を身につけたんだ。
「チーちゃん、姉さんのこと嫌いなの?・・・」
 メソ・・・アレを好きな人類はお前ぐらいだぞ。
 とはいえ俺も嫌いではない。
 動物園に行ったら必ずゴリラは見に行くし。
 ただヤツがじゃれつくと首の骨が折れそうになるのが問題だ。
 動物天国のマツゴロウさんも熊に愛撫されて死にそうになっただろ。

(人類と一緒にはいられないんだよ)

 以前はメソに呼ばれて家にも遊びにいったもんだがマウンテンが原因でやめた。
 何せ遭遇率が高い。
 普段は海外遠征で飛び回っている癖に俺が行くといやがる。
 動物園に行けば自ずとゴリラにも会うようなものだ。
 マウンテンは弱いものが大嫌い。
 世の中を自分より強いか弱いかで二極化して見ている節がある。
 メソの家で最初に会った時の衝撃は忘れられない。
 軽いトラウマだ。軽い?
 目があった瞬間に襲いかかってきた。
 想像してごらんよ。
 家の中で雌のマウンテンゴリラと目が会った次の瞬間飛びかかられたら。
 トラウマだろ。
 メソが撃退してくれたお陰で今も生きているようなものだ。
 信じられない事実だがメソはマウンテンより強い。
 力づくでねじ伏せようとするマウンテンをスルリスルリと軟体動物のようにすり抜け、ことごとく急所を突き悶絶させていた。
 だからマウンテンはメソが好きらしい。
 彼女がアーユルヴェーダにしょっちゅう通っているのも判る気がする。
 身の安全の為だろう。
 マウンテンは生粋の格闘家というかゴリラそのもの。
 メソとじゃれあっている様はほとんどゴリラと襲われる美人ナチュラリストのよう。
 最初に見た時はショックの余り軽く漏らした。
 暫くは隙あらば俺を襲おうと伺っていたようだがメソがいつも守ってくれた。
 俺にとってメソの家はアマゾンにTシャツ短パンで行くぐらい危険である。

「キャシー姉さんは純粋だから」

 マウンテン曰く、強いか弱いかは戦わないとわからないとのこと。
 だから襲いたいらしい。
 襲って主従関係をハッキリさせないと不安だそうだ。
(やっぱりゴリラだよな~)
 てか、ゴリラの方が賢いかもしれない。
 むやみな暴力は振るわない。
 対して彼女は無闇な暴力しか振るわない。
「やっぱりマウンテンだな・・・」
「日本では純粋のことをマウンテンって言うの?」
「ん~・・・ま~・・・俺的には・・・」
(マウンテンゴリラ=野生動物=純粋)うん、間違ってない。
「日本語って難しいね」
「二人だけの秘密だよ。特に姉さんには絶対に言っちゃ駄目」
 じゃないと俺が殺されちゃうからね。
「言ってもわからないよ。お姉ちゃん日本語全然だから」
 そう。
 彼女は日本語がまるっきり解らない。
 しかも英語ですらない。
 あれは何語なんだ?テレビでも聞いたことがないぞ。
 大陸のニュアンスだ。
 二回目に遭遇した時、「ハ、ハロー」って話しかけたら、また襲いかかってきた。

 初めて覚えた日本語がなんだったか。
「ヤリタイ」か。
 しかもメソを指して言ったのも衝撃的だ。
 俺はこの瞬間、腰が抜けそうだった。
 当然ながら軽く漏らす。
 メソ曰く彼女はバイらしい。
 つまり両刀使い。
「お姉ちゃんって面白くて姉妹ではヤレないって何度言っても聞かないんだよね」
 手を叩いてゲラゲラ笑えるオマエが凄い。
 俺ならそんなこと指さされて言われた日には直ぐさま失踪するわ。
 理由をメソ経由で聞くと、
 メソが強くて心から尊敬しているから、
 その強さにあやかる為にもヤリタイらしい。
 意味がわからん。
 映画で見たぞ。
 宇宙人が人間の女性にナニを植え付けて更に仲間を・・・。
 間違いないヤツは宇宙人だ。

 二人が揃うと何かにつけて取っ組み合いになる。
 いつだったか、路上でファイトしだした時は警察まで登場。
 ゴ○ラ対モ○ラの戦いに丸腰の人類が出来ることなんて何もない。
 俺は犠牲者を減らす為の努力に徹した。
 通報者のコメントがまた面白い。
「何かに襲われている女の子がいます!はやく助けに来て!」
 UMAかよ!
 ファイト中、俺はその可愛らしい通報者に終始睨まれ挙句に罵倒された。
 女ってヤツはどうしてああも無茶を言う。
「彼女なんでしょ!助けてあげて!」
 無理だから。
「あなた男として恥ずかしくないの!」
 恥ずかしくありません。
 何せリアルに殺されかねない。
 表ざたになっていないけどマウンテンは軽く数人は病院送りにしている。
 といっても彼氏彼女のようだから問題にならないようだ。
 メソの話だと、やってる最中に興奮し過ぎて力加減を誤ったらしい。
 この話を聞いた時も軽く漏らした。

 警察官が三人駆けつける頃には既にメソがマウンテンを気絶させ収束。
 あの時の警官の顔ったらおかしかったな~。
「えーっと・・・・あれ?」みたいな。
 一着数十万は下らないブランドのドレスが二人ともボロ布のようになっていた。
 しかも白目を向いているのがマウンテン。
 馬乗りになって可愛くテヘペロしている白い太腿あらわな彼女がメソだ。
「ファッ!?」ってなるよな。

「お姉ちゃんチーちゃんにまた会いたいって」

「そのうちな(永遠に)」 
 我ながらよく生きていたと思う。
 それもこれもメソのお陰だ。
 マウンテンの俺に対する見る目が変わったのも彼女あってのこと。
 自分がいない時に万が一襲われたら大変だということで洗脳したらしい。
 だから彼女の中では俺は相当な武術の達人になっている。
「嘘いっちゃった~」
 あの時の可愛いさったらなかった。
 ペロペロしてやりたい。
「彼に挑戦したいのなら私を倒してからじゃないと。私も勝てないんだから。挑戦権からいうと私が先でしょ?」
 そう言って刷り込んだらしい。
 格闘界のルールなら驚くほど守る。
 なんでも野球に例えないと解らない人みたいなものか。
 裏を返すと、万が一にもメソが敗北した日には、俺の命日となるだろう。

「あ、お姉ちゃんだ」

「$&’&E(&’)(%))%T%##”#”&$%’&%!!」
「びっくりしたーチーちゃん、今の何語?初めて聞いた」
 メソは恐らく三カ国語以上喋れる。
 マウンテンと会話が出来るのはメソと母親だけらしい。
 とび起きた俺は窓を明け周囲を見渡した。
 いない。
 バットを持ち、ゆっくりと戸を開ける。
 いない・・・。
「どうしたの?」
 俺の後ろから顔だすメソ。
「どこにいるって?・・・」
「誰が?」
「今おまえ、お姉ちゃんって・・・」
「メール」
「はは・・・そうか・・・、そうきたか・・・」
 どっと疲れた。
 いかん、また少しチビッたな。
 息子が嘘みたいに存在感を掻き消す。
 本能だろう。
(私は女です!私は女です!私は知りません!)みたいな。

「あのさー」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ?」
「マウンテンが会いたいとか言うんだろ」
「すご~い!」
「だから駄目だ」
「もうすぐ空港つくから迎えに来てって」
「明日じゃないのかよ!」
「そうみたい」
 ゴリラだから身勝手なのか。
 身勝手だからゴリラなのか。
 予定っていうのがわからないのかアイツは!
 とにかく逃げないと・・・。
「チーちゃんも・・」
「今はそれどころじゃない!」
 えーとパンツ、パンツそれと、パジャマと・・・。

「会っておいた方がいいよ・・・」

 鳥肌が立った。
 慌てふためく俺が一瞬で目が覚めるようなメソの沈んだ声。
 俺はこの声を「悪魔の福音」と言っている。
 メソがこういう喋り方をする時。
 必ず予言通りになる。
 前に何回かブッチしたがとんでもない目にあった。
 それ以来、俺は彼女がこのモードになった時、必ず聞くようにしている。

「そ・・そっか・・わかった・・・」

 メソ快心の笑顔。

「お姉ちゃん喜ぶよ!」
 お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許し下さい。
+注意+
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