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虹の傭兵団チーム”紅”視点

今回残酷な描写があります。

~ リンデル視点 ~


 僕は今、荷馬車に乗せられてカロントから北へ向かっていた。


 今日の昼過ぎに、南の森からアヴォロゲリアスの群れが北上して来て、カロントの町を襲撃した。


 事の発端は2日前からだ。


 サラ様との依頼で妙に害獣との遭遇が少なかったことを怪しんだロイさんが情報を集めた結果、カロントの南側で害獣の数が減っているらしいことが分かった。

 胸騒ぎがしたロイさんは正式に調査するようギルドマスターに意見したが、ギルドマスターが重い腰を上げることはなかった。


 そこで、ロイさんは町役人に掛け合って、カロントの町に駐在している領軍を動かそうとした。

 しかしそこでも相手にされず、それでも連日交渉し続けた結果、ようやく今朝になって調査が行われることになったのだ。…もはや遅過ぎたのだが。


 領軍が南の草原を調査し、森に差し掛かった時だった。

 南の森は、危険度はそこまでではないが厄介な害獣が多く、わざわざ行くには何の旨味もない場所なので、傭兵たちも普段滅多に立ち寄らない場所だった。

 だから気付けなかったのだ。そこが既にアヴォロゲリアスの根城になっていたことに。


 不用心に森に入り込んだ領軍に、アヴォロゲリアスの群れが襲い掛かった。


 領軍は、町の外壁を利用した戦闘が基本であり、森での害獣との戦闘経験は浅かった。

 そんな彼らに、ゲリアス種の中でも最強と言われるアヴォロゲリアスの群れに対抗出来るだけの力はなかった。


 調査に出ていた領軍は文字通り全滅、誰1人として外壁まで辿り着くことは出来なかった。

 いや、それだけならまだ町の方までは被害が出ずに済んだはずだった。


 アヴォロゲリアスの群れに襲撃された領軍が町の方まで逃げ延びてきた結果、アヴォロゲリアスの群れがそれを追いかける形で町まで来てしまったのだ。

 カロントの町は高い外壁とそれを囲う堀があり、門まで辿り着くには跳ね橋を通る必要がある。本来ならそれらが害獣の進行を妨げるはずだった。


 だが、逃げて来た仲間たちを救うため、外壁を警備していた領軍が跳ね橋を下したままにしてしまったのだ。

 結果、その跳ね橋を通ったのは領軍ではなく、アヴォロゲリアスたちだった。

 おまけに跳ね橋を上げるための縄を噛み千切られた結果、跳ね橋を上げることすら出来なくなった。


 騒ぎを知った僕たちが到着した時には、ほとんど南門は破られ掛けていた。


 僕たち傭兵ギルドの数少ない“はぐれ”と、神術師である町役人が協力して、堀の水を利用してアヴォロゲリアスたちを堀の外まで押し流し、跳ね橋を燃やしたおかげで、なんとか町の中に奴らが入り込むことは防げた。


 だが、それがただの時間稼ぎにしかならないのは明白だった。

 奴らは泳げるし、籠城してどうにかなる相手でもない。

 飛行出来ない普通の害獣なら、特別な理由でもなければ外壁と堀に守られた町をわざわざ襲撃することなどない。

 あったとしても、反撃されてある程度被害が出れば引くだろう。


 しかし、奴らゲリアス種にその理屈は通用しない。

 奴らは一度戦闘が始まったが最後、自分たちか相手、どちらかが全滅するまで戦いを止めない。

 事ここに至っては、アヴォロゲリアスとカロントの住民、どちらかが皆殺しにされることでしか戦いは終わらない。



 僕たち神術師と弓兵たちが時間稼ぎをしている間に、ギルドマスターと町役人によって作戦が決定された。


 先ず、伝書鳩で周辺の町に増援を求める。

 この町の残存兵力では勝ち目が薄いので、増援が来るまでの時間稼ぎを第一目標として戦う。

 即席で門を補修し、遠隔攻撃でアヴォロゲリアスたちを南門に釘付けにし、北門から順次住民を避難させる。

 遠隔武器が尽きたタイミングで、一部の傭兵が攻撃部隊として東門と西門から出撃し、群れを左右から挟撃する。

 その場合も町への侵入の阻止を最優先し、攻撃部隊には増援を送らず、残った防衛部隊は門を死守する。


 つまり、東西門から出撃する攻撃部隊は捨て駒だ。

 総力戦ですら勝ち目が薄いのに、門を死守する防衛部隊に人数を割いていては絶対に勝ち目はない。


 だからこそ、そんな捨て身の作戦が決行されないように、僕たち遠隔攻撃部隊がなるべく時間を稼がなければならなかったのだ。

 増援が来るのはどんなに早くても真夜中になる。ならば、最低でも夜になるまでは僕たちが粘らなくてはならなかった。

 なのに…


「皆……っ!!」


 神力が枯渇してろくに動かない身体を必死に動かそうとする。


 夕方になり、ついに僕の神力は切れた。

 そして、そのまま仲間たちの手によって馬車に放り込まれ、町の住民と共に北門から逃がされたのだ。


 僕を見送った仲間たちの表情が脳裏をよぎる。

 ずっと一緒にいた仲間だから分かる。あれは…死を覚悟した顔だ。

 そして、声には出さずに、せめて僕だけは逃げろと言っていた。


 皆の言いたいことは分かる。

 たしかに神力が切れた僕に出来ることなど何もない。

 でも、それでも、本音では皆と一緒に最後まで戦いたかった。


 “呪術師”と呼ばれ、貴族に命を狙われていた僕に手を差し伸べてくれたロイさん。


 家族にも捨てられ、誰も信じられなくなっていた僕の心を、優しく解きほぐしてくれたバッカスさん。


 塞ぎ込みがちだった僕を、明るく強引に外の世界に連れ出してくれたニックさん。


 いつもそばにいて、ずっと周囲の悪意から“はぐれ”である僕を守ってくれていたデリクさん。


 大切な仲間である彼らを、大好きな兄貴分たちを置いて、逃げたくなどなかった!


「行か…なきゃ……っ!!」


 皆の気持ちを踏みにじることになっても構わない。


 皆がいなくなって、それでもなお生き続けることなんて出来ない。


 そんなことになるくらいならいっそ…皆と一緒に死にたい。


 とても自分の身体とは思えないくらい、全く力が入らない。

 それでも無理矢理腕を動かし、上体を起こす。


 こうなったら這ってでも戻ってやる!と、もうだいぶ遠くになったカロントの町を睨んで…


「あれは……何?」


 西の空から飛来する、白銀の流星が目に飛び込んで来た。


 遠目でもはっきりと分かる強大な神力を纏うそれは、凄まじい速度でカロントの上空まで飛んで来ると…


 1つの恒星と化し、カロント上空を光で埋め尽くした。




~ ロイ視点 ~


「はあっ!!」


 跳び掛かってきたアヴォロゲリアスを避けつつ、その横腹に切り付ける。

 しかし、神具の剣を以てしても、内臓まで達する深手を与えることは出来なかった。


 戦いが始まって、もうどれくらい経ったのか。

 素早く周囲を見渡すが、最初は400人はいたはずの攻撃部隊は、既に半分も残っていなかった。

 対して、アヴォロゲリアスはまだ200体以上いる。

 1対1でも厳しいのに、数の上でも上回られてしまった。


「バッカス、右だ!」


 共に攻撃部隊に加わったバッカスに警告を飛ばす。

 素早く反応したバッカスが、右から襲い掛かって来たアヴォロゲリアスの爪を円盾(ラウンドシールド)で逸らすが、勢いを殺し切れずに吹き飛ばされる。


「バッカス!!」


 倒れ込んだバッカスに追撃を加えようとするアヴォロゲリアスに向かって突進し、その勢いのまま、その腹に剣を突き刺す。


「グオオッ!!」


 根元まで剣を突き刺されたアヴォロゲリアスが暴れるが、それに構わず、全力を込めて剣を動かし、その腹を引き裂く。


「グガアアアッッ!!!」


 致命傷を負ったことで更に暴れるアヴォロゲリアスから、素早く剣を抜いて距離を取ると…


「リーダー!!」


 バッカスの声と、直感的な危機感に従い、素早く背後に向けて剣を振りつつ、身を翻す。

 と、先程切り付けたアヴォロゲリアスが大口を開けて迫って来ているところだった。


「くっ!」


 ガキンッ!という音を立てて、私の剣がアヴォロゲリアスの牙に捕らえられた。

 素早く剣を取り返そうとするが、アヴォロゲリアスが剣を咥えたまま大きく首を上に動かしたせいで、剣ごと吊り上げられてしまう。


「ぬおっ!」


 止む無く剣を手放そうとしたがその前に、


「おらぁっ!!」


 バッカスが先程私が付けた傷口に剣を突き込んだ。


「グオッ!」


 堪らず叫び声を上げたアヴォロゲリアスから剣を取り返し、そのままがら空きの喉に向かって突き刺した。


「グ、ゴボ!」


 倒れるアヴォロゲリアスから離れ、バッカスと背中合わせになる。


「怪我は大丈夫か?」

「軽い打ち身っすね。問題ないっすよ。それよりそろそろ剣が限界っす」


 バッカスの剣は私の神具の剣と違って神術が宿っていない。これだけ戦っていれば無理ないだろう。

 どこかにまだ使える剣が落ちていないか、周囲の敵の動きを警戒しつつ探していると、バッカスが悲鳴のような声を上げた。


「リーダー!!門が破られてる!!」

「何っ!?」


 慌てて横目で確認すると、一部のアヴォロゲリアスたちが次々と町の方に入って行くのが分かった。


「くっ!」


 いつの間に破られていたのか。何にせよ早過ぎる。

 まだ住民の避難が完了していないだろう。

 北門にはまだ避難待ちの住民が残っているはずだ。そこに食い付かれれば、避難者の列全てが攻撃対象となり、最悪の事態となる。

 だが私たちに出来ることはここで戦い続けること以外にない。

 増援に向かおうにも、鎧を着たままでは堀を越えることが出来ないからだ。


(デリク…ニック……頼んだぞ)


 町の中に残った仲間たちに思いを飛ばしていると、不意に背中合わせになっているバッカスの身体がふらりと揺れた。


「バッカス…?」

「…すんませんリーダー…俺に構わず逃げて下さい…」


 背中にバッカスの体温を感じなくなると同時に、ドサッという音がした。


「バッカス!」


 慌てて背後を見ると、バッカスが横向きに倒れていた。

 その頭から頬に掛けて、血が流れているのに気付く。


「くそっ!」


 先程吹き飛ばされた時に頭を打ったのだろう。

 止血をしようとするが、バッカスが倒れたことで周囲のアヴォロゲリアスが包囲を狭めて来ていた。


「チッ!」


 舌打ちしつつ、バッカスを庇って剣を構える。

 仲間を見捨てるなど考えられなかった。

 こうなったら向かってくる奴を片っ端から切り捨ててやる!と覚悟を決めたところで…


 上空で凄まじい光が炸裂し、圧倒的な存在感が降り注いだ。




~ バッカス視点 ~


 頭がくらくらする。

 何とか身体を起こそうとするが、腕に力が入らず、仰向けに転がってしまう。

 右手を顔に触れさせると、ぬるりとした血の感触がした。


(やばいっすね…頭打ったのに気付かないとか……)


 ぼんやりと霞む視界に、自分を庇うリーダーの背中が映る。


(馬鹿っすね…逃げて下さいって言ったじゃないっすか……)


 もちろん、リーダーが逃げないことくらい分かっていた。

 だが、それでも俺はリーダーには生きていて欲しかった。


 自分が足手纏いになってリーダーが死ぬくらいなら、いっそここで…


 力が入らない手でそっと懐から予備の短剣を取り出すと、それを自分の首にあてがおうとして……霞む視界に妙なものが映り込んだ。


 沈み掛けの夕日を背に、何か大きなものが飛んで来る。

 見間違いでなければ、それは人のように見えた。

 その身に纏うローブが、沈む夕日の最後の光を受け、白銀色に輝いた。


「お嬢……?」


 呆然とそう呟くと同時に、その身体から凄まじい光が迸り、霞む視界を塗り潰した。




~ デリク視点 ~


「おい!!また1体抜けて来たぞ!!」


 現在門の前では、領軍がそこらの家を壊してバリケードを作り、アヴォロゲリアスの町への侵入を防ぎ、俺たち傭兵がその後ろでバリケードを抜けて来た奴を撃退している。


 だが、即席のバリケードでは限界があり、既に10体近くのアヴォロゲリアスが抜けて来ていた。

 いや、バリケードの強度もあるが、それを守る兵士がほとんど役に立っていないのが問題だ。

 仲間が散々食い散らかされたせいか、どいつもこいつも泣きそうな表情で、すっかり腰が引けてしまっている。


「この腰抜け共が!!」


 悪態を吐きつつ、抜けて来たアヴォロゲリアスの対処に向かう。だが…


「なっ!?」


 アヴォロゲリアスは戦闘意欲が旺盛なため、こちらから向かって行けば普通はこちらに注意を向ける。

 だが、今回抜けて来た奴は違った。


 そいつは俺たちには目もくれず、バリケードを守っていた兵士に背後から襲い掛かったのだ。


「ぎぃやあぁぁーーーーっ!!や、やめっ、ああ!!だ、誰かたす」


 完全に無防備だったその兵士は、鋭い爪で身体をバリケードに磔にされ、止める間もなく頭を噛み千切られた。


「う、うわあぁぁーーーーっ!!」

「い、いやだぁぁーーーーっ!!」


 それを見て完全に心の防波堤が崩れたのだろう。


 バリケードを守っていた兵士たちが、我先にと逃げ出した。


 最終防衛ラインを築いていた傭兵たちを押し退け、遮二無二逃げて行く。


「馬鹿野郎っ!!」


 慌ててバリケードを支えに行こうとするが、前から来る兵士が邪魔でなかなか前に進めない。

 そうこうしている内に、バリケードの一角が外から弾け飛んだ。

 前を向いていた傭兵たちはその破片を防げたが、背を向けて走っていた兵士の何人かは背後から飛んで来た破片の餌食になった。


「くそっ!」


 バリケードに開いた穴から、次々とアヴォロゲリアスが侵入して来る。


「てめぇら気合い入れろ!!絶対通すんじゃねぇぞ!!」

「「「「「おう!!」」」」」


 周囲の仲間たちに声を掛け、侵入して来たアヴォロゲリアスたちに向かって行く。だが…


「何っ!?」


 奴らはまたしてもこちらに興味を持たず、逃げて行く兵士たちの方に向かって行った。


「くそっ!狩りのつもりか!?」


 傭兵たちの間を駆け抜け、逃げる兵士たちに襲い掛かる。

 こうなってはもうどうしようもない。アヴォロゲリアスの足に人間の足では決して追い付けないし、逃げることも出来ない。


「ぎゃあっ!!」

「ごぶっ」

「いやだぁぁーーっ!!」


 逃げ遅れた者から次々と食い殺されていく。


「くそっ!!」

「デリクさん!また来ますよ!!」


 兵士たちを襲っている奴らを背後から強襲してやろうとしたのだが、穴から新手が現れたのを見て門の方に向き直る。


「くそっ!くそがっ!!」


 兵士たちが下手に逃げたせいで、町の奥まで奴らの侵入を許してしまった。

 下手をすると何体かはこのまま町に残っている住民を襲うだろう。

 もはや最終防衛ラインは突破された。

 後はもうこれ以上数を増やさないように努めることしか出来ない。


「うおおおおぉぉーーーーっ!!」


 雄叫びを上げ、新手に向かって突っ込んで行く。


 そこからはもう無茶苦茶な乱戦だった。


 陣形も隊列も何もなく、誰も彼もただひたすらに目の前の敵に向かって武器を振るう。


 そうして1人、また1人と力尽きて倒れて行った。


「はあ、はあ…」


 乱戦状態になってからどれくらい経ったのか、仲間たちは皆満身創痍で、俺ももうメイスを握る手に力が入らなくなってきた。

 愛用の大盾は、何度も奴らの爪や牙を防いだせいで、すっかりボロボロになっていた。


「くそっ、まだ来るのかよ…」


 悪態にも力が入らない。

 万全の状態ならともかく、今の俺では奴らの骨1本折ることも出来ないだろう。完全に攻め手が尽きた。


 だが、それでもやることは1つしかない。


「ふっ、俺は最前衛の盾役だ。後ろに守るもんがある以上、最後まで立ち続けるのが俺の仕事だ!」


 右手のメイスを捨て、最後の気力を振り絞って大盾を両手を持ち上げる。

 新たに侵入して来た2体の襲撃に備えて両手で大盾を構える。攻撃は他の仲間に任せ、俺は最後まで盾役に徹する。

 そう覚悟を決めたが、2体のアヴォロゲリアスが襲い掛かって来ることはなかった。


 突然、2体揃って弾かれたように外壁の上を見上げたのだ。


 何事かと疑問に思った一瞬後には、その理由が分かった。


 外壁上空から、凄まじい存在感が大瀑布のように降り注いだ。




~ ニック視点 ~


「くっそぉ…いってぇじゃねぇかこの犬っころが」


 俺は目の前のアヴォロゲリアスに向かって短剣を構えつつ、そう毒づく。


「あ、あんた大丈夫かい!?」


 後ろに庇った婆さんがそう聞いて来る。


(大丈夫なわけねぇだろが。骨まで完全にやられてんぞ。ってかほとんど皮1枚で繋がってるようなもんじゃねぇか)


 そう思うが、口にはしない。



 遠隔攻撃部隊として外壁の上から弓矢を射続けていた俺は、矢が尽きてからは避難民の誘導と、逃げ遅れた住民の捜索の任務に就いていた。

 俺の近接戦闘力は低いし、3時間以上も弓を引き続けたせいで両腕が限界だったことから、この役目を引き受けた。

 そして、病に臥せっていて逃げ遅れた婆さんを発見し、北門まで連れて行っている最中に運悪くアヴォロゲリアスと遭遇してしまった。

 しかも婆さんを庇った結果、右足を深々と爪で切り裂かれた。

 これではもう立ち上がることすら出来ないだろう。


「おい、走れるか婆さん。このまま北門まで逃げな。こいつは俺が引き付けるからよ」

「で、でもあんた…」

「いいから行けって!」


 大声を上げて有無を言わさずに逃がす。

 標的の片方が逃げたのに目の前のアヴォロゲリアスがピクリと反応するが、俺が短剣を構えて牽制すると、こちらに注意を向け直した。


「ああ、やっべぇ…俺今、俺史上最高にかっこいいかも」


 そんな軽口を叩いて、覚悟を決める。


「いいぜ、来いよ。こいつをてめぇの口ん中にぶち込んでやるからよ……っ!」


 だが、今まさに跳び掛かろうとしていたアヴォロゲリアスが、突然南の方に体を向き直した。


「なん………っ!?」


 思わず同じように南の方を見て、そこに突然出現した光の爆発に俺は言葉を失った。






 その時、地平線の彼方に太陽が沈むのと同時に、カロント上空に新たな太陽が出現した。


 神力を持たぬ者にもはっきりと見える程の膨大な神力の光を放ち、圧倒的な存在感を放つ白銀の人影に、全てのものが目を奪われた。


 逃げ惑っていた住民も、戦っていた戦士たちも、襲撃者(アヴォロゲリアス)たちですらも、等しくそれ(・・)を仰ぎ見た。


 絶望に満たされていたカロントの町に、奇跡が舞い降りた。


次回、梨沙覚醒後初の全力解放。

次回更新は月曜日までにやる予定です。

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― 新着の感想 ―
様々な視点で描かれる同一のシーン。 すなわち梨沙がエグゾー○スしてるシーン! みんながキミを見ているよ!!
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