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第11話 2の巻
まず驚いたのは声の発せられた場所が存外に近かった事、そして次に驚いたのが声を発した人物の存在感だ。

薄紫の髪を同色の髪留めで高い位置で纏め、艶やかな髪はそのまま背中を流れ腰を超えて長く続く。

悪戯っ子のように細められた瞳は、アクアマリンの輝きの中に思慮を内包し、妖艶さと無邪気さという矛盾した2つの魅力を同時に表している。

そして呉軍ではもう爆乳など珍しくないとはいえ、他とは違い完全に熟し切って妖しいと言ってもよい程の色気を醸し出す爆乳!

服装は変形のチャイナ服だが、特異なのは首元と胸を繋ぐ布地が胸元しかなく、スリーブ部分が分離型になっている事だろうか?
だから艶めかしい肩が丸見えなのに、さらに爆乳を支える布地の谷間部分には穴が空いており、美味しそうな谷間が丸見えなのだ。

また、チャイナのスリットから覗く脚には、腕に着けた分離型のスリーブとお揃いの桜色の布地を使ったストッキングが、ガーターで吊ってある。

何故こんなに存在感があり美しい人に気付かなかったのか?自分で自分が許せない!

「祭殿!?……聞いて…いたのですか…」

周瑜の赤かった顔がさらに朱に染まる。

「おお聞いていたとも!久々に昔を思い出したわ♪」

カッカッカッと笑う黄蓋-顔はリサーチ済み-をキッと睨んで周瑜が、

「祭殿には部隊の纏めと全体の準備をお願いした筈ですが!」

頑張って注意しているようだが、まだ耳が赤かったりして正直迫力が…。

「そちらは程公が抜かりなく実行しとるよ。
だからそんなに毛を逆立てるな」

子猫でもあやすように周瑜を手玉にとる。

しかしそれは火に油じゃない…、

「あなたはまたそうやって!?」

ですよね~。

先程までの照れのある怒りではなく、本気で怒り出す周瑜だが、

「わかったわかった。
説教はまた後で聞くとして…」

そんな周瑜を手慣れたようにいなして、黄蓋の視線がこちらに向く。

「今回程公に任せて来た理由はこちらなんじゃからな…」

先程までのじゃれあいで見せた楽しそうな瞳から一転、俺に向けられたのは好意的ながらも値踏みするような瞳だ。

「ワシは孫策殿の下で将軍をやっとる、性は黄、名は蓋、字を公覆と申す…」

名乗って手を差し出されたので、そんな視線を気にしていないようにしながら、

「俺が曹操の下で将軍をしている、性は神北、名を隼人、字はないんで神北とでも呼んでくれ」

こちらからも手を差しだしガッシリと握手…っ!

ギュ~~~~!!

したと思ったらアホ程力を入れて握られる。

俺だって無手で闘うのが得意な以上、握力にはかなりの自信があったのだが…正直彼女の底が見えない。

「よろしくな神北殿!」

意地で顔に出さずに握手しているが、そろそろ骨から嫌な音がしてきた。

「よろしく黄公覆殿。
しかしそんな熱い視線で見られたら恥ずかしいよ」

流石に笑顔が引きつった感があるが、俺の返答に力がスッと消えた。

「ワッハッハッハ!おぬしいい男じゃの~♪」

握手を解くと黄蓋は肩をバシバシ叩きながら破顔一笑。

「それを言ったら公覆殿もいい女ですね♪」

叩かれるのもかなり痛いのだが、こんな美人に笑顔を向けて貰えるなら安いもんだ。

「?……ぷっ!ワッハッハッハ!」

一瞬キョトンとしたと思ったら、先程に倍して-回数も力も-肩をバシバシ叩く黄蓋。

「おぬしいいの~♪ワシの真名は祭じゃ!」

「「「っ!」」」

ありゃりゃりゃ。

「俺は真名がないんでね。
隼人…と、そう呼んでくれ」

俺は何の気負いもなく真名を預かるが、周りの人間はそうはいかなかったようだ。

「「祭(殿)!!」」

「隊長!!」

黄蓋には孫策と周瑜が、俺には凪が詰め寄る。

「どうしたんじゃ2人共?」

「どうしたではありませんよ祭殿!」

「そうよ祭!いきなり真名を預けるなんて!!」

泡を食って詰め寄る2人を不思議そうに眺めて祭は一言。

「何を言っとるんじゃ?真名を預けるに足る男に真名を預けて何が悪い」

あっけらかんと一蹴。

「黄蓋殿は他軍の将軍ですよ!?」

「だからどうしたんだ凪?」

俺の方も正直何が問題なのかがわからないんで聞き返す。

「だからどうしたって……」

唖然とする凪を眺めながら俺の考えを伝える。

「真名が大切な物なのはわかるだろ?
そして今それを渡してきたのは彼女の本心だってわかれば、軍が違うだのは関係ないだろうさ」

凪の肩をポンと叩いて諭す。

「それとも真名とはそこまで大切な物じゃないのかな?」

ん?と顔を傾けて無邪気に質問する。

「え!?……そんな…真名は…」

いきなりな質問に口を濁す。

「凪、俺は前も言ったが1人の物になる気がないからな。
嫉妬するのはわかるが、俺くらいのいい男はいい女を引き寄せちまうんだ」

これ以上苛める-俺にその気はないが-気が無いので、ニシシと冗談のように笑いながら頭を撫でてやる。

「隊長……」

恥ずかしそうに顔を背ける凪がかなり可愛くて、抱き締めたいんだが流石にここでは抱き締められないからな。

「隼人はいい男じゃからな!
甲斐性さえあるなら、幾らでもいい女と付き合うのはよい事じゃ♪」

豪放磊落に笑う祭。

「俺もそう思うよ。
祭だっていい女なんだから俺以外にいい男がいて、本気で気に入ったんなら俺は口出しする気はないからね♪」

ニヤリと笑顔で応えるが、その実自分に匹敵する男はそうそう居ないと自信満々だったりする。

祭だってそうだろうが、男と女だと意味が若干違ってくるからな。

「いい男を知るのがいい女の条件じゃからな?」

「それを言ったらいい女を知るのがいい男の条件だろ?」

祭がニヤリと笑い返しながら言って来たので、俺も更に笑みを深めて応える。

2人で笑みを深めて視線でがっちり握手!

心が完全に通じ合った俺達を見て、凪と周瑜は諦めたようにため息をつく。

しかし孫策は、

「………ずるい…」

俺達の阿吽の呼吸の掛け合いを聞くと、俯いて表情を隠し呟く。

そして顔を上げて叫ぶ!

「ずるい!ずるい!ずる~い!!
隼人を気に入ったのは私の方が先なのに!」

駄々っ子のようにイヤイヤする。

しかし美女がやるとこれはこれで…。

「雪蓮何を!?」

「隼人~私の真名は雪蓮だって知ってるわよね?
祭だけなんて不公平よ!私の真名も預かって♪」

あらあら爆弾投下-特に周瑜に対しての-、周瑜注意しようとした体勢のまま固まっちゃったよ。

「いいよ。
ならば今度から雪蓮と呼ぶな♪」

しかし俺は気にせずに了承。

「…っ!隼人殿!?」

いの一番に反応したのはやはり周瑜だった。

目で『何を言っているかわかっているのか?』と『何故今回に限って!』と言っているが-凄い目力だ-、そんなもん、

「雪蓮が本気で真名を預ける気になったのがわかったからな。
それなら雪蓮位美しく強い人の真名を預からないなんて、そんな罰当たりな事言えないさ!」

という事だ。

俺の言葉に祭はうんうんと頷いてくれるが、

「そういう問題じゃ(では)ありません!」

周瑜と凪からは反発されちゃった。

「隼人殿!仮にも雪蓮は呉軍の大将よ!わかっているの!?」

「他軍の将だって問題があるかもしれないのに、他軍の大将!?隊長!お考え直し下さい!!」

奇しくも反対派2人の否定的意見がステレオで聞こえた。

「何よ~冥琳~。
もしかして嫉妬してくれてるのかしら?」

混ぜっ返す形で雪蓮が口を挟むが、

「今はそういう話じゃないのよ雪蓮…」

周瑜は言下に否定する。

「ふ~む……なら何が問題なのかな凪?」

そんな会話を聞きながらも周瑜ではなく凪に話を振る。

「何…が…と…言われ…ても…」

聞き返されるのがあまりにも意外なんだろう、凪は先程にも増して目を白黒させながら言い淀む。

多分凪の中では当然過ぎる位に当然なんだろう。

「だってさ、真名を預かるのが大切で重要な事なのはわかるよ?
しかし他の軍の人だからと真名を預かるのが悪い理由がわからん」

やれやれと首を振ってうなだれる。

「ならば逆に問うが、隼人殿は雪蓮という真名を預かるのに何の問題もないとお考えか?」

そんな俺に周瑜が怪訝そうに問い掛ける。

「だから何が問題なんだい?」

問い掛けられたのでくるりと向き直り再度同じ答えを返す。

「…真名は本当に心を許した者にしか呼ばせぬ神聖な物、男女間ならば伴侶以外にはほぼ許さないのは御存知だろう…」

「ああ、だから俺は雪蓮が本気で真名を預ける気でない時は断っただろ?」

「ならば今回は…」

「本気を感じたから預かった」

せつせつ語る周瑜だが、俺はあっけらかんと答える。

「ならばあなたは雪蓮の、祭殿の伴侶となられる気があるのか?」

言葉の端々に殺気が見え隠れするのがわかるが、

「そいつはわからんだろ?」

これも思った事をそのまま答える。

「…………」

周瑜の殺気が膨れ上がる。

「待て待て周瑜殿!
なんぼ俺が節操なしだとしても、流石に他の軍の将に手をつけて責任とらないなんて恐ろしい事はしないさ!」

今にも攻撃されそうな殺気に、慌ててフォローを入れ、

「ただ……俺からは求めなくても、相手がこちらの事情を知った上で尚求めるなら問題ないだろう?」

補足をパチリとウィンクをしながら続ける。

「……雪蓮や祭殿が自分から求めると?」

「そこまではわからんさ。
ただし、求められる位に魅力的な男であろうとは努力するけどね」

まあ何時でもイイ男であろうとは意識してるがね。

「ふむ……」

周瑜は目を瞑り思案の体勢に入った。

「隊長…ですが孫策軍は…」

会話に一応の区切りがついたので、今度は凪が秘み言を言うようにヒソヒソと声をかけてきた。

「ああ、凪の不安は雪蓮達が敵になった時のか?」

そんな凪の気配りをぶち壊し、俺は普通の声で凪の心配事に答える。

「た、隊長!?声が!?声が~!?」

うむ、パニクる凪は可愛いな~。

「大丈夫だって。
なんせそんな事……あちらさんだってわかってるんだから」

視線を凪から孫策に移しながらも独白のように言葉を紡ぎ、

「なあ雪蓮?」

最後にハッキリと問い掛ける。

「さあ…どうかしら?」

答えは疑問符だが、そんな表情していたら肯定しているようなもんだぞ。

「そして俺は……ちと特異かもしれんが…」

雪蓮の表情があまりにも楽しそうなんで少し釣られて本音を吐露してしまう。

「愛した人程自分の手で息の根を止めたいな♪
勿論敵対した場合だが、雪蓮と本気でぶつかる時があるなら……」

ここで今までのコミカルな雰囲気から一変、本気の殺気を放ちながらニヤリと笑い、

「他の誰にも譲る気はない!
この手で、自らの手で命を絶ちたいな♪」

自分で自分の声が愉悦に震えるのがわかる程の弾んだ声が喉を震わす。

「なんじゃ?ワシは蚊帳の外かい?」

「勿論祭さんも同じさ♪
それに負けたとしても愛した人にトドメを刺されるなら本望だろ?」

「戦じゃからな!」

ワッハッハと豪快に笑う祭を笑顔でみやり、凪に視線を戻す。

「だから凪の心配は杞憂だよ」

「あっ………はぃ…」

頬に一筋の汗が伝い落ちたのは見なかった事にしよう。

「……隼人殿の考えは理解しました」

今まで思案の構えで固まっていた周瑜が復活。

「元々真名を預けたのは雪蓮や祭殿からですのでそこは問題ないでしょう。
しかし、雪蓮が我が軍の長だという事は御理解下さい」

要約すると、手を出すなら覚悟を決めろと。

「了解した」

軽く応答、特に問題ないしな。

「さて、それでは改めて作戦の確認に移りましょう」

ドタバタの流れを収拾する為だろう、周瑜が声色を変えた。

11話3の巻に続く
祭さんが出ると全て持って行っちゃう(笑)

キャラが良すぎて出すだけで暴れ出すのはどうなのよヽ(・∀・)ノ


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