30話 街奪還の準備なんですが…
「そんでお姫様、どうすんのか考えてるのか?」
「できれば堕勇の討伐を一緒に手伝って欲しいのですが…最悪支配された住人が外に出ないよう無力化かつ捕縛してくれると助かります」
「なら、捕縛だな。さて、サリバン、アンドレス一緒に行ってくれるか?」
「ははは!呼び捨てか。そっちの方がいいぜ。いいぜ?…俺はいつでもいける」
「私もいつでもいけますよ」
「いつの間にか呼び捨てで慣れてしまいましたね…まあいいか。マリアとロゼは車…えーと、その箱の中にいてくれ。おい、勇者パーティで戦闘できるのは誰だ?」
俺が勇者パーティを見回すと皆俺から視線を外してくる。まさか…
「まさか…誰もいないとかいうなよ?」
「コウが居れば魔物は困らないんだもん…私戦闘職じゃないし…」
「右に同じでーす。僕はもともとB班だし」
「はぁ…お前らな…。そうだ、お姫様はどうだ?」
「メルとお呼びください。申し訳ありませんが、回復職なので戦闘は…」
「マジかよ…まあ、いいや。でてくるやつらだけを捕縛すればいいし、いいか」
俺はそういうと、のんびりと歩き始めた。行先は城門だ。俺の後ろにサリバンとアンドレスが続く。勇者一行は車の中で待機するそうだ。一応ロゼとマリアの飯として保存食を渡しておいたが、勇者の二人がガチな目で保存食を見てきたので、金貨100枚と交換してやると言ったらガチで交換された。侵入者はカレーを、カエデは親子丼を渡した。コーラなど渡したら発狂するんじゃないか?…
そんなこともありながら、勇者たちから離れ森を進んでいくと、ゴブリンが現れたがすぐに逃げ数分後に黒いゴブリンが全速力で駆けてきた。
『どこへ行くのですか?…』
『街が堕勇に支配されちまったから、誰も街から出ないようにして、でるやつらは全員捕まえにいく』
『お供いたします』
『いや、いい。お前も暇じゃないだろう。この森の主なんだから』
『申し訳ありません』
『気にするな。じゃあな』
俺は短くゴブリンと会話をしてから森を抜けた。すでに俺がゴブリンと会話するのも普通に受け入れられているようだ…なんか嫌なきもするが…まあいい。二人に聞いてみると、俺がゴブリンをテイムしているとか思っていたようだ。そっちの方が楽そうなので、そういうことにしておいた。森を抜け、門が見えてきたので大事なことを話し合う
「でてくる気配はないな」
「そうですね…こっから見ても門番もいないし、中に入って門を閉めておく?」
「そうした方が万が一にも出ないだろう。てか、そうすると俺たちも出れないぞ?」
「また飛べばいいんじゃねーか?」
「そういうわけにもいかないんだが…まあいいか。」
俺たちは中に入って門を閉めることにした。今回は人を殺さないと言ってあるので、サリバンはそのままだがアンドレスの日本刀は回収した。代わりに木刀を渡しておく。少し重いようだったので削ってアンドレス専用にする。まあ、アンドレスは魔法を使えばたやすく殺せそうだが…
そうこうしてるうちに門の前まで来た。
「さて、門を閉めるか…どうやって閉めるんだ?」
「確か傍にある部屋にある小屋に魔導具があるんだっけ?」
「キャーーーーー!!!」
突然悲鳴が響き、俺たちは悲鳴の聞こえた方向を見ると冒険者が多くの女を担いでどこかに運んでいる光景だった。サリバンが走って助けようと動いたので、止める。
「離してくれ…」
「待て。見てみろ、この数だぞ?」
俺が顎で違う場所を指すと、そこにも女性が男に連れ去られていた。数が多すぎる…一人や二人なら救助してやってもいいが、さらわれている女を助ければ当然連れ去ろうとしている男たちと戦闘になる。三人しかいなく、かつ殺してはいけないというハンデのあるゲームだ。今向かわせるわけにはいかない。俺のその考えが伝わったのか、サリバンは大人しなったが表情は険しかった。
「さあ、とにかく急いで門を閉めよう」
「ああ、小屋の場所は俺が知っているからついてきてくれ」
そういうとサリバンが戦闘に出て進み始める。確かな足取りなので、本当に知っているのだろう…
無事目的の小屋に着いたが、どうやら鍵がかかっているようだったので、無理やり蹴り破った。中に門番はおらず、不気味なほど静かだ。侵入後は詳しそうなサリバンが部屋を漁り、俺とアンドレスで周りの警戒だ。
しばらくかかったが、なんとか目的の魔導具を入手できたようで、門を閉まった。大きな音を立ててしまる門は何か不気味な雰囲気がする。まるで閉じ込めたぞと言いう雰囲気だ。
門が閉まるのを見ていた俺たちはゆっくりと振り返る。すると、先まで騒がしかった外が静かになり連れ去られている状況の女はいなくなった。おそらく大体の女は確保したのだろう…しかし、いまだに多くの男が建物に入ってたり出たりを繰り返している。
「はぁ…ここから出てもいいが、俺にも責任があるよな」
「勇者を狙ったての犯行だと思うが…確実にないとは言い切れないな。それに俺は行動に出ちまう」
「そうだな…やれるだけやるか。とりあえず、目の前にいる男どもをなんとかしよう。てか、女性を集めてどうするつもりだ?まあ、さすがに殺しはしないと思うが…それも同時に捜索していけばいいか。」
俺はそういうと木製の槍を発注する。おそらく上司の趣味を経費で落としたのが、備品となってるって状況か…もしもあの世界に戻れるなら一言言ってやる…
前世のやつらの考えはやめて、今の状況を考え始める。まず誰がその堕勇なのかわからないのが問題だな…まあ、鑑定を使えば楽なんだが…あ、いこと思いついたぞ…
「アンドレス…こっちにきてくれ」
「どうしました?」
近寄ってくるアンドレス…やっぱ胸でかいよな…ええい!邪念!
無理やり頭を振って冷静になる。考えているのは至極簡単、伊達眼鏡を発注…しようと思ったが伊達眼鏡がなかったので、事務所でも使っていた老眼鏡を発注しガラスの部分を外す。そして、眼鏡に『鑑定』を付与する。ガラスがなくても、メガネのフレームにかければスキルは発動するだろう…完成した『鑑定眼鏡』をアンドレスに渡す。名前は適当だ…アンドレスは眼鏡を受け取りかける。おお‥ちょっと知的に見えるのはなぜだろう…
「これは?…ん?…ステータス!?」
「そうだ。それは鑑定眼鏡だ。かければスキルを持っていなくても鑑定ができる。さっきメルが言っていたが堕勇の能力は『男性のみ』だ。アンドレスは女だろ?」
「も、もちろんです!」
目の前で抗議するように顔を近づけて肩を揺らすのはやめてくださいアンドレスさん…む、胸が揺れてます…そ、その…なんでもありません。若干サリバンが揺れる乳を見ていたのは許せん…
「す、すまん。だから、アンドレスが堕勇かどうか確認してくれ…それで俺とサリバンなんだが…発動条件は『微笑みを見たもの』だったから、単純に見なければいい。」
「は?見ないでどう戦えっていうんだ?」
俺は今度は発注で手ぬぐいを発注し、手ぬぐいで目隠しをする。その上でアンドレスに指示を出す
「アンドレス。俺に切りかかってきてくれ」
そういうと、アンドレスは戸惑いなく木刀を振り下ろしてきた。俺は冷静に木刀を交わすと、すぐに追撃が来るがそれも槍でいなす。
「よし、いいぞ。…ふぅ…もう少し手を抜いて欲しかったな」
「剣術スキルを持っていませんから、これくらい大丈夫かと思いまして」
「いや、木刀に付与されてるよね!?」
「はぁ…それでボルト。なぜ目隠しをしているのに躱せたんだ?」
「サリバンも目を隠してみろ…ほら」
俺は外した手ぬぐいをサリバンに投げて渡す。サリバンはカッコよく片手でキャッチすると、すぐに同じように目隠しをする。一瞬体がビクッとなっていたが、どうやら気付いたようだ。俺はアンドレスに近づき、サリバンに聞こえないような声で耳打ちをする。
「これは?」
「とぅっ!」
アンドレスはサリバンに安慮なく木刀を振り下ろした。しかし、サリバンは同じようにその場から飛び退き剣を交わしていた。サリバンも驚きながら手ぬぐいを外したのでネタバラシだ。
「そいつは気配察知のスキルを付与してある。普段から気配察知のスキルを使っているせいで、レベルが高くてな…まあ、それを付与したんだ。気配がくっきりと見え、敵意すらも手に取るようにわかる。障害物もな」
普段から気配察知を発動させていたおかげでスキルレベルは高いのだが、実際がくっきり見えるわけではない…ではなぜ見えたかだが、それは俺の召喚する備品はこの世界では最高品質だ。付与すれば能力を伸ばすことができる。まあ、これに関しては賭けだったがなんとかなったようだな…
「こいつはすげぇ…不意打ちなんて絶対されないな」
「ああ。さあ、駄弁ってないで行くとするか…気を引き締めろ。骨を折るのも意識を飛ばすのもいい。だが、殺すな」
「おう」
「はい」
アンドレスは眼鏡をかけ直し、サリバンは手ぬぐいをキツく縛る。さて…やりますか…
俺も新しく発注した手ぬぐいをキツく縛り、持っている槍を強く握る。対人戦か…ゾクゾクするねぇ…