25話 魔力ポーションを買いに行ったんですが…
豪華な扉をそっと開き青年が中に入る。中には大きな剣を担いだ青年や、ローブを着ている青年…青年以外に少女が2名部屋にいる。部屋の中は合計4人だ。剣を担いだ青年が入ってきた青年を見つけると、駆け寄ってくる。
「ケント!てめーどこに行ってたんだよ!ずりーぞ!」
「ごめんごめん!」
剣の青年が、入ってきた青年の胸ぐらをつかんでくる。そこに椅子に座った少女の一人がティーカップを優雅に持ちながら話しかける
「新しい勇者はどうだったの?…」
「ギクっ…って昨日メルちゃんには昨日話したもんね。まあ、なんか『お兄さん』だったよ」
「そう…」
短くそういうと再び少女はティーカップを口に近づける。上品な姿でとても綺麗だ。少女の髪は金色で白い肌が神秘的にも思えてくる。その少女と向かい合って座る少女…黒い髪をポニーテールに結び、お茶菓子のクッキーを両手に持っている
「おい!何の話だ!説明しろよ!」
「そうだよ!私にも説明して!ケント君とメルちゃんの関係について!」
「カエデは論点が違うじゃん!僕とメルちゃんは男女の仲じゃないよ」
「え〜それって私に言っちゃうのかな〜ケント君〜ここで、君の想いを代弁してもいいんだよ?」
ケントと呼ばれた青年は顔を真っ赤にして、カエデに謝る。カエデは満足したような笑顔をケントに向ける。
「勘弁してくだしゃい…」
「ん。それで、何でわざわざ明日会える勇者さんを見に行ったの?」
カエデが真剣なトーンと表情でケントとメルを視界に入れる。ケントは一瞬メルに目線を向ける。メルは一瞬目があった後すぐにそらしティーカップを机に置く
「勇者がどのような人間か調べてもらったのです。B班であるケントさんをA班に急遽入れたのもその理由です。理由はみなさん分かっているでしょ?…『堕勇』になる可能性もありますから…」
「『堕勇』か…そうだったな…しかし、黙って調べることもなかったろ…まあ、いい。それでどうだったんだ?」
「そうだね…まあ、よく分からない人だったよ。能力は召喚系とは言っていたけど、代償についてはわからなかった。あれだけモンスターを狩るんだしおそらく『命』だと思うよ。」
「それで、何の召喚なの?」
「日本製のベッド、キッチン用品もありましたよ。そして部屋には銃がありました。転移してきた時に持ち物も一緒にこっちに持ってこれるけど…顔はどう見ても日本人で銃に縁のあるような人には見えなかった…」
「銃…まじかよ…」
「申し訳ないのですが、銃とはなんですの?…」
ティーカップについた口紅のあとを指でこすった少女が聞いてくる。
「銃…はですね…遠距離武器で、火薬を使って鉄の球を飛ばすんです。僕のいた世界では簡単には手に入らないんですが…」
「火薬とはわかりませんが…勇者様の世界で流通していたということは魔力を使わないのですか…少し怖いですね」
「でも、あの人はもっと怖いです…拳銃を自分で胸に撃って、怪我すらもしなかったんです」
「おもしれぇ…身体強化ってことか?…」
「そこまで悪そうな人じゃなさそうだったけど…早めにカエデに見てもらった方が早いと思う。それに勇者って言葉は否定してたんだけど…どう見ても異世界人だし…この世界で黒髪なんてね?」
「勇者を否定するのですか…『堕勇』に近いのかもしれませんね。どうにかこちら側につかせたいですね…」
「まあ、強いかどうかもわからねーけどな。まずは俺が腕試しだな。」
「やめたほうがいいと思うよ…僕個人としてはZ班の『対堕勇』に入ってもらいたいです…」
「えー私的には、A班の『対魔王』に入って欲しい!だって〜このパティー飽きた〜」
「飽きたって…まあ、いいが。とにかくオーガを大量に殺せるんだ。技術斑には行かせられないな」
「ええ。とにかく頼みますよカエデ…あなた次第です。」
△
マリアを抱っこしながら、ミルクティーに向かう。俺はそのままマスターのいるカウンターに向かうとマスターは驚いた表情で俺を見てくる
「すいません、部屋の鍵を」
「あ、ああ!これだ!ど、どうかしたのか?…」
鍵を手渡してくるマスター。俺はマリアを抱っこしているので受け取ることができないので、ロゼが代わりに受け取る。マスターは俺が抱っこしているマリアの顔を見て驚く。
「詳しくは後で話しますから…失礼します」
「水とか持って行った方がいいか?それとも教会から回復魔法の使い手でも呼ぶか?」
「水を頼みます。使い手は大丈夫です」
それだけ言うと俺は階段を登り始める。その後からロゼが付いてくる。今日はミラルとはすれ違わなかった。
俺がこの前まで使っていたので、場所は覚えている。そのまま部屋の前まで来ると、ロゼが扉を開く。ベッドに寝かせようとしたが、この部屋のベッドは硬いので発注で簡易ベッドを取り寄せそこにマリアを寝かせる。マリアやロゼは突然現れたベッドに驚いているがそこは無視だ
「あの…ありがとうございました…」
「大丈夫だよ。自分を治せるかい?…」
「すいません…魔力がまだ回復してなくて…」
「そうか…魔力ってのは自然回復しかないのか?」
「いいえ…魔力ポーションならすぐ回復できますが…」
「よし、買ってこよう。ロゼはそこでマリアを見ていてくれ」
『うん!』
俺はそっとロゼの頭を撫でる。そしてマリアに柔らかな掛け布団をかけてやる。
「すまない…教会には少し戻れない。しばらくはここに泊まろう」
俺の表情から何かを感じたのか二人は、深く頷く。俺はできるだけ精一杯の笑顔を二人に向けると、そのまま部屋を出て行き、カウンターのマスターの元に向かう
「すいません…魔力ポーションとやらどこに売っていますか?」
「薬師の所だな。この店を出て、まーすぐ行けば青い炎で看板が燃えている店がある。そこだ」
「わかりました」
俺は頭を下げると、すぐに店から出てマスターに言われた通り右に曲がり真っ直ぐ走り続ける。距離的には3kほどか。看板が青い炎で燃え上がっている古びた店があった。燃えているのに通行人は皆スルーしているのでおそらくこれが普通なのだろう。すぐに店に入る。店は本屋のように高い棚が数列あり、棚の中には色とりどりの液体が入った試験官が並べられていた。正直どれがそのポーションなのかわからない。
「何を探している。言ってみろ…」
振り返ると、そこには化け物がいた。目は大きく顔じゅう毛が生え、口は鋭く短い嘴だ。全身灰色で毛深い…
「お、お前は…」
「おそらくこの姿で驚いたのだろ。私の名はストリクス。獣人の猛禽族の梟種だ。」
「獣人?」
「お主初めて見るのか?…まあ、良い。久々の客だ。それで焦っているようじゃが何が欲しいのだ?」
「そうだ。魔力ポーションが欲しい」
「そうか。そこにある青色の液体が入ってるのがそうだ。金貨5枚だが払えるか?」
ポケットから適当に金貨を取り出し、梟人間に手渡すとそのまま店を出て行く。