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22話 勇者が来ることになったようなんですが…

「マーズ!報告したろ!」


「なんだい?独り身の美しい女性の部屋に行きを荒げて入ってくるなんて」


「はぐらかすな!あの彼奴のことだ!勇者がくるそうじゃないか!」


「あらやだ。疑ってるの?私じゃないわよ。まあ、あれだけ功績を挙げちゃえば疑われるのは仕方ないじゃない…それに私が国に報告すると思う?この『帝国の恥』の私が」


「すまない。その…すまない…」


「いいのよ。それで、ハッシュはどうするの?」


「彼奴と接触させても構わないが…もう少し調べたかったな…」


「ねぇ、調べた結果だけど教えてあげようか?」


「手袋の件か!聞く!」


「ふふ…本当に子供みたいね。まあ、いいわ。あの手袋だけど、この世界…っても帝国にある素材ではどれも当てはまらない。素材不明よ。それで、こっからが大事よ。その手袋は勇者召喚された時に持っていた髪留めと同じ素材に似てるの…」


「つまり、あいつは召喚されたってことか?…」


「わからないわ。でも、能力がわからなければ手が出せない…」


「『全能のカエデ』を呼ぶか?…」


「あら?勇者が嫌いなんじゃなかったのかしら?それに勇者が来るじゃない。」


「そうだが…嫌な風が吹いてるんだ…」


「ハッシュ…風の話はやめなさい…」


「そうだな」



俺は勇者の件とオーガの報酬の件で冒険者ギルドに向かう。ロゼの様子を見に行きたかったが、先に用を済ませてしまう。冒険者ギルドはいつもより賑わっていた、盗み聞きすると、皆勇者の話で持ちきりだ。俺のことなんて誰も話やしない…俺はいつものギルドの受付嬢の元に向かう


「テューガさんはいるか?」


「います。どうぞ、奥へ」


「ああ」


俺はそのままテューガのいるギルド長室向かう。バタバタとギルドの職員とすれ違う。その顔はかなり焦っているようだ。扉の前まで来ると、ノックもせずそのまま中に入る


「失礼します」


「っ!おお…ボルト君」


「オーガの討伐の報酬の件についてきました」


「そうだったな!座ってくれ…」


テューガの促されソファーに腰を下ろす。向かいには怪しい笑顔のテューガが座る。


「オーガの報酬だが、半分をシャルルガ様。もう半分を三人で分けてもらうんだが…全部金貨になる」


「構いませんよ。三人で分ける話ですが、綺麗に三等分でお願いします」


「し、しかし、君が多く討伐したのだろう?」


「数ではそうかもしれませんが、三人で命をかけて戦ったのですから三人で綺麗に分けたいのです」


「わかった。一応他の二人にも聞いておこう。」


「お願いします。それで、勇者の件なんですが…勇者とは?」


「そうか、君は記憶がないんだったな…勇者とは魔王討伐のため国で召喚された者をそう呼ぶ。ほとんどが異世界人なんだが…どれも不思議な力を持っていてとても強いんだ。ボルト君は英雄だ。英雄とは召喚されていないが勇者と並ぶほどの力を持った現地人のことだ。」


「そうなんですか」


「勇者一行は明日この街に来る。それと、王の三女『聖光のメル』様も来るから、大忙しなんだ」


「『聖光のメル』ですか。名前痛いですね」


「痛い?わからないがまあ良い」


「それと、もう一つ。この前から後ろをつけてくるものがいるんですよ。どうもギルドで見たことがあるようなヤツでして…」


「ほ、ほぉ…それは困ったもんですね」


「ギルド側から何か言ってもらえますか?」


「わかった…」


テューガは表情をそのままだったが、俺には『心読』があるせいで丸わかりだ。そうか…魔族の疑いがかかってるのか…それにしても魔族ってのは何だ?…俺が魔族か…


「では、そういうことで。今日はこれで失礼しますね」


「あ、ああ。」


俺はそのままギルドから出て行く。ギルド内では多くの冒険者が血だらけになりながら受付嬢と話している。盗み聞きすると、俺の倒したオーガの解体が終わったという報告らしい。実に血なまぐさい…

匂いがつくと嫌なのでギルドから早々に出る。そのまま教会に帰る。


「ただいま〜」


『おかえり!』


言葉はなくてもしっかりと心で言ってくれる女の子。いや〜実にいい子だな〜ロゼは!


「うん、いい子にしていたかい??」


『うん!本読んでた!』


「そうか…それじゃあ、今日は俺と一緒に街をぶらぶらしようか!」


『うん!』


ニコニコとしているロゼ。そういえばロゼの服のバリエーションが少ないよな…清潔のようだが、着まわしか…マリアにはちゃんとお金を渡しているんだが…買いに行くか

俺はロゼの手をつなぎながら商店のある方へ向かう。ロゼは繋いでいる手を大きく振りながら歩く。あまりにかわいかたので、突然お姫様だっこをしてくるくると回る。声は出ていないが笑顔なので楽しんでいるようだな

ぶらぶら歩きながら子供服の置いてある店に入る。この世界は新しい服はあまりなく、古着を買うのが多いようだ。ロゼはキョロキョロと辺りを見回す。俺は適当に服を選ぶ。長袖と半袖を選ぶ。


「ロゼ、これはどうだい??」


『いいの?…』


「うん、いつも偉いからね!今日くらいわがままでもなんでも聞いてあげるよ」


『やったー!!!』


ロゼは服を見ながら、『あれもいいなーこれもいいなー』などと考えているが、手に持った服の値札を見て顔を青くして戻す。ので、その服を取っておく。9着ほど選び、すべて買ってあげる。年頃の女の子なんだからおしゃれはいいことだろう…ロゼは買った服を自分で持つというので、任せようかと思ったが…荷物持ちをさせていると思われるのは嫌だったので、やめた。それから、多くの甘いものなどを買い歩いていく。ロゼは終始満面の笑みだったので買い物はいいものだな〜

しばらくすると、さすがに荷物が多いので一度帰ろうとするとろうとすると、ロゼと同い年ほどの幼い男の子の集団が近寄ってきた。


「おい、見ろよ!ロゼだぜ!犯罪者〜」

「喋れないんだろ!おーい!ブース」


集団はロゼに悪口を言っていく。周りも何も止めることがない…最悪だな…ロゼは涙目で何か叫ぼうとするが、口から出るのは空気の出る音だけだった。心を読んで…後悔した。

俺はそっとロゼの頭を撫でると、男のたちを一睨みする。男の子たちはそれから何も言わずに逃げた。

ロゼは俺の足に抱きつき、顔を押し付ける。涙をズボンで拭いているのかな…そっとロゼを抱き上げる。


「ロゼ?俺とくるか?」


何も言わない。いや、言えないが、しっかりとロゼの声を聞いた気がした。

俺はそっとロゼを強く抱きしめながら教会に帰る。

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