21話 新たな主したんですが…
祝勝会はすんなり終わり、俺は久しぶりに酔っ払いいい気分で教会に戻った。オーガの報酬に関しては後日ギルドで渡されるそうだ。ちなみに、オーガの皮などで装備が作れるそうなので、グラスさんに任せた。
教会に戻るまでに何名か気配察知で後をつけているのがわかった。どうせ、報酬の金が目当てだと思うので放置した。
「ただいま〜」
「お帰りなさい。案外早かったのですね!今日は飲み明かすのかと思っていました」
「そこまで酒に強いわけじゃないんで」
「そうですか?とにかく今日はゆっくり休んでくださいね!」
短い会話も終わり、俺は自室に戻っていく。すでにロゼは寝ているそうだ。まあ、子供は早寝早起きが大切だしな。
倒れるように自室のベッドに横になる。この世界ではありえないほどふかふかしたベッド…気持ちい…そのまま睡魔に勝てず落ちた
目をさますとすでに太陽は真上あたりを通っていた。酒のせいか、久しぶりに長く寝た気がする。
二日酔いななるほど飲んでいないので、苦労せずリビングに向かう。そこには机の上で本を静かに読んでいるロゼがいた。
「おはよう」
『おはよう!!』
「元気がいいな〜さて、俺はこの後ギルドに行くが…マリアは?」
『冒険者の治療だって!』
「そうか。ロゼはお留守番できるか?」
『できる!!!』
「そうか!なら、俺が出て行ってから家のこと頼むぞ?マリアと俺以外は誰がなんと言おうといれちゃだめだぞ?」
『はーい!』
「よし」
軽くロゼの頭を撫でてから、水浴びや着替えなどの出かける支度をする。服は新しく発注している。この世界の服は正直肌に合わない…
軽く動きやすいようなスポーツタイプの服に着替えてから、俺は教会を出て行く。ギルドに顔を出そうと思ったがオーガを乗せた台車が続々とギルドに入っていき、忙しそうだったので後で行くことにして俺は森に出かけることにした。
通り過ぎる人全てが、俺に声をかけてくる。英雄だのと呼ばれるが…一切実感がわかない。オーガのボスを討伐したのはシャルルガで、俺は雑兵を倒しただけだ。まあ、数なら負けてないと思うがな
「おう、また森に行くのか?」
「ええ、あのゴブリンも気になりますからね」
「お前なら顔パスだ。通ってもいいぞ」
「はい、失礼しますね」
俺は門番と軽く挨拶してから、森までの道を進んで行く。蜜草の畑には多くの農家が精を出していた。のどかな風景がどこか落ち着く。あの老夫婦はやはりいなかった…
森に着くと、広い馬車に出る。そして、気配察知でバレバレな尾行をしていた男たちの方を向く。合計3人か…
「何のようだ?」
「ちっ…バレていやがったか」
一人がそう言うと、二人が出てくる。一人はバレていないと思っているのか出てこない。俺はそっと銃を実体化させ、一人が隠れている近くの木を撃ち抜く。
「バレバレだ。それで、雇い主は?」
「言えるか。しかし、争う気もない…これでも命は惜しいからな」
「なら、失せろ。さもなきゃ、頭が消し飛ぶと思え」
「へいへい」
一番最初に発言した男が返事をすると、軽く手を振り二人を連れて街の方に素直に向かっていく。大したことはないよだな…まあ、いい。しかし…そろそろ出た方がいいか…
尾行を追い払った後、あの黒いゴブリンの元に行く。なんとなくだが、気配察知でどんなモンスターなのかわかるようになってきた。
黒いゴブリンは、多くの仲間を連れて一匹のオーガと戦っていた。手に持つあの金槌があれば余裕だと思うのだが…あのゴブリンの立ち位置は司令塔であり大将みたいな感じだ。ゴブリンたちはどんどんとオーガに攻撃を加えていく。見ると怪我ゴブは出ているが、死ゴブは出ていないようだ。そして5分ほどでオーガは力尽きその場で倒れた。
俺は見ていた茂みから飛び出し黒いゴブリンに近づく。すると、二匹の護衛のようなゴブリンが俺に警戒して持っていたボロい剣を向けてくる。しかし、黒いゴブリンが俺の存在に気づくとすぐに二匹に剣を下ろすように命を出す。
『これは、あの時の恩人様。助かりました」
『ああ、それで森の様子はどうだ?』
『オークはすでにオーガに食われかなり数を減らし、オーガも昨日のあの戦争で大量に死にましたから森は静かですね」
『そうか…お前はどうするんだ?』
『このハンマーは…素晴らしいものです…そして昨晩、エレファウスト様に変わって私がこの森の主になりました』
『そうか…お前は知性があるから下手なことにはならないと思うが…それで、なんでお前だけ色が黒いんだ?』
『それは、私が希少種だからです。この肌の色は闇の精霊神の加護によるものです。希少種なので、他のものより頭がいいと思いますし、体つきも違います。そして闇の精霊神の加護で若干の能力向上があります』
『ほぉ…まあ、いい。とにかくこの森は頼んだぞ。』
『はい!』
黒ゴブリンは両膝を地面につけ額を地面につける。まあ、土下座だ。すると、周りのゴブリンも同じように頭を下げてくる。気分は悪くないが、居心地が悪いので適当に頭を上げさせそのまま別れた。
今度は気配察知で誰もいないことを確認する。そして、この間
『質量が大きいため、ここで発注すると床が抜ける恐れがあります』
と出た備品を発注する。正直怖いが…数個知っているものがあったのでそれから出す。
『備品発注!』
すると、目の前に水色の小さな軽自動車が現れた。これは俺が働いていた会社の車と同じ車種だ…おそらく備品扱いなのだろう…ての上に車が現れることなく、手には鍵が数メートル開けて車が現れた。鍵を使って中に入ると、ガソリンは満タンで、エンジンもきちんとつく。かなり楽な移動手段を手に入れられたな…これもすぐイラストに変え体に入れる。それ以外はわかるものもわからないものあるが…ここでは出しにくいものばかりだ。
「まあ、車だけ手に入っただけ嬉しいな。さて、帰るか」
俺は街まで戻る。正直早すぎるとも思ったが、セロが一人でお留守番しているのが怖いからだ。
門までくると、門番が突然俺のところに走ってきた。表情からかなり焦っているようだ。
「はぁはぁ…」
「落ち着いてください。どうかしましたか?」
「帝国から勇者が来るそうだ!しかも、お前に何か聞きたいそうだ!数日の間だろう!」
「勇者?ですか?」
「勇者だ!召喚魔法で召喚された勇者だ!」
興奮した様子で話す門番…あー、面倒な予感がするな…
「わかりました。一旦ギルドに向かいます」
「ああ、その方が詳しく話を聞けるだろう!勇者か〜!」