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11話 森に行くので、強くなろうと思ったのですが…

商業ギルドから出て、宿に着いた俺はのんびりとマスターの元に向かう。マスターは客でごった返す店をさばいていく。俺はカウンターの席に腰掛けると、マスターが話しかけてきた。


「どうした?もう一泊か?」


「いえ、明日でここを出ます。お世話になりました」


「かまわないさ。ほら、餞別だ。飲んでけ」


マスターはコップに何やら赤い液体を注いで俺に渡しくる。俺は匂いを嗅ぐ…いい匂いだ…ぶどうの芳醇な匂いだ…ワインか。この世界にもワインがあるのか

俺はそっとワインを口に含む。ゆっくりとしたの上で転がすように味わう。ワインの良し悪しなんてものはわからないが、美味い、美味く無いくらいはわかる。少し度数が高いが、最近酒を飲んでいないのでこれくらいが丁度いいのかもしれない。これは美味い。


「美味しいですね」


「だろ?うちで作ってるんだ。たまには飲みに来い」


「はい。是非。」


マスターはふっと鼻で笑った。初めてマスターの笑顔を見たな…ダンディでクールだよ。

俺はコップをマスターに返すと、そのまま上に上がっていく。階段を上っていると、上から誰かが降りてくる。誰かと思い顔をあげると白い髪に白い髭、神官服を着た鱗の老人…あ!


「おう、ボルトくんじゃないか。おや?…」


一瞬で理解できた。ミラル・エンシェント…この龍人だ…龍人と目があうと視界に何かステータスが表示された。これは…俺のじゃないぞ?…ふと名前を見るとミラル・エンシェントと書かれていた。そして俺のステータスには書かれていない欄があった


「どうかしたのかね?」


「エンシェント…ドラゴン…」


「っ!…ははは!バレてしまったか!」


老人は大きく口を開けて笑い始める。俺はそれでも固まる。ステータスには種族という欄があり、そこにはエンシェントドラゴンと書かれていた。ドラゴン…


「そうじゃ、わしはエンシェントドラゴンじゃ。何もする気はないぞ、あくまで観光と偵察でな…それにしてもどうして分かったのじゃ?」


「それは…俺は『鑑定』というスキルだと思います」


「ほぉ!『鑑定』とな?珍しいのぉ…まあ、お主ならバレてもいいじゃろ。心を読んだがお主はまだ清らかじゃしな」


「清らか?」


「まあ、ワシの事は他言無用で頼むぞ。ではな!鑑定を持つ青年よ」


「は、はい」


満足げに笑う老人はそのまま階段を降りていく…この世界だとドラゴンってあんな感じなのか?…



部屋に戻った俺は机の上にライターを出し火をつけておく。精霊はのんびり炎の中で踊っている。飽きないものだな…まあ、いいか。

俺は椅子に座り机の上に拳銃を置く。これは自動拳銃とかいうやつか?…友人が持っていたやつと似ているな…明日森で撃ってみよう。

そうだ…防具が欲しいな。しかし、動きにくくなるのは勘弁だ…何かあるか探してみるか

適当に備品の項目を操作して、いいものを探していく。うーん…いいものがないな…これくらいだな…

発注したのは黒い安全靴のブーツだ。底面が滑りにくく、そして履き心地がいい。それに準防水性に加え…つま先に鉄板が仕込まれている。車が踏んでも形が変形しないほど硬いそうだ。

それから黒いジャケットだ。このジャケットはバイク乗り用らしく、もしバイクで事故に遭い吹き飛ばされても一瞬で空気が入り衝撃を緩和してくれるそうだ。

多分だが、髑髏の項目を探せば防弾チョッキなどでてきそうだが…探す気はない…てか、いよいよあの会社が何だったのかわからなくなってきたぞ…こんなブーツも備品なのか…

そしてズボンだが、現場用のズボンに履き替えた。腰には腰袋…とび職の人がよく腰につけているやつだ。それに鎌と必要そうなもの…ペンとメモや拳銃も差しておく。あまりポーチを使う感覚がないんだよな…


「明日は森に行くしな」


明日は森に向かう。ゴブリン以外の敵にも自分がどれだけ通用するか試してみたいというのもある。その後、適当に飯を発注し食事をとる。精霊にはマカダミアのチョコレートを食べさせた。こう毎日チョコバーでは精霊も飽きるしな。まあ、満足そうな表情だったしいいか。マカダミアの焦げる香ばしい匂いがした。



目を覚ますとまだかなり早いようだが、俺は部屋を出る。荷物自体そこまで多くない…いや、何もないしな

階段を降りてカウンターに向かうとそこには何かを煮詰めているマスターがいた。


「おはようございます、これ返しに来ました」


「おう、確かに。またいつでも来いよ」


「はい!お世話になりました!」


俺は深くお辞儀をした後、宿を後にする。ここでの思い出は少なかったけど馴染みはある…またいつか…

そう思っていると突然大きな声が聞こえた。


「おーい!待つんじゃ!ボルトくんよ!」


大声の方…宿の上の方を見ると窓から上半身を乗り出している老人…ミラルだった。俺はそっと手を振ると、ミラルはそのまま窓から飛び降りた。ドシーンと少しの揺れが起きてミラルが降りてきた。ミラルは何事もなかったかのように俺の方に歩いてくる。そっと俺の耳元に口を寄せ小声で何かを言う


「森のバランスが崩れておるのか…魔素が多い…森に行くなら深くには行かないほうがいい。それと、なるべく早くこの地を発ったほうが良いぞ。ワシなら何とかできるかもしれんが、人間の世界じゃ。わしは手を出さぬ。」


「そ、それは…わかりました。」


「うむ。では、またな!鑑定の青年よ!」


ミラルはそのまま宿の入り口から戻っていった。森のバランスか…主を殺してしまったのがいけなかったのか…

俺は妙な胸騒ぎと責任感から、そのまま門の方まで歩いていく。しかし、昨日の装備はこの世界の人から見ると変わり者ようだ…まあ、気にしない…

門のところまで来ると、いつもの門番の男がいた。


「おう、お前か。森に行くのか?」


「ええ。少し確認したいこともあるので」


「そうか。なら、一つ頼んでいいか?」


「頼み?ですか?」


「ああ。少し森の奥なんだが、『精霊の泉』ってのがあるんだがそこの水を汲んできてほしい。」


「わかりました。まあ、できれば汲んできますね」


「おう!通っていいぞ」


俺は門を抜けてそのまま森に向かう。農作業をしている中に、あの老夫婦の姿はなかった。あの夫婦はなんだったのかな…まあ、いい。そういえばスキルってどうやって発動するんだ?


『スキルは意志で発動できます。発動したいスキルを頭の中で唱えればいいだけです』


ほぉ…発注の時みたいにやればいいのか…『気配察知』

何か感覚が鋭くなったようで、自分を中心に1キロほどまでの生物が手に取るほどわかる。わかると言っても、そこにいるという大雑把な感じだが…かなり役に立つな

そのまま気配察知を発動させ周りに人がいないことを確認すると腰から拳銃を取り出す。安全装置らしき箇所を下ろし、適当に木を狙って引き金を引く。パンという大きな音とともに、狙った木の表面が弾けた。しかし、あまり反動はなかったな…拳銃ってこんなものなのか?…

よし、次は…


「『我の力の断片を魔力に 理の魔素と魔力をもって 力を分け与えよう『物質付与』」


拳銃にスキルを付与してみる。できるか不安だったが、発動しようとすると頭の中に詠唱の文が浮かんできた…これは便利だな…唱えるとステータスのようなものが現れた


『付与するスキルを選択してください

・鎌術 lv3

・金槌術 lv1

・虚言 lv1

・殺傷探求 lv2

・付与魔法 lv1

・鑑定 lv1

・隠蔽 lv1

・心読 lv1

・心眼lv1

・気配察知 lv1』


…えーと、鎌術でいいか…俺はバーを軽く触ると、画面が消えた。同時に頭にルシファーの声が響く


『付与が終了しました。成功。続けて付与しますか?』


「いや、とりあえずはこれでいいか」


付与の終わった拳銃をまた木に向かって引き金を引こうとしたが、何かがこちらに向かってくる気配がする。かなり大きいな…

俺は適当に木の後ろに隠れ、気配を待つ。しばらく待っていると大きな角のあるイノシシが飛び出してきた。鼻息が荒く、ライオンのような白いたてがみが生えている。イノシシは地面をクンクンと嗅ぐとそのまま俺の方を向くと地面を掘り始めた。ん?…これは…まずいぞ!

そう思ったと同時にイノシシは俺のいる木に突進をしてきた。俺はすぐに逃げると雄々しく伸びていたイノシシの角が俺のいた木を吹き飛ばしていく。もし俺がいたら死んでるだろう…


『スキル『硬化』スキル『突進』スキル『嗅覚強化』を入手しました。先ほどスキル『銃撃』を入手していました』


おお!なんか三つもスキルを持ったぞ…さすがだな。ってこんなもんすたーからでもスキルをとれるんだな…って考えてる場合じゃない!

イノシシは俺に狙いを定め、そのまま突進の予備動作なのか、地面を掘る。一か八か…

俺は突進してくるイノシシに銃を向ける。そして突進してくる前に引き金を引く。すると、銃口から出た出たのは銃弾ではなく明らかに銃口より大きな三日月型の何かが見えた。ものすごい速度でイノシシに向かっていき、そのままイノシシの角を切り落とし勢いそのままにその身を切り裂き、先の地面に突き刺さる。イノシシはそのまま力なく倒れると、通り抜けた先から血が噴き出す。


「なんだこれ…強すぎだろう…」


『説明いたします。銃弾に空気の刃を乗せて攻撃していますね。ランク60相当です』


「マジかよ…」


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