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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第七章
134/211

第134話 三位一体

 駆け出す俺と、ソウジの背後から、


「アンジ、ソウジ。ホウキは僕が何とかするから。二人はシンロウを…リョカさんをお願い!」


 と、トウジが声を掛けてきた。


 しかし、俺も、ソウジもそれに答える事なく、お互い顔を見合せ一つ頷いた。


 この作戦を遂行するには、ホウキをどうにかしなければならないと、お互い言葉には出さずともそう考えていた。


『ありがとう、トウジ!これで……何とかなるかも知れない』


 遅れて走り出すトウジ、それと、ハクさんに俺は感謝した。


 状況はかなり悪い。


 リョカさんは既に片膝を付いたまま動きがない。


 しかし、出血をしている様子が無いので俺は少し安心していた。


 後々これが大きな間違いだったということに気付かされるのだが、それはまた後日談だ。


 とにかく、それでもリョカさんの目の前に二体のミツキがいることは、決して楽観視出来るものではなかった。


 突然、並走するソウジが、


「アンジ」


 と、俺を呼ぶ。


 彼を見ると、左手に持った刀をそのまま外へ一度払う。


 ソウジの言いたい事を理解し、コクリ、と頷いて答える。


 更にそれに答える様に彼も頷く。


 それが合図となり、俺達は左右に迂回する。


 隣にはソウジも、トウジもいない。


 だが、俺は、……俺達は一人ではない。


 怒りも、恐怖もなく俺はシンロウへと近付いていく。


 リョカさんとシンロウの元からホウキが少し離れるのが分かった。


 迷いのある様な表情を浮かべているシンロウ。


 しかし、シンロウは右手を振り上げていた。


『間に合え…間に合え!……間に合え!!』


 内心俺は、叫んでいた。


 シンロウ、ホウキ、それとリョカさん、更にソウジも俺の視界に入る。


 リョカさん達の直ぐ側まで来た時、


「ウォォ~~~~~ッ!!」


 と、シンロウの叫ぶ声が聞こえた。


 それが合図だったかのように、俺もそしてソウジも宙を舞っていた。


 拳を今にも振り下ろそうとするシンロウに向かって、ソウジが、


「さぁ~~~せるかぁぁぁ~~~~~!!!!!」


 と、大声を上げる。


 しかし、シンロウより先にホウキは俺達に気付いていた。


「邪魔はさせません……」


 ソウジに向かって刀を構え、彼へ切り掛かろうとした時、


「させるもんかっ!!ホウキ!!こっちだ!!」


 そう叫んだのは、トウジだった。


 ホウキは一瞬、声のする方へ目を向ける。


 そこには、『ロクジョウコン』を両手で構えている少年、トウジがいた。


「僕だって……僕だって、戦うんだ!みんなと一緒に!」


 彼の持つロクジョウコンの先端が淡白く光だす。


 そして先端を自分の胸の方へと向け、静かに強く、


「ソルウィド!」


 と、そう言いながら杖の先端をホウキへ向けた。


 すると、その先端部分から白く勢いを持った塊がホウキを目掛けて飛び出した。


 まるで曲刀を横に寝かせた様な形をしている。


 そして、それは勢いを失い事なく真っ直ぐ、ホウキへ向かっていく。


「何ですか……これは?」


 初めて見るそれに、ホウキは刀で受ける事をためらい、羽をはばたかせ、空へと回避する。


 結果、ホウキがシンロウから離れていた。


『良くやった、トウジ!!!』


 両手に持つ二本の刀を振り上げながら、ソウジはそう思った。


 ソウジの両目はシンロウを捉えていた。


 しかしシンロウも、ソウジとアンジに気付いている。


 リョカさんへ向けていた拳一旦引き、瞬時に俺とソウジの位置を確認する。


 若干だが、ソウジの方が早いと判断したシンロウは、先に左で拳を握りソウジを迎え撃とうとしたのだが……


 ソウジの背中に光る『モノ』が見えた。


 それが何を意味するのか、シンロウは瞬時に理解するが、手足が届く範囲では無かった。


「チッ……クソ!!」


 短くそう漏らすと、シンロウは口を開け、一気に管を伸ばした。


 刀を振り下ろす体勢に入っていたソウジは、慌ててシンロウ本体から管へと標的を変え、二本の刀で切りつけた。


 自分の胸に一瞬管が当たった感触はあったが、それは刺さる事なく途中で切れ、地面に落下していった。


 ホッとしたのも束の間、勢いのままシンロウの射程距離に入ってしまったため、次に繰り出された左廻し蹴りを避けられず、ソウジは後方へ弾き飛ばされた。


 一方のシンロウは、蹴った勢いを殺さず、そのままもう一つの宙を舞う存在、……つまり、俺と真っ直ぐ向き合う位置に足を下ろす。


 ソウジ同様、俺も刀を振り上げていた。


 しかし、シンロウは避ける様子を見せない。


 俺の刀が光っていない事を確認していたからだろう。


 シンロウは、左腕で顔を守るように隠し、右手で拳を握っている。


 互いの視線がぶつかる。


 大声で叫びながら、俺は刀を振り下ろす。


「これでも、くらえぇぇ!!!!」


 シンロウから目を逸らさず、しっかりとその瞬間を見る。


 シンロウもその時を伺っている様子で、右手を大きく後ろへ引いた。


 そして、俺の刀が左腕に触れる寸前に、シンロウは、右の拳を俺に向かって繰り出そうとしたのだが……


 それより先に、俺は一気に『力』を解放した。


 それを見たシンロウは動きを止ね、左腕に力を込める。。


 しかし赤く光るコオロキは、シンロウの左腕を切り裂き、その先にある本体をも切り裂いてみせた。


「作戦…成功………」


 地面に着いたコオロキの先を見ながら、俺は呟いた。


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