挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

平凡な脇役Aは画面の片隅で躍る

平凡な脇役Aは画面の片隅で躍る

作者:月葉しん
はじめまして。なんとなく書きたくなりまして。お手柔らかにお願いいたします。(2014/04/04誤字修正)
 俺の幼馴染みはイケメンだった。嫌味なほど女にもてる上に文武両道、人望厚くリーダーシップも半端ない完璧な男だ。
 そのハイスペックっぷりは幼稚園の頃には既に発揮されていて、小学校中学年の頃にはもうどうにも手のつけようのないありさまになっていた。
 誰が対抗できるんだよあんなの。
 それが当時周りにいた同志平凡男子の青息吐息で喘いだ結果の、絶望的な階級の差だった。
 俺らはあいつと肩を並べ対等になりたいと必死に足掻いた。結果として俺らの学年はその成果か学力も身体能力も飛躍的進歩を遂げ、近隣の学校をぶっち切る輝かしい戦果を上げた。学校もPTAも鼻高々だった。
 しかしだ。俺らはそんなことはどうでも良くはないが、最大の目標はそんなことじゃない。あいつに追いつけ追いこせだ。
 足掻いた足掻いた、努力した。だが俺らが努力するのを見たあいつもまた、無邪気に゛俺も一緒にがんばるよ!゛と…。
 お前が同列で努力したら意味ねー!!
 声無き声で絶叫するが、一緒にが嬉しいらしいあいつに誰も何もいえず「ぅん。まぁ、いんじゃね?」とひっくり返った震える声で、血の涙をながしたもんだ。
 同志平凡男子は影で俺に詰めより、「ヤメサセテクレェェェ!!」と泣きつかれたが、俺だって泣きたい。女の子に囲まれるならまだしも、ガキ男集団にすがり付かれて何のバツゲームだよ。
 俺だって止めさせたいよ。俺、幼馴染みよ?なんや知らんがなつかれてんよ?いつも隣で比べられてんよ?
 俺、平凡なフツメンよ!?どんなゴーモンだよ。

 外見も女が見れば10人中10人振り向くよね?コミュニケーション能力も半端ない。絶対のカリスマ性といいどんな化けもんですかってんだよ。
あの理解力ってなんぞ?1を聞いて10を知る驚異の頭脳を持った男だよ。

 大卒な前世記憶持ちのリーチがリーチにならないんですけど、どういうことなの!!


 …ええ、俺は転生者ナンデスヨ。
 それに気づいたのは幼稚園の時だ。何かの拍子にあいつの名前、漢字のフルネームを見たのが切っ掛けだ。
 だってさ。前世でプレイしたことある乙女ゲーの主要キャラの名前だったんだよ。
 漢字表記を見た途端、俺の頭のなかをそのゲームのパッケージだのスチルだのが脳内に雪崩れ込み、さらには俺の前世の記憶が、人生がフラッシュしては脳内に収納されていくんだ。
 訳がわからなくて混乱してその場でぶっ倒れた。慌てて俺を覗き込み大泣きするあいつと、それにつられて泣く園児と大騒ぎだったらしいが、んなことどーでもいい。
 家で目覚めた俺は、今世の俺のまま前世の記憶を受け入れ完了していた。
 後年つくづく思った。良かった。俺のままで。だって俺、前世、女だったんだぜ。前世の人格に乗っ取られてたら詰むだろ!?
 だってよ、幼馴染みがアレだぞ!?惚れたらどうしてくれる!!良かった、俺。俺で。どう頑張っても野郎には惚れねー。断固断る!!

 自分が転生者だと発見してから、あいつのハイスペックさに気が付いた。それでも最初はそんなに気にしてなかった。そりゃそーだろ。俺には前世の恩恵がある。そうそう追い付かれるもんじゃねぇ。
 …なんて思っていた時期が俺にもあったのことよ。
 幼稚園でも薄々気づいちゃいたが、小学校に入ってから確信した。こりゃすぐにハンデ無くなるわ…。
 今はまだあいつについていける。だけどその先は?頭の回転の速さは並みじゃない。凄まじく効率的で頭がいい。既に俺以外の連中はほとんど置いてきぼりだ。レベル違いすぎてお話にならない。
 逆によくキレずに周囲に合わせてやれるもんだと感心する。ストレスたまんねーのかなとか、余計な心配が出てくる。今から突出しすぎると虐めとか孤立とかするんじゃねーかとか、人格形成に問題がでるんじゃないかとか、俺はあいつの親かってな突っ込み入れたくなるような心配をしたりして。
 だってよ、正直あの頭の良さは異常レベルだぜ?平凡な公立小に通ってるっておかしくね?ってレベルでさ。
 そこで俺は考えた。
 周りを底上げすりゃいんじゃね?(俺含む)
 後はノリだ!
 まだ低学年のうちからなら、ばか騒ぎのお遊びのノリでいけんじゃね?
 あいつに追いつけ追いこせプロジェクト!
 まぁ無理だけど。
 そう思いつつ、自信満々でぶちあげてみりゃ案外ノッてくるやついんのな…。
 最初は俺の悪友の数人だった。あいつが女子に囲まれてる間、アホ臭くてその輪から離れるんだが、その時につるんでる遊び仲間だ。こいつらもあいつとは遊ぶが、どうしても一枚壁がある。友人であっても仲間とは言えないっていうか。で、俺が茶化してプロジェクト~!とか言ったら食いついてきたんだな、これが。
 で、遊びつつ勉強しつつ。学校の科目ももちろんだが、興味を持ったものをとことん調べてみるぜ、おー! みたいなゲーム感覚なこれも良かったらしく、雑学は増えるは、視野は小学生にしては広がるわ。ふざけたり雑談しててもそういった知識が口から出るわけで、俺らの新たなうんちくに驚いたあいつも進んでその輪に入るようになり、対等な会話が成り立つ部分が出てきた。そうなると俄然張り切るわけで、先生を捕まえて質問しにいったり、勝手に校外学習だ!とかいって学区外に行こうとしてバレて取っ捕まったこと数回。
 そのうち問題児扱いされつつも、俺らの取り組みは学年全体に広がり盛り上がり、あいつの突出ぶりは表面上影に隠された形になった。
 ちなみにあいつを含めた俺らのグループは女子の加入禁止である。一人でもいれたら超絶めんどくさいことになる。
 女人禁制ハーレム禁止。…断りまくって恨まれたぜ、トホホ。俺はもう、小学校の間はモテねーことを確信した。わかってるさ、ちくしょー!!


 とりあえずの成果を確信した俺はふと考えた小5の春。
 俺自身はどーしたいんだ?
 俺には前世の記憶がある。50歳位まで平凡に生きたようだが、後悔もあったらしい。
 主に、若い頃に色々なことを体験しておけば良かった!ということらしい。
 じっくりその記憶と対峙してみると、彼女は人見知りで大人しい性格で、真面目一本やりだったようだ。しかし大人になってみると知らないことが多く愕然としたらしい。また、憧れたことも、優等生だから、女だからと止められたり、出来にくかったこと、振り払ってやり抜く勇気が持てなかったことも後悔としてあったようだ。
 ならば俺は思い付く全てのことにアンテナをはって、やりたいことをやろう、知ろう。そう決意した。
教室の後ろで女子に囲まれ苦笑いしているあいつを見る。
 そう言えば乙女ゲーの世界だったなと思い出す。一回クリアしただけの0と1の世界にどうして転生出来るのかさっぱりわからんが、ここは俺にとって現実だ。記憶に残るゲームの中に俺らしき姿はない。定番の金持ち私立高校だ。あいつの家は裕福だし多分、中学からその学校に行って、俺のことなんざ忘れるか疎遠になるんだろう。
 ゲーム進行は俺には関係ないし、俺は好きなように生きる。
 今は女子の扱いに困ってるハイスペックなイケメンはそのうち孤高の生徒会長様にジョブチェンジすることになる。あいつに劣らぬ家柄とスペックを誇る生徒会役員が並び立つ。
 俺にひっついて離れない今のあいつは、そのうち俺を完全に追い越して引き離していく。どのみちついていけるスペックなんて無いんだから、やりたい事を最優先しよう。
 ついでにせっかく恩恵があるんだ。今のうちから勉強して行きたい大学に一発合格目指すぜ! けけけ。

 そんなこと結論した翌日、あいつの家に遊びに行ったら中学受験することを打ち明けられた。予想通りで笑えたが、一緒に行こうと誘われたというか、懇願された。
 いや俺は遠慮シマス。中学受験てあれじゃん。問題がトンチかクイズか!?って位わけわからんじゃん。あれなら高校入試問題のがよっぽどマシ。
 第一俺は中学の間にやりたいことがある。だから断ったが、あいつの両親までなんで俺の説得に出てくんの!?  は? 小学校公立行ったのは俺と一緒が良かったから?? だから小学校受験を取り止めた??…いやそんなこと言われても。なついてるから頼むとか言われても。同性の友達作りにくくてとか言われても。
 おま、男友達いるじゃん…。確かに切っ掛けは全部俺だったけどさ。だけどシンパはいつもいたじゃん?
 オイ、孤高の生徒会長どこだ。いやいやいや。別にゲーム通りの成長遂げろとは言わんけど、 なにこれどういうこと。耳がしょんもり垂れ下がった犬に見えるんだけど!
 だめだぁー。俺はほだされんぞ。俺はやるんだ!中学の間に自転車で日本一周!! その資金調達の為に新聞配達のバイトを! それやるにゃ、んな私立の超進学校なんていってらんねーじゃん?ついでに一人旅したいわけだ。うっかりあいつに言うと俺もとか言いかねん。
 実はあいつ庶民の俺と違って坊ちゃまなわけよ。そんな奴がチャリで日本一周とか言ったらヤバイんじゃね? 防犯的に。監視つきではいやだぞ俺。
 だから俺は説得した。俺はどうしてもやりたい事があって、公立じゃないと駄目なんだと。だけどお前は公立じゃレベルが違いすぎてお話にならないことは分かってるはずだと。
「それを言うなら直也だってそうだろ」
 睨まれ、ドスのきいた低い声で言われたが、んなことはない。小、中の勉強なんて覚えてない。
 何がポイントなのか、どこを勉強すればいいのか、効率がいいのかは分かってるから、今世は復習がてら完璧にしようと学習してるんであって、決してあいつのようにレベルが違いすぎてつまらないとか言うわけじゃない。
「俺はお前と違って頭良くねーんだから無理だって。必死にベンキョーしてやっとなんだからな?」
「直也は頭悪くなんかない。俺の言うこといつも理解してるじゃないか! 昔からっ」
「んやー、まあ今まではな?だけど中学からは多分無理。ついていけねー」
「なんでだよ! なんでそんな事わかるんだよ! 一緒に行こうよ」
「だからさ~。やりたいことあるんだよ。高校入ったら受験勉強に専念するだろ? 脇目そらすわけにいかねーじゃん。その前にやりたいんだ」
「…どうしてもなのか」
「どーしてもだ。…高校は同じ所行くよ。それじゃダメか」
「公立と授業進度も内容も違うから高等部からだと授業について行くのすごく大変だって聞いてるぞ」
「じゃあさ、週一位でその内容教えてくんね?俺教えることでお前の復習にもなんじゃん?」
「わかった。絶対高校は一緒だぞ」
「おう。男の約束だなっ」
「勉強叩き込んで中学から入れば良かったって後悔させてやる」
「お、おう?」
 なんか変な台詞じゃね?とか思ったが、笑ってたから良しとする。まあ落ちたら御免なすってということで!

 あいつと話をつけてから俺は頑張った!
 あいつが受験に向けて塾に通う間、俺はまず自転車屋に通いつめた。ロードバイクをゲットするためだ。
 店長のおっさんには色々教えてもらった。ロードレースのテレビ観戦もその一つだ。いつかツール・ド・フランスとかジロ・デ・イタリアとか本場で観てー! とか思うようになり、こりゃ語学やんなきゃ駄目だろう!?ってことで、手始めに英会話塾に通わせて貰った。兄弟3人だとちょっと習い事とか気兼ねするんだよね。ほれ、男ばっかだからこの先金かかるじゃん。ともかく、おとん、おかんありがとう。
 ロードバイクは誕生日プレゼントには高すぎると言われたが、貯めてたお年玉と足して買うことが出来た。それから長距離を走れるようにトレーニングを始めた。おっさんが趣味でやってたから師匠と呼んで色々教えてもらい、チームにも入れてもらった。子供のチームがあれば良かったがないので大人に混じって可愛がってもらえたからそれでよし。別に選手になりたいわけじゃないし。
 もちろん勉強の手は抜かない。あいつとの約束あるし。
 だからっといって、中学受験の問題までやらせるのは勘弁して貰いたい。ほんとにナニアレ。特に算数。とんち?クイズ?数学の方が絶対楽だぜアレ。

 そんなこんなで小学校を卒業し、俺達は別れた。
執念深く週一のお勉強会は三年間続くことになろうとは。いやー、最初の一月で自然消滅するかと思ってたんだが。精々夏までダロと。
 甘かった。ほんっとゲロ甘かったぜ…。
 おまけになんでオマエラの学校のテストまでやらされてんの俺。わざわざ問題書き写してやらせんなよ。
「やっぱり勉強ついていけたじゃないか!!」と怒られた。えー…ヤダー…。

 そんで中3の夏休み。念願の自転車で日本一周の旅!
 おっさんの仲間とか知り合いとか、ネット通じたロードバイク仲間に見守られながらやりきった!
 ヒャッハー!
 出発前、ようやく俺の目的を知らされたあいつはまたお怒りになった。狡いってさー。
 でもさー、ロードバイクには全然興味ないじゃんな。俺が熱中しててもつまんなそーだったからなぁ。やっぱ苛酷だし、興味ない奴がやれるもんじゃねーと思うんだな。単純に一人旅したかったのもあるけどー。
 そんなわけで、こまめに連絡取るように約束させられたが、些細なことだ。
 ちなみに俺の事は地元のテレビや新聞で報道された。今どき珍しい話じゃないと思うんだが。暇だな、マスコミ。
 それから後は高校受験へ向けてまっしぐら。…なんだから、週一の勉強勘弁してくだせーと言ったが。
「ふざけんな、勝負の夏休みに自転車旅に余裕ぶっこいていきやがったんだから、高校受験なんて余裕だろボケェ。男の約束だ。きっちりやれ」
 とキレられた。
 ネに持ちやがった上に何ですかその乱暴な言葉遣いは。そんなふうに育てた覚えはねーぞといったら
「お前に育てられた覚えはない」
 と冷ややかにぶった切られた。
 ひぃ!! やめて! その蔑んだ冷たい眼! とか言ったら説教された。
 えー、ちょっとしたおちゃめじゃーん。とか言うとまた説教が長引きそうなので止めといた。

 そして高校受験。合格。

 春。乙女ゲーの舞台に立つ。
 これから二年後、ある少女が転校生として校門をくぐる。
 複数いるイケメンから誰か一人を選ぶのか、優柔不断にか意図的か誰も選ばず逆ハーになるのか。
ゲーム開始まであと少し。

 ま、脇役Aにはなんにも関係ない話。
 俺は俺の青い春を満喫してやんよー!
続きを書いてみたいような気もします

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ