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ハジマリノマエニ 22
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 眠っているようだった。
 蝋人形のように真っ白な顔をしていた。
「これが最後になるのね」
 女は赤い液体をそれに注ぐ。
 すると、蝋人形が生の色を帯びた。
 紅い瞳が開かれる。
 彼女の瞳に映るのは、赤い瞳。
「おはよう。お母様」
「おはよう。百年振りね、紅葉」

              *

「私を殺さないのか? 『白い暴君』」
「ええ、まだ殺しませんよ」
「こんな場所にわざわざやってきて、それで殺さないと? ならいつ私を殺しにくるのだ?」
「約一年後、または五日後になりますね」
「……なんだそれは? 私は二回死ぬのか?」私はくすりと笑う。
「あなたの場合は少し特殊なんですよ。まだ代わりが生きて(・・・・・・・)いますから」
隻眼の怪物は奇妙なことを言った。
「……どういう意味だ?」
「それは教えられませんね」
「まあ良いさ。しかし五日後の方は良いとして、一年後の方は随分先の話だな。私はその時にはもう寝てしまっているのだが……まさか寝込みを教われるのかな」
「そうかもしれませんね。しかしそれが『黒の書』に書かれた歴史ですから」
「そうか。それで執行人はどちらも貴女なのかな?」
「いえ、違います」
「違うのか?」
 意外だ、と女は驚く。
当然だ、と怪物は頷く。
「どちらも、私ではありませんよ」
「なら誰だと言うのだ?」
「『神の複製品(デッドコピー)』。知っていますか?」
「当然ながら、知らないな」
 百年ぶりに目が覚めて間もない私が知るはずもない。
「時期に知りますから心配なく」白い外套を纏った隻眼の女性は楽しそうに嗤う。
「――そういう事か。それが貴女の今回の来訪の目的だったわけだな。その『神の複製品』と私の因果の糸を結ぶためにお前はここに来たわけだ」
「その通りです。そして彼と出会えばあなたの死は確定する」
「面白い。その神とやらは私にとっては死神になるという事か」
「それが、あなたにとっての救いなのではないですか?」
「……さあな。まあどうでも良い事だ」
「それでは、私はそろそろ帰ります。私があなたと会っていられる時間の刻限が迫っていますから」
「そこまで忠実とは頭が下がるな」
私は彼女と彼女の従うモノ、そして自分の運命に皮肉を込めて笑う。
「私は歴史の僕ですから」
私の皮肉に怪物は満足そうに笑った。
「――最後に一つ。私はその死神にどうやって殺される?」
「神殺しの刀で一撃。首を跳ねられて殺されます」
『白い暴君』は私の死に様を笑顔で言い放ち、
「それでは、さようなら。もう二度と会う事はないでしょうね」と仄暗い洞穴を笑顔で去っていった。
「――首を跳ねられる、か。それもまた良い。本音を言えばもう少し生きたいのだが、それが運命だというのなら、私はそれに従おう」
私は隻眼の怪物の背を見ながら呟いた。
黒色の空間に紅い眼を凝らしても、白い怪物の姿は闇に溶け込み見えなくなっていた。

お読み頂きありがとうございました。
これにて『紅の章』は終了です。
まだまだ、頭の中の風景を完全に表現出来ていない、未熟な私にお付き合い頂きありがとうございました。
『紅の章』の人物設定は次の物語を載せた時に、一緒に『紅の章』の方に更新します。
すぐには次の物語を載せる事は出来ませんが、遅くとも今月中には載せられる様にします。
それではもしよろしければ、次の物語にもお付き合い下さい。
ありがとうございました。


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