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この作品は時系列的に前作品『殺戮天使 蒼の章』の後になりますので、そちらを先に読まれた方が良いかもしれません。とはいえこの作品だけでも完結しますので、その辺はお好みにお任せします。
ヒトツノハジマリ 01
            鬼姫

眼が眩むような真っ赤な世界。
眩暈が起きるような真紅の世界。
私の瞳の中に広がったのは、
私の瞳と同じ深紅の空色。
茜色の雲が流れ、
秋の冷たい風が、私の頬を撫でる。
秋の柔らかい風が、緋色の紅葉を舞い上げる。
沈まぬ夕日を見上げ、
色素の抜けた銀髪が揺れる。
銀と赤のコントラスト。
いつか、
きっと、
二人で歩こう。
この赤い紅い緋色の世界を。

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石間山(いしまやま)に伝わる鬼の伝説 (歴史学者 稲垣慶一郎 著)

昔々、ある山奥に大きな村がありました。
その村は広さこそ大きな大きな村でしたが、住んでいる人はあまり多くはありませんでした。
そして、その村の人数は年々少なくなっています。
それは、毎年毎月毎日、一匹の恐ろしい銀髪の鬼が山の奥の奥からやってきては人々を攫っては、食べてしまうからです。
村の人々はとても困っていました。
ですが鬼の力はとてもとても強く、とてもじゃありませんが村人では歯が立ちません。
それでもたまに、勇気ある若者が鬼を退治にいきましたが、帰ってくるものは一人もいませんでした。
変わりに戻ってくるのは、若者達が着ていた服を腰に巻いた鬼だけでした。
若者たちを焼いて食べたのでしょうか、鬼の腰巻はいつも少しだけ焦げていました。
村の人々はこれ以上被害は出せないと、都に遣いを送りました。
都の兵ならば、鬼を退治できるかもしれないと思ったのです。
しかし、都にいくら文を送っても返事は返ってきませんでした。
都もその時、色々と大変なことが起こっていたので、山奥にある村に人を送っている余裕などなかったのです。
さらには、文を持っていったはずの若者が帰ってこないこともありました。
村はどんどん人が減っていきます。
このままでは村がなくなってしまう。
残された村人たちは覚悟を決めました。
村の人々は、鬼に殺されるのをただただ待つ日々だけが続きました。
千回の夜と千回の朝が過ぎた朝、村に奇跡が起こりました。
文を届けに行ったまま、いなくなった若者が帰ってきたのです。
その若者は隣に、とても黒く長い髪がとても綺麗な、肌の白い女性を連れていました。
唇が鬼灯のように赤く、着物も赤色で印象的な人でした。
そして若者はこう言いました。
「このお方は都で数多くの鬼を退治しておられた、たいそう名のある陰陽師だ。この村を救うためにわざわざ都からおいで下さった。これから我が村の鬼を退治してくださるそうだ」若者は自らの功績を誇るように胸を張っていました。
ですが村の人々は皆、若者の言葉を信じられないと言った顔で聞いていました。
村の長が若者ではなく、都からきたという女性に訪ねます。
「あなたは本当に、山奥に住む鬼を退治出来るのですかな?」
女性は誰もが見惚れるような顔で微笑み頷きました。
村人たちは皆女性の顔を見て驚きました。
その女性の瞳が一瞬ですが、燃えるような炎の赤に染まったからです。
眼の赤い女性は言いました。
「今から私は山奥にいる銀髪の鬼を退治してきます。しかしもしも私が明日の朝までに戻ってこなければ、この手紙を都にある耶麻の寺に届けてください。そうすれば私よりも強力な陰陽師がきてくれるでしょう」女は自身に満ちた顔で村長に竹筒に入れられた文を渡すと、鬼のいる山の中に入っていきました。
なぜか村人達は皆、この女性なら鬼を退治してくれると確信しました。
そして村人たちは一日中、山の入り口で女性が帰ってくるのを待ちました。
辺りが暗い夜になり、朧げな月が村人の顔を照らし、夜が明け、月の代わりに太陽が顔を出す頃に女性が山から帰ってきました。
その片腕には銀髪の鬼の首と、鬼が溜め込んでいた財宝を詰めた袋を持っていました。
村人たちはそれを見て狂気乱舞しました、がすぐにそれは止まりました。
女性の姿が山に入っていった頃とは打って変わって、ぼろぼろだったからです。
極上の絹のようだった長い髪は、ところどころが焦げてボサボサになり、真っ白だった肌も火傷をしたように爛れ、女性が着ていた煌びやかな赤い着物は煤で黒く汚れていました。
さらに驚くべき事に女性は片腕を失っていました。
ただ傷口から血は流れていませんでした。代わりに傷口から肉の焼けた気持ちの悪い匂いが立ちこめていました。
傷だらけになった女性は言いました。
「鬼は退治した。村人よ、もう恐れる事はない」そう言って女性は村長に鬼の首を渡すと「疲れたから寝ます」と言って治療もそこそこに寝てしまいました。
村人たちは女性が眠りに付くと、今度は止まる事なく狂喜乱舞しました。
宴が開かれ、お祭り騒ぎが三日三晩続きました。
女性は三日三晩眠り続けていました。
そして三日目の晩に村長は決めました。
「あの方にはずっとこの村にいてもらおう。村の守り神として末代まで称えようじゃないか」
村人たちは皆大いに賛成しました。
女性が目を覚ますと村長は女性にそのことを伝えました。
女性は最初困っていたようですが、村人たちの説得の末この村に留まる事に決めました。
村人たちはとても喜び、女性にとてもとても大きな屋敷を建ててあげました。
他にもお礼として、彼女が鬼から奪ってきた財宝と、今村にある財宝をありったけ献上しました。
その後、隻腕の女性は一人の子供を儲け、その地でずっと暮らしました。
女性の名を秋野神楽といいます。

                        〜石間山麓の村に伝わる口承より
お読み頂きありがとうございます。今章は時系列的には蒼の章の次の話になります。相変わらずつたない文章ではありますが、是非お付き合い下さい。


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